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キャンディ・キャンディ事件 東京地裁平成11年2月25日判決
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【判例ID】   28041257
出版差止等請求事件
東京地裁平九(ワ)一九四四四号
平11・2・25民四六部判決

       判   決

《住所略》
原告 X
右訴訟代理人弁護士 伊東大祐
《住所略》
被告 Y ほか一名
右被告両名訴訟代理人弁護士 山崎和義
同 熊隼人
同 鈴木謙

       主   文

一 原告と被告らとの間において、別紙目録一記載の漫画及び同二記載の絵につき、原告が右漫画及び絵を二次的著作物とし漫画「キャンディ・キャンディ」の原作を原著作物とする原著作者の権利を有することを確認する。
二 被告らは、別紙目録三記載の絵を作成し、複製し、又は配布してはならない。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。

       事実及び理由

第一 請求の趣旨
一 原告と被告らとの間において、別紙目録一及び同二記載の著作物につき、原告が、共同著作物の著作者の権利又は右各著作物を二次的著作物とし、漫画「キャンディ・キャンディ」の原作を原著作物とする原著作者の権利を有することを確認する。
二 主文第二項と同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、漫画の原作、児童文学作品等を主な活動領域とする著述家であり、「X1」のペンネームを使用している。
  被告Y(以下「被告Y」という。)は、漫画家であり、「Y1」のペンネームを使用している。
  被告Y2(以下「被告Y2」という。)は、広告業務を目的とする株式会社である。
2 漫画「キャンディ・キャンディ」(以下「本件連載漫画」という。)は、株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」(以下「なかよし」という。)の昭和五〇年四月号から同五四年三月号までに連載された連続したストーリーを有する漫画であり、連載全体として一つの著作物である。
3 本件連載漫画は、連載の各回ごとに、原告がストーリーを創作し、小説形式にした原稿を作成してこれを被告Yに渡し、被告Yが右原稿に基づいて漫画を作成するという手順で制作されたものであるから、本件連載漫画は、原告と被告Yとの共同著作物、又は、原告の創作に係る漫画の原作という言語の著作物を翻案することにより創作された二次的著作物である。
  したがって、原告は、本件連載漫画につき、共同著作物の著作者の権利、又は、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者の権利を有する。
4 別紙目録一記載の漫画について
(一)別紙目録一記載の漫画(以下「本件コマ絵」という。)は、「なかよし」に掲載された本件連載漫画の一コマであるから、これについても原告は、共同著作物の著作者の権利、又は、これを二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利を有する。
(二)被告らは、原告が右各権利を有することを争っている。
(三)よって、原告は、原告と被告らとの間において、本件コマ絵につき、原告が、共同著作物の著作者の権利、又は、右漫画を二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利を有することの確認を求める。
5 別紙目録二記載の絵について
(一)別紙目録二記載の絵(以下「本件表紙絵」という。)は、本件連載漫画の連載期間中に、被告Yが作成し、「なかよし」の表紙に掲載された本件連載漫画の主人公キャンディを描いた絵であり,本件連載漫画の一部、又は、本件連載漫画における主人公キャンディの絵を複製若しくは翻案したものである。
  そして、本件表紙絵が本件連載漫画の一部であれば、これについて、原告は、共同著作物の著作者の権利、又は、これを二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利を有する。また、本件表紙絵が本件連載漫画における主人公キャンディの絵を複製若しくは翻案したものであれば、本件表紙絵は、原告の創作に係る本件連載漫画の原作との関係でも二次的著作物になるというべきであるから、これについて原告は、これを二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利を有する。 
(二)被告らは、原告が右各権利を有することを争っている。
(三)よって、原告は、原告と被告らとの間において、本件表紙絵につき、原告が、共同著作物の著作者の権利、又は、右絵を二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利を有することの確認を求める。
6 別紙目録三記載の絵について
(一)原告は、本件連載漫画について、共同著作物の著作者の権利、又は、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者の権利を有する。
(二)別紙目録三記載の絵(以下「本件原画」という。)は、被告Yが平成一〇年八月上旬に書き下ろしとして作成したものであり、被告Y2は、被告Yの許諾を受けて、右絵を原画とするリトグラフ及び絵はがきを作成し、販売しようとしている。
(三)本件原画は、本件連載漫画の主人公キャンディを描いたものであり、本件連載漫画における主人公キャンディの絵を複製又は翻案したものである。
(四)よって、原告は、被告らに対し、本件連載漫画についての、共同著作物の著作者としての著作権(複製権若しくは翻案権)、又は、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者としての著作権(複製権若しくは翻案権)に基づき、本件原画を作成し、複製し、又は配布することの禁止を求める。
二 被告らの請求原因に対する認否
1 請求原因1及び同2の事実は認める。
2 同3のうち、本件連載漫画が連載の各回ごとに原告が小説形式の原稿を作成してこれを被告Yに渡し、被告Yが右原稿をみて漫画を作成するという手順で制作されたことは認め、その余は争う。
3(一)同4(一)のうち、本件コマ絵が「なかよし」に掲載された本件連載漫画の一コマであることは認め、その余は争う。
(二)同4(二)の事実は認める。
(三)同4(三)は争う。
4(一)同5(一)のうち、本件表紙絵が本件漫画の連載期間中に被告Yが作成し、「なかよし」の表紙に掲載された本件連載漫画の主人公キャンディを描いた絵であることは認め、その余は争う。
(二)同5(二)の事実は認める。
(三)同5(三)は争う。
5(一)同6(一)は争う。
(二)同6(二)の事実は認める。
(三)同6(三)のうち、本件原画が本件連載漫画の主人公キャンディを描いたものであることは認め、その余は争う。
(四)同6(四)は争う。
三 被告らの主張
1(一)以下のような事情によれば、本件連載漫画は、被告Yが単独で創作した著作物であって、原告と被告Yとの共同著作物であるとはいえない。
(1)本件連載漫画のコンセプトは、被告Yが考え、原告が原稿を作成する前に、原告に提示したものである。
(2)被告Yは、本件連載漫画を作成するに当たって、原告が作成した原稿の内容をそのまま使用するのではなく、原告の同意を得ることなく、ストーリー展開や吹き出しの台詞を変更し、ときには著述の一部分をカットしたり、著述にないストーリーを付加したりしていたのであり、本件連載漫画の基本部分やストーリーの骨子は、むしろ被告Yの創作によるものである。
(3)本件連載漫画における登場人物の容姿・顔立ち・髪型・服装、情景、時代設定については、原告の原稿には具体的な指示がなされておらず、被告Yの独創によるものである。
(4)原告が、被告Yに対して、本件連載漫画の基本的構成や吹き出しの台詞について具体的な指示を与えたり、被告Yが作成した漫画について、台詞を修正したり、漫画の細部について注文をつけて被告Yに手直しをさせたりしたことはない。
(二)また、以下のような事情によれば、原告作成の原稿は、被告Yが本件連載漫画を作成するに当たって、これから着想、アイデア、ヒントを得ただけの参考資料にすぎず、これを翻案して本件連載漫画が作成されたものではないから、本件連載漫画は、原告作成の原稿の二次的著作物とはいえない。
(1)原告作成の原稿は当初より完成した一つの話として出来上がっていたものではなく、
原告は、被告Yが作成した各連載回の漫画をみてから、これに合わせて次回連載分の原稿を作成していたのであるから、本件では、漫画の作成時に原告作成の著作物の基本部分や筋が完成していなかったのであり、被告Yにおいて、完成した原告の著作物の基本的構成や筋を前提とし、それを変更せずに、表現形式のみを変更して本件連載漫画を完成させたわけではない。
(2)被告Yは、原告作成の原稿を大幅に変更して本件連載漫画を作成していたのであり、本件連載漫画の基本部分やストーリーの骨子は、むしろ被告Yが創作していたといえる。
2 仮に、原告が本件連載漫画について、共同著作物の著作者の権利、又は、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者の権利を有するとしても、本件連載漫画における登場人物の絵は、専ら被告Yの独創によるものであり、原告の創造性は全く介入していないのであるから、本件連載漫画のコマの中の絵ではなく、被告Yが新たに書き下ろした絵である本件原画について、原告には、被告Y及び同被告から許諾を得た被告Y2に対して使用の差止めを求める権利はないというべきである。
第三 当裁判所の判断
一 請求原因1及び同2の事実は、当事者間に争いがない。
二 本件連載漫画が原告の創作に係る原作を原著作物とする二次的著作物であるかどうかについて(請求原因3について)
1《証拠略》によれば、本件連載漫画の制作経過等に関し、以下の事実が認められる。
(一)本件連載漫画は、昭和四九年一一月ころ、当時講談社との間で専属契約を結んでいた被告Yの「なかよし」における新連載として企画され、「なかよし」編集部によって、原作者を付すことが決められ、その原作者として原告が人選された。そして、そのころ、原告、被告Y、担当編集者の間で、「あしながおじさん」や「赤毛のアン」などのいわゆる名作物のように、孤児の少女が逆境にめげずに幸せになっていくという、本件連載漫画のストーリーの基本的な構想が決められた。
(二)その後、本件連載漫画は、毎月の連載回ごとに、おおむね以下のような手順により制作された。
(1)原告が、各回ごとの具体的なストーリーを創作し、これを四〇〇字詰め原稿用紙三〇枚から五〇枚程度の小説形式の原稿にして担当編集者に渡す。その際、担当編集者が原稿をみて要望を述べ、それに応じて原告が手直しをする場合もある。
(2)右原稿のコピーを担当編集者が被告Yに渡す。被告Yは、右原稿を読み、漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き、その他の部分に基づいて、紙面にコマ割を行い、絵を簡略化した形で描き、吹き出しの台詞などを加えた「ネーム」と呼ばれる漫画の草案を作成する。この段階で、出来上がった「ネーム」を担当編集者にみせて打ち合わせを行い、必要があれば被告Yが手直しを行う。「ネーム」作成の段階で、原稿が分量的に一回の連載に収まり切らない場合には、担当編集者から原告にその旨連絡して、原告の了解を得る。その際、新しい終わり方について、原告が新しいアイデアを出したり、原稿の修正をすることもある。
(3)このようにして出来上がった「ネーム」に基づいて、被告Yが鉛筆で漫画の下書きを作成し、その際に人物の服装や背景等が決められる。その後、被告Yが右下書きにペンを入れ、最後に鉛筆の下書きを消して漫画が完成する。
(4)原告は、当該回の漫画のゲラ刷りをみた上で、それに続く次回連載分の原作原稿を作成し、当該回の原稿が一回の連載に収まり切らずに途中で終わる場合には、その部分から始まる次回用の原作原稿を新たに作成する。
(三)本件連載漫画の各連載回の扉頁、本件連載漫画の単行本(講談社発行)及び文庫本(中央公論社発行)の各巻の表紙には、いずれも「原作X1」という形で、原告のペンネームが表示されている。
  また、これまで、第三者によって本件連載漫画の二次的利用がされる場合には、原告も本件連載漫画の著作権者あるいはその原作著作物の著作権者として契約当事者となっており、平成七年一一月一五日には、原告と被告Yとの間で、本件連載漫画の二次的利用に関して、双方の同意を要すること、使用料を一定の割合に応じて配分することなどを内容とする契約が締結された。
2(一)原告作成に係る原作原稿の内容とこれに対応する本件連載漫画の内容とを、証拠に現われた範囲(具体的には、(a)甲第四〇号証と第四一号証、(b)甲第四二号証と第四三号証、(c)乙第一〇号証と第一一号証、(d)乙第一二号証及び第一三号証と第一四号証、(e)乙第一九号証及び第二〇号証と第二一号証が、それぞれ原作原稿とこれに対応する本件連載漫画である。)で対比すると、以下のとおりのことが認められる。
(1)本件連載漫画の各連載回ごとの具体的なストーリーの展開、すなわち、いかなる時と場所において、いかなる人物が登場し、いかなる意図の下に、いかなる行動をし、場面が展開していくかについては、おおむね原作原稿の内容に沿ったものとなっている。原作原稿にある場面が省略されていたり、原作原稿にない場面が付加されていたり、場面展開の順序が原作原稿と異なったりする部分も一部にみられるが、それによってストーリーの基本的な展開が異なるとまで評価できるものではない。
(2)本件連載漫画中の登場人物の吹き出しの台詞や内面における思考・心情の記述については、原作原稿の記載をそのままあるいは同趣旨の内容を多少表現を変えて用いているものが多く、原作原稿にないものを付加していたり、原作原稿にあるものを省略している部分もみられるが、それによってストーリーの基本的な展開に変更を来すようなものではない。
(3)人物の表情・服装・動きや風景については、原作原稿中に指示があり、これに基づいて漫画が作成されている部分もあるが、原作原稿中に格別の指示がない部分もある。
(二)右の対比結果は、本件連載漫画のうちの一部の連載回に関するものであるが、原告本人尋問の結果に前記1のような本件連載漫画制作の経過等を併せて考慮すれば、本件連載漫画の内容と原告作成に係る原作原稿の内容との関係は、他の連載回も含め全体として、おおむね右対比結果と同様のものであると認められる。
3(一)以上のとおり、本件連載漫画は、当初から原告が作成した原作原稿を被告Yが漫画化するものとして「なかよし」編集部によって企画され、実際にも連載の各回ごとに原告が小説の形式で原作原稿を作成し、これを被告Yが漫画化するという手順で制作が行われたものであり、本件連載漫画とこれに対応する右原作原稿の各内容を対比してみても、前記のとおり、本件連載漫画はおおむね原作原稿の記載内容に沿って具体的なストーリーが展開され、登場人物の吹き出しの台詞や思考・心情の記述もその多くが原作原稿中の記載に基づくものと認められる。また、出版物における著者の表示や二次的利用の際の権利関係の処理においても、原告は、終始、本件連載漫画につき原作者としての権利を有するものとして処遇され、被告Yもこれを容認してきたものである。
  これらの事情を総合すれば、本件連載漫画は、連載の各回ごとに、原告の創作に係る小説形式の原作原稿という言語の著作物(右原作原稿が、思想又は感情を言語によって創作的に表現したものであって著作物性を有することは、連載の一部の回に係る原作原稿である甲第四〇号証、第四二号証、第四八号証、第五〇号証、乙第一〇号証、第一二号証、第一三号証、第一九号証及び第二〇号証から明らかである。)の存在を前提とし、これに依拠して、そこに表現された思想・感情の基本的部分を維持しつつ、表現の形式を言語から漫画に変えることによって、新たな著作物として成立したものといえるのであり、したがって、本件連載漫画は、原告の創作に係る原作原稿という著作物を翻案することによって創作された二次的著作物に当たると認められる。
(二)被告らは、前記第二、三1(二)記載のとおり、本件連載漫画が原告作成の原作原稿を翻案した二次的著作物であることを否定し、その根拠として、(a)原告作成の原作原稿は当初より完成した一つの話として出来上がっていなかった、(b)被告Yは原告作成の原作原稿を大幅に変更して本件連載漫画を作成しており、本件連載漫画の基本部分やストーリーの骨子は被告Yが創作した、と主張する。
  しかしながら、前記(1)(二)のとおり、本件連載漫画は、連載の各回ごとに、原告がその回に連載されるストーリー部分を小説の形式で原稿に記載し、これに依拠して被告Yが当該連載分の漫画を作成するという手順を繰り返すことによって制作されたものであり、連載の各回ごとの漫画がそれに対応する分の原作原稿を翻案したものということができるから、結局、本件連載漫画全体が、原告の創作に係る原作原稿全体を翻案した二次的著作物と評価されるものというべきである。原作原稿は、本件連載漫画の作成前に、完結した作品として存在したものではないが、このようなことは例えば連続テレビドラマの制作過程における脚本とドラマ撮影の間などにおいても生ずることであり、原著作物があらかじめ完結した作品として存在することが、それに基づく二次的著作物が成立するための要件となるものではない。右のとおり、被告らが主張する右(a)の点は、本件連載漫画が原告作成の原作原稿の二次的著作物であることを否定する理由とならない。
  右(b)の点については、前記2(一)のとおり、原告作成に係る原作原稿の内容とこれに対応する本件連載漫画の内容とを対比しても、一部において、場面の省略、付加、順序の入れ替えなどが認められるものの、ストーリーの基本的な展開において、被告Yが原告作成の原作原稿を大幅に変更して本件連載漫画を作成したとは認められず、本件連載漫画のストーリーの骨子を創作したのが被告Yであるとは到底いえない。なお、この点に関し、被告らは、乙号証として提出した本件連載漫画の一部とこれに対応する原作原稿とを対比し、その相違点について縷々主張するが(その詳細は、乙第一〇号証と第一一号証、乙第一二号証及び第一三号証と第一四号証について被告準備書面(一)、乙第一九号証及び第二〇号証と第二一号証について被告準備書面(三)を各参照)、いずれも物語の細部における変更にすぎず、ストーリーの基本的な展開を変更するものとはいえない。また、被告らは、右主張の中で、人物の容姿・表情・服装、背景について原作原稿中に具体的な指示がなく、専ら被告Yがこれらを創作したことを指摘するが、右のような点は、言語の著作物を漫画の形式に翻案するに当たって、本来漫画家が創作性を発揮すべき作画表現の問題というべきであるから、このような点について原作原稿中に具体的な指示がないとしても、それによって、本件連載漫画が原告作成に係る原作原稿の翻案であることを否定する理由にはならない。
  したがって、右(a)及び(b)のような事情を根拠として、本件連載漫画が原告作成の原作原稿を翻案した二次的著作物であることを否定する被告らの主張は、採用できない。
三 本件コマ絵について(請求原因4について)
1 請求原因4(一)のうち、本件コマ絵が「なかよし」に掲載された本件連載漫画の一コマであることは当事者間に争いがないところ、前記二のとおり、原告は、本件連載漫画について、これを二次的著作物とし、その原作を原著作物とする原著作者の権利(著作権法二八条)を有するものと認められるから、本件連載漫画の一部である本件コマ絵についても、右同様の権利を有するものといえる。
2 請求原因4(二)の事実は当事者間に争いがない。
3 したがって、原告と被告らとの間において、本件コマ絵につき、原告が右漫画を二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利を有することの確認を求める原告の請求は、理由がある。
四 本件表紙絵について(請求原因5について)
1 請求原因5(一)のうち、本件表紙絵が、本件連載漫画の連載期間中に被告Yが作成し「なかよし」の表紙に掲載された絵であって、本件連載漫画の主人公キャンディを描いたものであることは当事者間に争いがない(本件表紙絵は、これを本件連載漫画中のキャンディの絵と対比しても、容貎や髪型などの特徴に照らし、本件連載漫画におけるキャンディを描いたものであることは明らかである。)。そうすると、本件表紙絵は、本件連載漫画のどの場面の絵に対応するものであるかを特定するまでもなく、本件連載漫画のキャンディの絵の複製に当たるというべきである。
  他方、前記二のとおり、本件連載漫画は、原告の創作に係る原作の二次的著作物に当たるものであるから、本件連載漫画のキャンディの絵の複製物である本件表紙絵についても、やはり原告の創作に係る原作との関係において、二次的著作物に当たるというべきである。
  したがって、原告は、本件表紙絵についても、これを二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利(著作権法二八条)を有するものといえる。
2 請求原因5(二)の事実は、当事者間に争いがない。
3 したがって、原告と被告らとの間において、本件表紙絵につき、原告が右絵を二次的著作物とし本件連載漫画の原作を原著作物とする原著作者の権利を有することの確認を求める原告の請求は、理由がある。
五 本件原画について(請求原因6について)
1 前記二のとおり、原告は、本件連載漫画につき、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者の権利を有し、したがって、本件連載漫画の利用に関し、その著作者が有するものと同一の種類の権利を専有するから(著作権法二八条)、本件連載漫画の絵について複製権を有する(同法二一条)。
2 請求原因6(二)の事実は当事者間に争いがない。
3 請求原因6(三)のうち、本件原画が本件連載漫画の主人公キャンディを描いたものであることは当事者間に争いがない(本件原画は、これを本件連載漫画中のキャンディの絵と対比しても、容貌や髪型などの特徴に照らし、本件連載漫画におけるキャンディを描いたものであることは明らかである。)。そうすると、本件表紙絵の場合(前記四1)と同様に、本件原画も本件連載漫画のキャンディの絵の複製に当たるというべきである。なお、被告Yは二次的著作物たる本件連載漫画の著作権者であり、被告Y2は本件原画の複製につき被告Yから許諾を受けた者であるが、二次的著作物の著作権者であっても、原著作物の著作権者の許諾なく二次的著作物を利用することは許されない(本件において、本件原画の作成ないしその複製につき、被告らが原告の許諾を得ていないことは、当事者間に争いがない。)。
4 したがって、被告らに対し、本件連載漫画を二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者として有する本件連載漫画の複製権に基づいて、本件原画の作成、複製、又は配布の差止めを求める原告の請求は、理由がある。
5 被告らは、本件連載漫画における登場人物の絵が専ら被告Yの独創によるものであり、そこには原告の創造性が全く介入していないとして、原告には、本件連載漫画の登場人物につき被告Yが新たに書き下ろす絵については、その作成等を差止める権利はない旨を主張する。
  被告らの右主張の趣旨は、要するに、本件連載漫画における絵の部分は専ら被告Yが創作したのであるから、本件連載漫画を絵という表現形式においてのみ利用することは、被告Yの専権に属するというにある。しかしながら、前記認定のとおり、本件連載漫画は、原告の創作に係る原作という言語の著作物を、被告Yが漫画という別の表現形式に翻案することによって、新たな著作物として成立したものであり、右翻案に当たっては、漫画家である被告Yによる創作性が加えられ,特に絵については専ら被告Yの創作によって成立したことは当然のことというべきであるが、このようにして成立した本件連載漫画は、絵のみならず、ストーリー展開、人物の台詞や心理描写、コマの構成などの諸要素が不可分一体となった一つの著作物というべきなのであるから、本件連載漫画中の絵という表現の要素のみを取上げて、それが専ら被告Yの創作によるからその部分のみの利用は被告Yの専権に属するということはできない。そして、前記のとおり、本件連載漫画が原告作成の原作との関係において、その二次的著作物であると認められる以上、原告は、絵という要素も含めた不可分一体の著作物である本件連載漫画に関し、原著作物の著作者として、本件連載漫画の著作者である被告Yと同様の権利を有することになるのであり、他方、本件原画のような本件連載漫画の登場人物を描いた絵は本件連載漫画における当該登場人物の絵の複製と認められるのであるから、これを作成、複製、又は配布する被告らの行為が、原告の有する複製権を侵害することになるのは当然である。
六 よって、主文のとおり判決する。 
(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 長谷川浩二 大西勝滋)

目録一
目録二
目録三


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