削除請求をする法的手段としては、通常の民事訴訟を選択することももちろんできるのですが、これでは時間がかかるため、SNS上での権利侵害案件には適していません。そこで、より迅速な手続きである民事保全法に定められた仮処分の手続きを利用するのが通例です。
仮処分といっても裁判所が出す命令ですから、これが発令されればプロバイダはこれに従い、その投稿の削除に応じるのが通常です。

削除の仮処分命令を得るためには、①被保全権利と②保全の必要性という要件を満たさなければなりません。
まず、被保全権利とは、守られるべき権利という意味であり、名誉権、プライバシー権、人格権、営業権、著作権、商標権などがあります。投稿によりこれらの権利が侵害されていることを裁判所に示す必要があります。

保全の必要性については、SNS上で日々権利侵害が継続している状況があれば、通常、保全の必要性は認められます。

仮処分手続きの流れ

手続の流れは以下のようになります。

① 申立

被害者は、プロバイダに対して、投稿削除の仮処分を裁判所に申し立てます。
裁判所に、申立書と申立の内容が「確からしい」と裁判官が認識できるような証拠資料も提出します。この確からしいと裁判官に認識してもらう程度の証明を「疎明」といい、仮処分手続では、正式な裁判で要求される「証明」よりも一ランク下の証明で足りるということになっています。緊急性があるから「確からしい」ということで命令を出すということです。

疎明のために、投稿記事をプリントアウトして提出するなどします。

② 審尋

申立がなされると、裁判所は相手方の言い分などを聞く審尋期日を開催します。

③ 立担保

そして、裁判所は、申立に理由があると判断する場合は、申立者に一定額の担保金を積むように要請します。具体的には、担保金を法務局に供託するように要請されます。これは、仮処分での証明が、疎明でよい(確からしいというレベルでよい)ということになっているため、もし判断が誤っていた時に相手方が受けるであろう損害を担保するためのものです。したがって、将来、判断に誤りがなかったいう結論になった場合は、還付を受けられます。

この担保金は、30万円~50万円程度です。

④ 仮処分命令の発令

担保金が積まれると、裁判所は削除命令を発令します。削除の仮処分命令が発令されると、命令を受けた相手方は、削除に応じるのが通常です。申立から発令まで、通常は1ヶ月~2ヶ月程度かかります。