ビジネス著作権法

ビジネス著作権法

第4章 著作権の帰属主体-著作者と著作権者

第4章 著作権の帰属主体-著作者と著作権者

1 著作者-著作権の帰属主体

本章では,著作物を創作した者,すなわち「著作者」とは誰かということを説明する。著作権法は、「著作者」とは,著作物を創作する者である(2条1項2号)と規定しており、著作者が誰であるかなどということは,明白であるかのようにも思えるが,じつは判別が困難な場合がある。

  • (1)創作するきっかけを与えたにすぎないものは著作者ではないし、アイデア、ヒント、テーマなどを提供したにすぎない者も著作者ではない。表現について意見を述べた者も著作者ではない。こうした場合は、後述の共同著作物の著作者ともならない。

    「SM写真事件」*1では、編集者が企画をし,撮影現場においては,編集者、縛り師、写真家が話し合いながらシチュエーション等を決め,その後,編集者と縛り師がカメラアングル,ライティング等について要望や注文を出し,写真家は,これを聞きながら,自分で,構図,カメラアングル,ライティングを決めた上,モデルにポーズや表情などを指示して,自らの判断でシャッターチャンスを選んで撮影した事案に関し,構図,カメラアングル,光量,シャッターチャンスの決定が写真家の判断でなされており、創作活動は写真家が行ったというべく,著作者は写真家であると判示している。

    「智恵子抄事件」*2では、高村光太郎の詩集である智恵子抄の編集を進言し著作の一部を集めた者は、企画と構想をしたにすぎないものであって編集著作物である智恵子抄の著作者ではなく、同人の進言に基づき詩等の選択、配列を確定した高村が著作者であるとしている。

    「はだしのゲン事件」*3では、執筆された脚本に対して、修正について意見を述べた者は、その関与はアイデアの提供や助言にすぎず、共同著作物ともなりえず、脚本を執筆した者が単独の著作者であるとする。

  • (2)助手も著作者ではない。著作物の作成に当たって,ある人の指揮監督下にあってその手足として著作物の作成に従事する者は、著作者の創作活動を助けたにすぎず,みずからの創意にもとづいて著作物を作成したことにはならないからである。
  • (3)インタビュー記事の場合は、ケース・バイ・ケースである。「スマップ・インタビュー記事掲載事件」*4においては、芸能人スマップのメンバーに対するインタビュー等を内容とする記事に関し、インタビュー記事の態様には 口述者の口述内容がほぼそのまま文章化されるものから、口述者の口述が質問に対する受動的な受け答えであり、文章の作成に関与しないというものまであり、本件は後者であるとして、執筆者を著作者とした。
  • (4)依頼者や注文者は著作者ではない。なぜなら、これらの者は、著作物を「創作した者」ではないからである。その意味で、依頼者や注文者が、ある程度の指定、指示を行い、資料の提供を行っても、著作者ではない。「高速道路略図事件」*5においては、依頼者が、地図に入れるべき主要道路や施設を指定し、森や河川は着色するよう注文し、写真と既成の地図を提供し、現地に案内するなどしても、注文を受けた画家が芸術的な感覚と技術を駆使して地図を作製した場合は、画家が著作者であって依頼者は著作者ではないと判示している。

    このことはまた、著作物の創作に必要な資金を拠出したとしても、そのことによって著作権の帰属主体になるものではないということである。

  • (5)尚、著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供もしくは提示の際に、その氏名が著作者名として通常の方法により表示されている場合は、その著作物の著作者と推定される(14条)。

*1 東京地裁昭和61年6月20日判決(判タ637号209頁)

*2 最高裁平成5年3月30日(判時1461号3頁、判タ820号65頁)

*3 東京地裁平成14年8月28日判決(判時1816号135頁、判タ1129号258頁)

*4 東京地裁平成10年10月29日判決(判時1658号166頁、判タ988号271頁、知裁集30巻4号812頁)

*5 東京地裁昭和39年12月26日判決(判タ172号195頁)

2 共同著作・結合著作

前項において「著作者」という時は、ある創作者が単独で著作物を作成した場合を想定していたが,複数人の創作的関与のもとに著作物が作成されることもある。

(1)共同著作物

このうち、2人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与部分を分離して個別に利用することができないものを「共同著作物」という(2条1項12号)。漫画は、コマ絵とその吹き出し部分の台詞が分離不可能であるから「共同著作物」である。
  
「英訳平家物語事件」*6では、平家物語を英訳した日本人が、知人の米国人に訳文の校訂、精錬を行ってもらった事案で、校訂は翻訳という創作的行為を助けるものであっても、翻訳そのものではないという主張を排斥し、本件では英訳の過程において校訂者独自の翻訳者と対等の立場よりする創意工夫が存在するといって、平家物語の英訳文を共同著作物であると判示している。

「私は貝になりたい事件」*7では、テレビドラマの脚本の原案を作成した者が、その原案に基づき作成された脚本は共同著作物であると主張した事案であるが、それは原案を作成したにとどまり、脚本を共同して創作したことにはならないと判示している。

*6 大阪高裁昭和55年6月26日判決(無体例集12巻1号266頁)

*7 東京地裁昭和50年3月31日判決(判タ328号362頁)。ただ、原案がそれなりに詳細なものである場合は共同著作物になることもあるであろう。本事案では、原案を口頭で伝達したというものであって、それはいまだ企画、アイデアのレベルであったものと思われる。

(2)共同著作物と二次的著作物の異同

共同著作物の作成は、創作活動が時間的に並列して行われ場合が多いと思われるが、そのことが要件ではない。時間的に相前後して行われる場合もありうる(たとえば、上記「英訳平家物語事件」)。
  
そうすると、共同著作物と二次的著作物との関係はどうなるのであろうか。共同著作物は、その作成過程において互いの協力関係があるのに対して、二次的著作物は原著作物があってこれに依拠して、その作成過程においては翻案者だけがその作成に関与するものである。共同著作物の場合,共同著作者は,著作者人格権及び著作権について、全員の合意がなければ行使することができない(64条1項、65条2項)が、信義に反して(64条2項の場合)、もしくは正当な理由がない限り(65条3項の場合)、合意の成立を妨げることはできない。二次的著作物の場合も、原著作者と翻案者の同意がなければ翻案物の利用ができない点で共同著作物と同様であるが、原著作者と翻案者に合意の成立に関する行為規制(64条2項や65項3項)のようなものはない。したがって、利用を拒否することは自由である。これは、共同著作物の場合は、お互いに協力し合って著作物を作成するものであるから、この協力関係は利用の場にも反映する必要があるが、二次的著作物の場合は、その作成過程に協力関係があるわけではないから、二次的著作物の利用は、原著作者の自由な決定に委ねてよいし、また原著作者が二次的著作物を利用したいと考えたとしても、これも翻案者の自由な決定に委ねてよいからである。

したがって、両者は意思を通じた共同作業(協力関係)があるか否かによって区別すべきであろう。

(3)結合著作物

共同著作物に対して、外観上は1個の著作物のような形態であるものの,寄与部分がそれぞれが独立しており,著作物がたんに結合しているにすぎないものを「結合著作物」という。小説と挿し絵や,歌詞と楽曲は,それぞれ個別に利用できるので,結合著作物である。この場合は,個別に利用できるそれぞれの著作物に対して、それぞれに権利が成立する。したがって、共同で権利行使する必要はない。利用しようとする者は、利用したい部分について創作した著作者から個別に,許諾を得ればよい。

「在宅介護誌事件」*8においては、4コマ漫画とその吹き出し部分の台詞について「共同著作物」、イラストと説明部分からなる書籍について「結合著作物」と判示している。

*8 東京地裁平成9年3月31日判決(判時1606号118頁、判タ951号269頁)、東京高裁平成10年11月26日判決(判時1678号133頁)

3 職務著作(法人著作)

(1)著作者=創作者の例外

著作者とは,著作物を創作した者である。そうすると、他人を雇用して著作物の創作にあたらせる使用者も創作活動を行う者ではなく、著作者ではないはずである。ところが著作権法は、一定の要件の下で、従業員が創作した著作物について法人その他の使用者(以下、[法人等」という。)を著作者であるとしている(15条)。その結果、著作権と著作者人格権は、著作者である法人等に帰属する。このことを一般に「職務著作」とか、「法人著作」とかいう。この規定内容は,著作物を創作した者が著作者であるという著作権法の原則の大きな例外であって,また特許などの扱いとも大いに異なっている*9*10

歴史的には、著作物は、芸術家という個人(自然人)の創作活動により作成されるのが一般であった。ところが、現代においては、雇用契約を通じて複数の個人が団体を形成し、そこで創作活動を分担しながら著作物を作成するという形態が多くみられるようになってきた。そして、無方式主義の法制度にあっては、こうした状況は、権利の帰属関係が極めて不明確になる。すなわち、無方式主義のもとにおいてこれを共同著作物として扱うとするなら、権利の帰属関係がきわめて不明確になるとともに、その行使及び利用手続きが煩雑となる。そこに、職務著作の規定がおかれる合理性があると思われる*11

*9 工業所有権法でも職務発明に関する規定があるが、使用者等は無償で通常実施権などが与えられるのみである(特許35条、新案11条3項、意匠15条3項)。

*10 この規定の評価については、意見の分かれるところである。これを極めて特異な例外規定と評価する考え方がある(斉藤著作権法118頁)が、こうした論者は、本条を厳格適用する傾向にある。

*11 そうだとしても、著作者人格権まで法人等に帰属することに対して疑問を呈する意見もある。そこで一つの考え方として、映画の著作物の取り扱い同様に(本章5参照)、著作権のみを法人等に帰属させ、著作者人格権は従業員に残すという方法もありうるが(半田概説81頁)、複数の従業員に共有的に帰属する公表権、氏名表示権、同一性保持権を処理しなければならないという問題が残るのであり(映画の場合は、映画監督一名又は少数名との関係で権利処理をすれば足りる。)、その意味で著作者人格権も使用者に帰属させることに合理性があるであろう。

(2)職務著作の要件

著作権法は,「法人その他の使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で,その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は,その作成の時における契約,勤務規則その他に別段の定めがない限り,その法人等とする。」(15条1項)と規定している。尚、ここでいう法人には、「法人格を有しない社団または財団で代表者または管理人の定めがあるもの」を含む(第2条6項)。

その要件は、①法人等の業務に従事する者が作成すること、②職務上作成するものであること、③法人等の発意に基づくものであること、④法人等の著作の名義で公表されるものであること、⑤契約、就業規則等に別段の規定がないこと、である。以下、検討する。

① 法人等の業務に従事する者が作成すること

法人等の業務に従事する者が作成するとは、法人等の指揮命令下において労務を提供する者ということであり、通常は雇用契約に基づく場合である。
 
委任関係や請負関係の場合は,一般的に,受任者,請負人は,委任者,注文者に対して独立の地位に立ち,自己の裁量によって活動するので,法人等の業務に従事する者ではない。委任契約や請負契約に基づき著作物が作成された場合は,受任者,請負人が著作者となる(本章、1、(4)参照)。

ただし、雇用契約があるか(法人等の指揮命令下において労務を提供しているか)どうかの判断は、業務遂行方法の実体を見ながら判断されることになる。「RGBアドベンチャー事件」*12は、観光ビザによりわが国に滞在した外国人デザイナーがアニメーションの企画等を業とする法人において図画を作成した事案であり、雇用契約があったかどうか微妙な事案あった。本判決は、雇用契約があるかどうかについて、法人の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべきであると判示し、本件では、デザイナーが会社の従業員宅に居住し、その事務所で作業を行い、毎月基本給名目で一定額の金銭の支払いを受けていたことなど雇用契約の成立をうかがわせる事情があるとして、在留資格の種別、雇用契約書の存否等の形式的な事由を主たる根拠として法人等の業務に従事する者ではない(独立の事業主体である)と判示した原判決を破棄・差し戻した*13

「ラストメッセージin最終号事件」*14では、外部のフリーランサーが記事の執筆にあたり編集スタッフとして参加している場合は、正規の社員でなくても会社の指揮命令下にあるのだから、法人等の業務に従事するものであるとしている。

これに対して、「商品カタログ事件」*15では、商品カタログに掲載する嘱託カメラマンが撮影した写真について、注文者は、商品カタログ用の写真は芸術写真等と比較すれば、撮影方法に撮影者の主観や裁量が介在する余地は少なく、また撮影に当たっては、被写体の選択、構図の設定、光量の調整の外、カメラアングルや絞りの工夫等その創作行為のすべてについてカメラマンに指示を与えるなどして指揮監督をしていることを理由に職務著作であると主張したが、実際に写真という形で具体化するについてはプロのカメラマンの技量に負うところが大きいし、プロのカメラマンが注文者に対して従属的地位にあったと認めることはできないと判示し、職務著作の成立を否定している。また、「旅行情報誌事件」*16においても、フリーのカメラマンが撮影した写真について、旅行会社は、オーストラリアの特集を自ら構想し、日程、訪問先等のスケジュールを具体的に指示し、一切の費用を負担して、実質的にその指揮下で撮影をさせているから職務著作であると主張したが、写真家はフリーであって社員ではなく、旅行会社と対等の取引相手として同社の注文に応じたものであり、撮影も自己の知見を生かして、撮影場所や対象を自己の裁量で決定して行っているから、旅行会社の指揮監督下にあるとはいえず、職務著作ではないと判示している。

ゴーストライターなども、以上のような視点から、職務著作であるかどうかが決定されることになるであろう。

尚、当事者の意思をもって職務著作の成否が決まるような判示するものとして「四進レクチャー事件」*17や「SMAPインタビュー事件」*18がある。しかしながら、本要件の充足の判断において、当事者の意思を本要件の充足性を判断する要素とすることはできないであろう。

また、取締役の場合は法人との契約は委任契約であるが、法人等の業務に従事する者であると解してよい*19

*12 最高裁平成15年4月11日判決(判時1822号133頁、判タ1123号94頁)

*13 尚、職務著作を例外規定としてこれを厳格に解する考え方(斉藤118頁)は、著作者としての地位を取得できる使用者は雇用関係から生ずる社会保険や安全配慮義務など労務についても全面的な責任を負うものでなければならないとするので、判旨とは結論が異なることになると思われる。

*14 東京地裁平成7年12月18日判決(判時1567号126頁、判タ916号206頁)

*15 大阪地裁平成7年3月28日判決(知裁集27巻1号210頁)

*16 東京地裁平成5年1月25日判決(判時1508号147頁、判タ870号258頁)

*17 東京地裁平成8年9月27日判決(判時1645号134頁)

*18 東京地裁平成10年10月29日判決(判時1658号166頁、判タ988号271頁)

*19 「システムサイエンス事件」東京地裁平成7年10月30日判決(判時1560号24頁)、「在宅介護事件」???

派遣の問題

派遣においては、派遣労働者は派遣元企業と雇用関係にあるが、派遣先企業の指揮命令の下で職務を遂行するという関係にある。

そのため,たとえば派遣されたプログラマーがコンピュータ・プログラムの作成をした場合は、派遣先企業での職務著作となるのか否かについて議論がある。

これについては、職務著作の規定を限定的に解釈し、派遣契約に基づき派遣された従業員と派遣先企業との間には雇用契約はないのであるから、職務著作にはならないとする考え方がある*20

しかしながら、この解釈に従うと、派遣元企業においては、派遣元企業による発意もその名義での公表もないから、作成された著作物に関する権利はことごとく派遣社員に帰属することになる。派遣先での指揮命令関係は雇用契約と全く同一の関係であるのに、こうした差異が生じるのは不合理である。派遣労働者は派遣先の業務に従事する者と考えるべきである*21

*20 知的財産関係法666乃至668頁は雇用関係に限定する説と限定しない説の双方の相違は派遣社員に出るとし、限定説が妥当であるとする。斉藤博「職務著作」・知的財産関係訴訟法239頁も同旨。

*21 ソフトウエアの法的保護59頁も同旨

② 職務上作成すること

従業員が、職務上作成する必要がある。職務時間内であっても職務と関係なく作成したものなどもこの要件に該当しない(就業規則に定められた職務専念義務に違反することにはなる。)。これとは反対に、自宅に持ち帰って作成したとしても、職務として作成すればこの要件に該当する。したがって、ここでの判断においては、職務時間内かどうかということは決定的な判断要素ではない。
 
「在宅介護誌事件」*22においては、小規模な出版社で経理を担当していた会社代表者の妻が、主として勤務時間中ではあるものの在宅介護研究会の活動として作成した書籍について職務上作成したものではないとする。

また、「判例データベース事件」*23においては、大学に設置された研究室の室長に就いていた大学の教授が、講師、院生、学生、卒業生、実務家等からなるプロジェクトチームを編成して、判例データベースを作成してきた事案において、その作成は大学の発意に基づくものではないし、大学の職務として作成したのでもないから、職務著作にはあたらないと判示している。

尚、大学教授や研究機関の研究員の場合は、講義や研究は職務であるが、論文の発表は職務には含まれないであろうから、書かれた論文は職務著作とはならない。

*22 東京地裁平成9年3月31日判決(判時1606号118頁、判タ951号269頁)、東京高裁平成10年11月26日判決(判時1678号133頁)

*23 大阪地裁平成3年11月27日判決(判時1411号104頁)

③ 法人その他の使用者の発意にもとづくこと

これは,使用者である法人が組織としての決定のもとに当該著作物を創作することを企画、主導して,これにもとづき被用者である従業員がその著作物を作成することである。最初の企画したかどうかといったことではなく、法人が組織として作成を決定し、この決定に基づくということである。
 
ただ、雇用契約があることによって「業務に従事する者」という要件が満たされ、かつ「職務上」という要件も満たされる場合は、ほぼ「法人等の発意」は満たされると解してよい。すなわち、組織としての決定といっても、明確な職務命令があった場合に限らず、例えば従業員が自分で企画を出して上司がこれを了承したような場合を含むし、そうした創作活動を行うことが職務上期待されている場合も含むと解される。そもそも発意自体、従業員の仕事である場合が多い。そうすると、雇用契約があって、職務上作成される場合は通常法人の発意要件は満たされると考えるべきであり、予算、人員の配置などの理由により使用者が積極的に承認を与えないときに、法人の発意が否定されることになろう。すなわち、雇用契約がある場合は、著作物の作成をしないことを法人が機関決定したときに、初めて法人の発意でないというぐらいの意味として考えるべきであろう。

そして、このような決定がなされたにもかかわらず作成を継続することは、そもそも「職務上」の要件をみたさない。命令を無視して作成すれば、懲戒等の対象となる(職務外のことを行なっている)一方で、作成されたものは個人の著作物と考えるべきである。

これに対して、雇用契約がない場合で、実質的指揮監督を理由として職務著作が肯定されるためには、発意は積極的な要件となるというべきである。法人の発意があって、この発意に基づき具体的な指揮監督があって、初めて職務著作となるであろう。この場合は、法人名義の公表要件も厳格に解されよう。

④ 法人などが自分の著作の名義のもとに公表するものであること

この要件の目的は明確でない。すなわち、法人等名義を付して公表することを職務著作の成立要件にすることに合理的理由はないであろう*24。なぜなら、そもそも著作物は公表されるとはかぎらないし、公表されても無名もしくは他人名義で公表される場合もあるからである。例えば、注文者からカタログやパンフレットの制作を依頼された場合、当該カタログなどには、著作名義を注文者としたり、もしくは著作名義を表示しない場合が大多数であろう。そして、この場合法人等の著作名義がないのであるから、著作権は法人等の従業員に帰属するという不合理な結果を招来する。その意味で、本要件を厳格に適用する理由がないことになる。

したがって、本条の規定の仕方も、「公表するもの」と規定して将来公表される際には法人等の名義を付すべきことが予定されているものを含むことにしているが、さらには、将来の公表が予定されていなくても、仮に公表されるならば法人等の名義を付すことになるものについても、本件要件を満たすと一般的に理解されている*25。このように解することによって、例えば、①乃至③の要件を満たしている組織の内部文書が法人著作の要件を満たすことになる。ただ、無名もしくは他人名義で公表したものについては、これを職務著作の要件を満たすものとすることはできない。そのため、結果の不合理さを是正するため、著作権の黙示的譲渡を認めざるをえない場合がでてくる*26

本要件は厳格に解される必要はないという立場からすれば、「著作者」という表示がなくても、これを同じ意味を示す表示があれば、著作名義と解してよいであろう。例えば、「制作者」の表示は著作名義であると解してよい。「商品カタログ事件」*27では、「Planning & Artwaorks by Angle Co., Ltd.」の表示を有限会社アングルの著作名義があるとしている。「システムサイエンス事件」*28では、プログラムの著作物に関し、これを内蔵する装置のフロントパネルにSSCの表示が、リアパネルにはSYSTEM SCIENCE COという表記の製造銘版が付され、装置内のプリント基板にはSSCの表示がある場合に、システムサイエンス株式会社の著作名義の表示があるとする。また、cは、著作権者として表示された名義の法人が著作者であれば、著作名義と解してよいであろう。ただ、発行者の表示は、著作名義とはなりえないであろう*29

*24 作花詳解188頁は、実態とは別に公表名義を要素とすることには判然としないものが残るという。

*25 東京高裁昭和60年12月4日判決「新潟鉄工事件」(判時1190号143頁)、東京地裁平成7年10月30日判決「システムサイエンスパートⅡ事件」(判時1560号24頁、判タ908号69頁)

*26 前掲「在宅介護誌事件」では、従業員が職務上作成したイラストに関し、法人名を記載することなくイラストを含む書籍を発行したために法人著作の要件を満たさなくなった事案であるが、1審判決は、当該法人が印刷物の作成などを主たる業務としており、当該従業員もイラストなどの作成を主たる職務としているという事実関係のもとでは、こうした法人内には職務著作の要件を満たさない著作物が相当数存在することと、依頼者との取引の継続のためにはこうした著作物の著作権を法人が保有することが重要であること、給与を受けながら職務上こうした著作物を作成する従業員にとっては何らかの権利主張ができるとの意識は全く希薄であったことなどを理由に、雇用契約を締結時に職務上作成する著作物の著作権は、職務著作が成立しない場合はこれを当該法人に譲渡することを黙示的にかつ包括的に合意していたと判示する。

*27 大阪地裁平成7年3月28日判決(知裁集27巻1号210頁)

*28 東京地裁平成7年10月30日判決(判時1560号24頁)

*29 前掲「在宅介護誌事件」

プログラム著作物に関する特例

自社開発のプログラム著作物については,i)会社内で利用されるために流通を予定しておらず,そのため未公表のものが多いこと、ii)公表されるとしても無名であったり、OEM契約により作成者以外の名義が付される場合もあるといった理由から,本要件は削除されている(15条2項)。

上記の通り、i)については、仮に公表されるならは法人名義とされる場合を含むと解することによってある程度妥当な解決をはかることができるが、ii)のように無名又は他人名義で公表されてしまったものについてはいかんともしがたい。例えば、ある著作物の作成を受注した中小企業(下請け)が作成後納入した場合、その中小企業の名義が表示されることは少ない。むしろ、発注者か、発注者が遠慮した場合は無名ということになる。そうすると、突然、中小企業内の従業員が著作者になるというのが理屈であるが、これに合理性はない。そこで、プログラム著作物に関しては、本要件を削除したものである。

しかしながら、上述の通り、本要件を要求することが不合理であるという上記理由は、何もプログラム著作物に特有なものではないことは上述した通りである。プログラム著作物の改正の際の「文化庁試案」では、職務著作全体について公表要件を排除することが提案されていたが、立法化されなかったという*30

*30 高石・コンピュータ法務167頁

⑤ 作成の時における契約,勤務規則,その他に別段の定めがないこと

上の4つの要件を満たす場合でも、就業規則等においてこれと異なる定めがある場合,すなわち,従業員が職務上作成したものでも個人の著作物として扱うというような規定がある場合は,職務著作にはならない。

4 著作権者

著作権法においては,「著作者」という用語の外に、「著作権者」という用語が使われる場合がある。「著作者」が著作物を創作した者であるのに対し、「著作権者」は著作権を有する者という意味である。そして、ここまで,著作物を創作した者を「著作者」といい、「著作者」に「著作権」が帰属するとしていた。すなわち、著作者=著作権者ということである。ところが,ある場合には,著作者が著作権者でない事態が発生することがある。つまり,著作物を創作した「著作者」と著作権を有する「著作権者」が異なる場合がある。
 
著作権は著作者が著作物を創作することによって発生するから,第一次的には著作者が著作権者である。しかし,著作権は財産的な権利だからこれを譲渡できるし(特定承継、61条1項),相続によって移転することもある(包括承継、民法896条本文)。したがって、著作権者には、原始的著作権者と承継的著作権者がいることになる。

前項で説明した職務著作では、法人等がそもそも「著作者」であって、従業員から著作権の譲渡を受けて著作権者となるのではない。したがって、法人等は「著作者」であり、「原始的著作権者」である。また,映画の著作物の場合は,著作物の効率的利用という観点から,法が,映画監督等の著作者を著作権者としないで、映画会社などの映画製作者を著作権者とする特別の規定をおいている(次項参照)。この場合、映画製作者は、著作者ではないが原始的著作権者である。

このようにして、本来は、著作物の作成の主体である「著作者」と著作権の帰属主体である「著作権者」を使い分ける必要があるのである。そこで、ここからは,「著作者」と「著作権者」という用語をそれぞれ使い分けて用いることにする。

5 映画著作物の著作者と著作権者

(1)著作者

映画は、著作権法の規定により、原始的に「著作者」と「著作権者」が分離する特別な著作物である。また映画は、小説、脚本、音楽その他の著作物を原著作物として利用しながら作成される二次的著作物という性格があるので、原著作物に関する著作者及び著作権者の権利があることも忘れてはならない。

まず著作権法は、映画の著作者の決定に関し、「映画の著作物の著作者は,その映画の著作物において翻案され、または複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする」と規定している(16条)。
これはまず、映画の著作者の中から、その映画の著作物において翻案され、または複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者(これらの者を「クラシカルオーサー」という。)を除くといい、これらの者は映画の著作者とはしていない(ただし、これらの者が映画の著作物に対し何らの権利ももたないということではない。(3)参照。)。そして、クラシカルオーサー以外の関与者のうちで、制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者を「著作者」としている。映画は映画製作会社、監督,カメラマン、俳優など多くの人々の共同作業によって制作されるという特殊性があり,多数の人が関与するが、その中で制作や監督などを担当して著作物の全体的形成に創作的に寄与した者を映画の著作者であるとするのである。つまり、一貫したイメージをもって映画制作の全体的形成に寄与した者が著作者であり、一般には映画監督(総監督)である(これらの者を「モダンオーサー」という。)。尚、著作権法は、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当して」といっているが、これはそれぞれの担当において監督的な役割を果たした者が「著作者」であるという趣旨ではなく、あくまでこうした担当を全般的に監督し、全体的形成に寄与した者を「著作者」とする趣旨である*31。また、企画、脚本依頼、組織作り、キャスティング、資金管理、広告、宣伝などを担当する者(一般に、「プロデューサー」と呼ばれる。)は著作者ではない。「超時空要塞マクロス事件」*32は、連続テレビアニメの制作に、プロデューサー,現場プロデューサー,総監督,シリーズ構成者,キャラクターデザイナー兼キャラ作画監督,メカニックデザイナー,音響監督,メカ作画監督らが主なスタッフとして関与した事案であるが、このうち,総監督が、シナリオの作成からアフレコ,フィルム編集に至るまで現場での制作作業全般に関わり,その出来映えについて最終的な責任を負い,実際にも,動画の作成,戦闘シーン等のカットに関する最終的な決定,撮影後のラッシュフィルムのチェック,フィルム編集等に関する最終的な決定を行っていたのだから「全体的形成に創作的に寄与した者」に当たるといい、プロデューサー及び現場プロデューサーは,主として,スポンサー,テレビ局,広告代理店との交渉等を担当しており,創作面での具体的な関与はなく,スタッフに対して指示を与えたこともないので、これに該当しないと判示している。

ただし、どのような呼称で呼ばれているかは問題ではなく、実質的な寄与の内容により決定される。「宇宙戦艦ヤマト事件」*33においては、著作者が漫画家であるのか、プロデューサーであるのかが争点となったが、プロデューサーが、企画書の作成から完成に至るまでの全制作過程に関与し、具体的かつ詳細な指示をして最終決定をしたとして、著作者であると判示している。そしてアニメ映画においては、映像が作品の重要な特徴として認識される面があることは否定できず、漫画家が、美術・設定デザインを担当し、「宇宙戦艦ヤマト」や主要な登場人物デザインを作成したために、映像や画面構成に漫画家の個性が発揮されているのは当然といえるが、そのことゆえに、本件映画の著作物を漫画家が著作したとはいえないとする。

尚、映画の著作物が、職務著作の場合(すなわち、全体的形成に寄与する者が映画製作会社の従業員である場合)は、映画製作会社が著作者である(15条)。

また、俳優などの実演家は、著作隣接権者としての保護を受けるのみであって(第6章第2節参照)、主演俳優といえども映画の著作物の著作者になるものではない。

*31 反対、茶園成樹「映画の著作物の著作者・著作権者について」(コピライト522号2004.10、9頁)は、撮影や美術を担当する者を例示しているから全製作過程に関与していないと著作者になれないという趣旨ではないとする。しかしながら、文言上、全体的形成に寄与した者と明示されているから、制作、監督、演出、撮影、美術などという例示は総監督が責任をもって担当する役割を例示したものと考えられる。

*32 東京地裁平成15年1月20日判決(判時1832号146頁、判タ1123号263頁)

*33 東京地裁平成14年3月25日判決(判時1789号141頁、判タ1088号268頁)

(2)著作権者

以上の通り、著作権法は,モダンオーサーが映画の著作者であるとしている。ところが、著作権の帰属に関しては、特別の規定をおいている。劇場用映画、放送、有線放送用映画に分けて説明する。

① 劇場用映画の著作物

「映画の著作物の著作権は,その著作者が映画製作者に対し当該映画の製作に参加することを約束しているときは,その映画製作者に帰属する。」(29条1項)と規定し、著作権を著作者ではなく、「映画製作者」に帰属させている。放送及び有線放送用映画については、29条2項及び3項が別個の規定をおいているので、本条項は、基本的には劇場用映画に関する規定である*34

「映画製作者」とは,映画の著作物の製作に発意と責任を有する者である(2条1項10号)*35。これは、制作現場で制作行為の主体となる者が監督などのモダンオーサーであるのに対して、映画製作会社のように映画を製作することを発案、企画し,資金的な手だてを行いながら製作行為の主体となる者が映画製作者である。法的、経済的観点からいえば、映画の著作物を製作する意思を有し、同著作物の製作に関する法律上の権利・義務が帰属する主体であって、そのことの反映として同著作物の製作に関する収入・支出の主体となる者である*36

この規定の立法趣旨は、i)従来から、映画の利用に関しては、映画製作者と著作者との間の契約によって、映画製作者に権利行使が委ねられていたこと、ii)映画製作者が巨額の製作費を投入し、企業活動として製作・公表するものであること、iii)映画は、多数の関与者が存在するところ、これら者に個別に権利行使を認めることにすると映画の円滑な利用とそれによる資金の回収が阻害されること、などから権利の一元的行使を可能にしようというものである(加戸講義216頁参照)。そのために、著作者が映画製作者と契約をして映画製作に参加するものである場合は、映画の著作物の著作権は映画製作者に帰属させているのである。尚、「当該映画の製作に参加することを約束している」とは、総監督などの役割を担う者が映画製作者と契約してその報酬などを合意した上で、当該映画の制作を担当するということである。

「三沢市市勢映画事件」*37では、監督と制作会社間で著作権の帰属が争われたが、制作会社が発注者である三沢市教育委員会に見積書を提出し、履行保証保険の契約、債務の保証、完成義務は制作会社が負っており、監督に対する報酬の支払いを含めて、映画製作費用は全て制作会社が負担しているとして、制作会社が映画製作者であると判示している。 また、「超時空要塞マクロス事件控訴審」*38では、アニメ制作会社と広告代理店間で著作権の帰属が争われたが、テレビ放送用アニメ映画の製作を発意し、スポンサーを集め、放送枠を獲得し、放送局との間で放映契約を締結して、制作費を含む放映料の支払義務を負担した広告代理店と、この企画を受けてアニメ映画の製作を引き受けることとし、放送局との間でアニメ映画製作契約を締結し、これを製作した製作会社間で著作権の帰属が争われた事案であるが、本件では、製作会社が放送局と製作契約を締結し、同社が納品義務を負うことの対価として、放送局は同社に制作費の支払義務を負うことになっていること、制作に要する費用は製作会社が支払っていたことを理由に製作会社が映画製作者であると判示している。そして、当初の発意が広告代理店であったとしても、製作会社が他人からの働きかけを受けて製作意思を有するに至った場合でも発意が否定されるものではないとし、また広告代理店が放映料を支払う義務を負担しており、これを原資として放送局が製作会社に制作料が支払われていたとしても、これは放送局が製作会社に対して支払う原資をどう確保するかの問題であり、製作会社の法的立場に影響を与える事由ではないとしている。そして、監督との関係では、監督は放送局とアニメ映画製作会社間の製作契約に基づいてテレビアニメを製作していることを知った上で、報酬もアニメ映画製作会社から受け取っているのだから参加契約があるとしている。

歴史的には、東宝、松竹、東映といった映画製作会社が「映画製作者」としての中心的役割を担ってきたが、近年は、これらの映画製作会社だけでは莫大な投資とリスクの負担に堪えることができないために、これに加え、テレビ局、出版社、広告代理店などが共同で「映画製作者」としての役割を担うようになってきている。

尚、「映画製作者」に帰属するのは著作権のみであって、著作者人格権はモダンオーサーに残ることになる。

*34 尚、録画物なども含めて映画の著作物とする一般的な考え方を前提にすれば、録画物に関しても本条項が適用されることになる。

*35 著作物を作成する創作活動を「制作」といい、発案と資金手だてなどをしながら作成を主導する活動を「製作」という。

*36 「超時空要塞マクロス事件控訴審」東京高裁平成15年9月25日判決(最高裁ホームページ)、同趣旨の説示をするものとして「角川事務所事件」東京地裁平成15年4月23日判決(最高裁ホームページ)、加戸講義43頁も同旨。

*37 東京高裁平成5年9月9日判決(判時1477号27頁)

*38 前掲判決(最高裁ホームページ)、尚、原審は前掲東京地裁平成15年1月20日判決(判時1832号146頁、判タ1123号263頁)であり、同趣旨の判示をしている。

未編集フィルムの問題

前掲三沢市市勢映画事件は、未編集フィルムは映画の著作物ではないので29条の適用はなく、未編集フィルムの著作権は監督等に帰属すると判示した。未編集フィルムが映画の著作物であるかどうかは別にして、29条の立法趣旨が上記のようなものであるとすると、投下資本の回収のためには少なくとも29条の類推適用を認めるべきであろう。特に、映画が完成しなかった場合を想定するなら、映画製作者としては未編集フィルムからでも回収を行う必要があるからである(作花詳解194頁参照)。

② 放送用映画

もっぱら放送事業者が放送のための技術的手段として製作する映画の著作物に関しては、全ての著作権ではなく、以下の支分権だけが、映画製作者としての放送事業者に帰属する(同条2項)。すなわち、放送番組として製作される映画の著作物の著作権は、放送に関係するものに限り、映画製作者に帰属する。

  • ⅰ 放送権、放送を受けての有線放送権及び公衆伝達権
  • ⅱ 複製権、その複製物により放送事業者に頒布する権利

この規定は、もっぱら放送のため*39の技術的手段として映画を製作する場合の規定であるから、映画製作者たる放送事業者に帰属する権利は、放送に関係するものに限られるというのが当事者の意思にもっとも適うものである。そうすると、ビデオカセットとして販売することも予定しながら製作される場合は本項の適用はない(加戸講義218頁)。この場合、1項の適用を検討することになる。また、生放送は固定がないので映画の著作物にはならない。したがって、生放送を行いながら固定したものにも本項の適用はない。

もっぱらは放送事業者にもかかるので、放送用映画を外注する場合はもちろんのこと、共同製作する場合も本項の適用はない。 

*39 「もっぱら」は、「放送事業者」と「放送のため」の両者にかかる(加戸講義218頁)。

③ 有線放送用映画

もっぱら有線放送事業者が有線放送のための技術的手段として製作する映画の著作物に関しては、全ての著作権ではなく、以下の支分権だけが、映画製作者としての有線放送事業者に帰属する(同条2項)。すなわち、有線放送に関係するものに限り、映画製作者に帰属する。

  • ⅰ 有線放送権及び公衆伝達権
  • ⅱ 複製権、その複製物により有線放送事業者に頒布する権利
(3)クラシカル・オーサーの地位と権利

映画の著作物において翻案され、または複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者、すなわち「クラシカルオーサー」の地位と権利はどう扱われるのであろう。これらの者は、次のような理由により、「映画製作者」と同様な権利を持つことになる。まず、映画は小説や脚本の翻案物であるから、小説や脚本の著作者は、28条の規定により映画の著作物の原著作者として、映画製作者と同様の権利を持つことになる(第3第6節3、(3)参照)。また、音楽や美術などの著作者は、映画の著作物において利用されている著作物の著作者として、21条以下の権利をストレート(28条を介することなく。)に行使することができる。

6 放送番組の著作者と著作権者

テレビ局は最大の映画製作者でもある。

自社製作の場合、プロデューサーが企画、予算管理を行い、ディレクターが映画制作のために必要なさまざまな演出を行い、監督業務を担当する*40。いずれにしても、ほとんどの場合は、放送局の従業員であるか、ディレクターが外部の者である場合は、29条2項の適用がある。

外注の場合、制作プロダクションにより制作が行われるが、こうしたプロダクションは映画製作者としての要件(29条1項)を満たしていることが多い。しかしながら、一般にこうした制作プロダクションはテレビ局の下請化しており、著作権は契約上、放送局が譲り受けている例が多い。また、窓口権といって、自社での放送以外の利用について許諾権を放送局がもつ場合が多い。

*40 放送ハンドブック329頁参照

7 プログラムの著作者(SEとプログラマー)

従来、プログラムの作成とは、いまでいうシステム設計とコーディングの作業が分化されることなく、設計をしながらコーディングをするといったような作業であった。

現在は、システム開発が行われる場合、コンピュータ・システムの基幹部分、すなわち、構造、手順、構成の設計と、システム設計書に基づきプログラミングをする作業の分業化が進み、前者はシステム・エンジニアと呼ばれる職種の人の作業であり、後者はプログラマーと呼ばれる職種の人の作業となっている。そして、上流の工程ほど創作性が必要であり、専門的に高度な経験と知識を要する。コーディングという作業は、詳細な設計仕様書をプログラム言語を用いてする単純な翻訳作業、また場合によっては、その翻訳作業自体、自動化されていることもある。大手システム・インテグレーターなどは、システム構築にあたり、後者の作業を外注することもよく見られるところである。

それにもかかわらず、著作権法が保護の対象とするのは、前述の通り、プログラミングにおける表現である。したがって、完成したシステムの著作者もプログラマーであるというのが論理の帰結である。SEとプログラマーが同じ法人の中の従業員である場合はいずれにしても法人著作として、当該法人が著作者になるが、プログラミングを外注する場合などは、外注先の事業者が著作者になる。