ビジネス著作権法

ビジネス著作権法

第2章 著作物-保護の客体

第2章 著作物-保護の客体

第1節 著作物性の一般的要件

1 保護の客体-著作物

著作権法による保護の客体は,人が創作性を発揮して、書き,描き,作曲し,作成し、制作したもの*1 であって、これを著作物という。

そして、「著作物」を創作した者には,「著作権」が付与されて手厚い保護を受けるから,「著作物」と「著作物でないもの」の区別は重要である。そのため著作権法も「著作物」の定義規定を置くとともに、「著作物」を例示している。したがって、著作権法による保護を受けるためには,定義規定の定める要件を充足する必要があることになり、この要件を満たすことを,対象物に「著作物性」があるという。そして、この要件を満たさないものは,当然のことながら,著作権法上の保護の対象から除外される。

そこで,著作権法の規定を見ると,著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」としている(2条1項1号)。つまり,著作物として保護されるためには,次の四要件を満たす必要がある。

  • ①「思想または感情」を表現したもの
  • ② 思想または感情を「創作的に」表現したもの
  • ③ 思想または感情を「表現したもの」
  • ④「文芸,学術,美術または音楽の範囲」に属するもの

*1 創作活動により著作物を作成する行為は、「製作」ではなく、「制作」という用語を使う。

2 著作物性

著作物性が肯定されるための四条件について、それぞれ検討する。

(1)著作物性の要件①-思想・感情要件-

著作物とは、「思想または感情」の表現である必要がある(以下、「思想・感情要件」という。)。

人が文章を書いたり、絵を描いたりした場合、それは一般に「思想または感情」を表現したものである。ところが、事実やデータ,またはこうした事実の羅列やデータの集合体は、「思想・感情要件」を満たさない。

著作物性の要件として「思想・感情要件」が要求されるのは、当然のことである。たとえば、何年何月何日にこれこれの事件が発生したとか,ここからあそこまでの距離は何キロであるとかいうような単なる事実やデータについて著作物性を認め,これをある特定の人だけが独占的に利用でき,他の人の利用を禁止できるということになれば,我々の精神活動や事業活動に著しい支障をもたらすことになる。したがって,事実やデータを「著作物」とせず,著作権法上の保護の対象から外し,誰もが自由に利用できることにしているのである。

具体例としては,レストランのメニュー,株価の一覧表,料金表,五十音順電話帳などは、著作物とはいえない*2。同様の意味で、自然公理、法則、発見なども著作物ではない*3

*2 「自動車部品データ事件」名古屋地裁平成12年10月18日判決(判タ1107号293頁)では、自動車部品メーカー及びカーエレクトロニクス部品メーカー等の会社名、納入先の自動車メーカー別の自動車部品の調達量及び納入量、シェア割合等の調達状況や相互関係のデータについて、著作物性を否定している。

*3 「自然科学法則事件」大阪高裁昭和54年9月29日判決(判タ397号152頁)は、自然科学上の法則やその発見及び右法則を利用した技術的思想の創作である発明等は、万人にとって共通した真理であつて著作物性はないとした。

(2)著作物性の要件②-創作性要件-

次に「創作性」が要求される(以下、「創作性要件」という。)。創作的でない、ありふれた表現などは保護する必要はない。例えば、言語著作物の場合では、日常的に使われる文章表現などの利用がある特定人に独占されてはならないので、保護の要件として、一定の創作性が要求される。

ただ,創作性の程度に関しては,特許法の進歩性のような高度なものである必要はない。また、学術的、芸術的に優れているかということとは関係がない*4。したがって、創作性は、その表現に「個性」が表れているという程度でよいと理解するのが一般である*5

(3)著作物性の要件③-表現要件-

第三に,「表現されたもの」であることが必要であり、アイデアは保護されない(以下、「表現要件」という。)。アイデアという抽象的レベルのものをある特定人に独占させるのは妥当でないからである。

*4 田村概説12頁は、「学術的、芸術的に優れているかどうかなどということは司法判断になじむものではない。」とする。

*5 創作性とは個性であると判示する裁判例としては、「SMAPインタビュー記事事件」東京地裁平成10年10月29日判決(知裁集30巻4号812頁、判時1658号166頁、判タ988号271頁)が、「創作的とは、表現の内容について独創性や新規性があることを必要とするものではなく、思想又は感情を表現する具体的形式に作者の個性が表れていれば足りる。」といい、「古文単語語呂合わせ事件」東京地裁平成11年1月29日判決(判時1680号119頁、判タ994号249頁)は、「創作的に表現したものというためには、当該作品が、厳密な意味で、独創性の発揮されたものである必要はないが、作成者の何らかの個性の表現されたものであることが必要である。」と判示する。他にも「ホテル情報誌事件第1審」東京地裁平成14年4月15日判決(判時1792号129頁、判タ1098号213頁)

たとえば、理論、方程式、概念、定義*6、これらを用いた論理展開、もしくは命題の解決過程などもアイデアであって表現ではない*7。特許法による保護の対象となる発明(技術思想)も表現ではない。ルール、約束事、作業手順、取扱方法なども同様である。

また、言語著作物におけるテーマ、抽象的ストーリー、キャラクターとかいったレベルのものはアイデアであって、表現ではない。したがって、例えば、男と女が出会い、恋愛をし、みんなに祝福されて結婚をするといった恋愛小説の抽象的ストーリーなどは、保護の対象とならない。美術著作物の分野では、ある画家のもつ画風、作風、タッチなどというものは表現ではない。

ただ,どこまでが表現で、どこまでがアイデアかという切り分けは、困難な作業となる場合が多い。

(4)著作物性の要件④-文芸等要件-

最後に,「文芸,学術,美術または音楽の範囲」に属するものである必要がある(以下、「文芸等要件」という)。

これは、歴史的に、著作権法は「文化」の発展に寄与することを目的とし、これに対して、特許法、実用新案法、意匠法、商標法などの工業所有権法は「産業」の発展に寄与することを目的とするものであった(産業保護法)ことから、このような要件がおかれているものである。したがって、この要件は、産業的なものを著作物から排除する趣旨であると説明される。

しかしながら、図形(10条1項6号)やプログラム(同9号)が著作権法による保護の対象とされていることからもわかる通り、現代の著作権法は、産業保護法的性格も併せ持つものであるし、そもそもある対象物が「文化」の範疇にあるか、「産業」の範疇にあるかなどということを明確に区分することなど不可能な場合が多い。したがって、対象物が産業的な性質を有するからといって直ちに文芸等要件を満たさず、著作物性が否定されるということにはならない。

そうすると、この要件は、産業的な性質を有するものには著作物性が否定されるものがあることを示しているという程度に読むべきであり、著作物性に関する独立の要件にはならないと解すべきである*8

*6 「城事件」東京地裁平成6年4月25日判決(判時1509号130頁、判タ873号254頁)では、定義について著作物性を否定している。

*7 「方程式事件控訴審」大阪高裁平成6年2月25日判決(判時1500号180頁、判タ846号244頁)は、方程式の展開を含む命題の解明過程は、アイデアとしての自然科学上の法則を客観的に、かつ不可避的に記述したものであるとして著作物性を否定している。

*8 ①乃至③の要件を満たせば、産業的な性質のものでも著作物であるというべきである。この要件に関して議論されるのは、主として「応用美術」の著作物性の問題であるが、応用美術であっても純粋美術の性質を有するもの、すなわち①乃至③の要件を満たすものは著作物性を肯定するのが一般的な考え方であり、本要件が独立に適用されて産業的な対象物が除外されるという取扱にはなっていない(本章第3節3,(3),⑤参照)。

3 著作物性と侵害の成否

著作物性の判断は、著作権法上の保護の客体となる資格があるかどうかの判断であり、著作物性の存在が肯定されると、著作者にその著作物に対する独占利用権が与えられ、他人がその著作物を利用することを禁止できる。

ただ、その場合に、他人の利用を禁止できる著作物の表現は、いかなる範囲の表現であろうか。例えば仮に、「トリスを飲んでハワイに行こう」というフレーズに著作物性を肯定できるとする。その場合に、このフレーズの著作者は、他人が「トリスを飲んでグアムに行こう」というフレーズを利用することを禁止できるのであろうか。また、「ウイスキーを飲んでハワイに行こう」というフレーズはどうであろうか。さらには、「トリスを飲んで懸賞を当ててハワイに行きましょう」というフレーズはどうであろうか。これは、著作物性が肯定された対象物の権利が及ぶ範囲の問題である。これを著作物の保護範囲の問題といい*9、著作物性の有無とは別個の問題である。

そうすると、著作物の著作者は、他人がその著作物を利用すること(著作権侵害をすること)を禁止することができるが、そのためには、それに著作物性が肯定されることに加え、他人が利用している対象物が自己の著作物の保護範囲内のものである必要がある。したがって、著作物性が肯定されることは侵害成立のための(利用禁止権を発動するための)必要条件ではあるが、十分条件ではない。この保護範囲の問題を検討するのが、侵害論であり、第9章において詳述する。

*9 著作権法は模倣を禁止する法律という側面もあるが、禁止される模倣の範囲の問題ということもできる。


第2節 著作物の実体-原作品,複製物との異同

1 著作物の実体

著作権法の中で,「著作物」以外に「複製物」とか,「原作品」などという用語が登場する。そして,この「著作物」,「複製物」、「原作品」という用語の意味を理解すると、著作物の実体がみえてくる。

(1)著作物と複製物

近代私法制度は,空間の一部を占め,物質として存在する「有体物」に対し、所有権という権利が成立することを基本構造としている。

これに対して,著作権法などが対象としているのは,「無体物」である。著作権を「無体財産権」などといったりするのは,「著作物」が「無体物」であるからである。それは,物質的なものではなく,観念的存在であって、この観念的存在に対して,著作権という権利が成立する。

例えば、原稿用紙に書かれた小説を例にすると、文章が記載された有体物である原稿用紙は「著作物」ではない。原稿用紙から切り離された観念的な存在としての小説が「著作物」である。そして,観念的な存在である著作物たる小説とそれが固定された(書き留められた)有体物である原稿用紙を一体のものとして見る場合に、これを「著作物」の「複製物」という。すなわち,小説という著作物が有体物に固定された状態として存在するとき、この有体物を小説の「複製物」というのである*10。さらに、印刷技術を使ってこの小説を書籍にしていくという作業は,観念的な存在である小説という著作物を印刷という形で別個の有体物(紙)の上に固定して,そこに小説という著作物を再製することである*11。したがって,この書籍のことも「複製物」という。

音楽も同様である。旋律(メロディ)、和音(ハーモニー)、リズムを要素とする、観念的な存在としての音楽が「著作物」である。そして、音符が書き留められた五線譜は、音楽という著作物を再製して有体物に固定したもので、音楽の「複製物」である。

キャンバスに描かれた絵も、基本的には小説や音楽と同じである。キャンバスという有体物に描かれた絵のうち,キャンバスから切り離された観念的な存在である絵が「著作物」である。そして,絵が固定された有体物であるキャンバスは、絵の「複製物」である。

そして、この観念的存在を支配する権能が著作権であり、これは例えば、著作物の複製物の所有者がその有体物を支配しているのとは別の権能である。

尚、著作権ビジネスにおいては、デジタル著作物という用語を使う例が多く見られる。しかしながら、著作物は観念的な存在であるから、著作物がデジタル化されるということはない。複製物の作成にあたり、著作物の固定がデジタル方式によってなされているというのが正しい用語例である。その意味で、デジタル複製物はあっても、デジタル著作物というものは存在しない。ただ本書では、固定がデジタル方式によっている著作物を、便宜的に「デジタル著作物」と呼ぶ場合がある。

*10 「固定」という用語は、著作権法におけるキーワードである。「著作物」を一定の支持物(物質、有体物)に記録することをいう。

*11 ここで使われる「再製」という言葉も注意して欲しい。「再生」ではない。「再生」とは、①死にかかったものが生き返ること、②音声・映像を録音・録画しておいて再びもとのまま出すこと、をいう。これに対して、「再製」とは、一度製品となったもの、また屑となったものをさらに加工して別の製品を作り出すこと、こしらえなおすこと、をいう(広辞苑)。

(2)複製物と原作品

絵の場合は、絵が描かれたキャンバス(複製物)を「原作品」と呼んで、著作権法上、特別の扱いをすることがある。それは、原作品が原作品以外の複製物に比較して多大な価値があるからである。例えば、有名な芸術家が描いた絵、彫った彫刻そのものは、ここから写真技術等を用いて作成された複製物とは、全く価値の異なったものとして扱われる実態がある。そのため、著作権法は、絵や彫刻などの「原作品」対して「展示権」(原作品を展示する権利)という権利を付与するなどの特別な取り扱いをしている。

これに対して、小説や音楽などの著作物の場合,原稿用紙や五線譜などの「原作品」に特別な価値はない*12。したがって、小説や音楽などに関しては「原作品」という概念はないし、これを特別に扱うこともない*13

*12 骨董的、マニア的な意味での価値は別問題である。

*13 尚、著作権法は、「原作品又は複製物」という規定の仕方をしている(26条の2)ので、上記複製物概念から原作品を除いた部分を「複製物」として整理していることになる(作花詳解265頁参照)。

2 著作物(無体物)の特徴

(1)著作物の個数と複製物の作成コスト

複製物とは,観念的存在としての「著作物」を有体物の上に載せているものであるが、この無体物を載せた複製物は複数(多数)作成することができる。換言すれば、著作物は複数(多数)の有体物(これを、媒体という。)に記録、固定、収録することができる。そして、複製物が複数個作成された場合も,「著作物」が複数存在するのではなく,「無体物としての著作物」はあくまでも1個であり、複製物が複数個あると理解する。

そして、有体物においては、同価値の有体物をn個作成するときのコストはn倍となるが、無体物においては同価値の複製物をn個作成するときのコストは、ほとんど不要である(主として媒体の費用だけ)。ここに、無体物の顕著な特徴がある。

尚、著作物を固定する媒体は、昔は紙であり、近年はテープ、フロッピーディスク、CD、MO、DVDなどである。

(2)移動の方法

有体物を移動させるには、その物体を物理的に運ぶしかないが、著作物(無体物)は有線又は無線の送信手段によりこれを伝達することができるのも一つの特徴である。

3 著作物性と固定要件

著作物は観念的な存在であるので、著作物の存在にとって固定は必須のものではない。したがって、著作権法も、著作物性の要件として固定を要求していない。すなわち、観念的な存在としての小説や音楽が有体物に固定されることを、著作物成立のための要件としていないのである。そのため、大学教授の講義、即興のスピーチ、即興演奏された音楽なども著作物たりうることになる。また、パソコン上で描いたコンピュータ・グラフィックも、保存前といえども著作物たりうる。その時存在した著作物の内容を証明できないということはありうるが、あくまでもそれは証明の問題である。


第3節 著作物の種類

1 著作物の種類

(1)例示された著作物

著作権法は,著作物の具体的な例を示している(10条1項)。

  • ① 小説,脚本,論文,講演その他の言語の著作物(1号)
  • ② 音楽の著作物(2号)
  • ③ 舞踊または無言劇の著作物(3号)
  • ④ 絵画,版画,彫刻その他の美術の著作物(4号)
  • ⑤ 建築の著作物(5号)
  • ⑥ 地図または図形の著作物(6号)
  • ⑦ 映画の著作物(7号)
  • ⑧ 写真の著作物(8号)
  • ⑨ プログラムの著作物(9号)

また、以下のものも著作物であるとしている。

  • ⑩ 編集著作物(12条)
  • ⑪ データベース著作物(12条の2)
  • ⑫ 二次的著作物(11条及び2条1項11号)
(2)例示にない著作物

著作権法が、「この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。」という(10条1項)ように、上記著作物はあくまでも例示であって、例示されていないことを理由として著作物性が否定されることにはならない。また逆に、例示された著作物に形式的には該当する場合でも、前記四要件を満たしていなければ著作物性は否定される。例えば、ある文章が言語著作物に該当するように見えても、創作性要件を満たしていないというような場合である。つまり、ある対象物が「著作物」か否かを判断する場合には、上記例示のどの著作物に該当するかを検討することにそれほどの意味はなく、むしろ、前記著作物性の四要件を充足するか否かを検討すべきである。

(3)区別が必要な場合

ただ、例えば、映画の著作物のようにその著作物にだけ特別な権利(頒布権)が与えられているような場合は、その著作物が映画の著作物に該当するかどうかが重要な意味をもってくる。つまり、映画の著作物に該当すれば、その特別な権利が与えられ、該当しなければ与えられないということになるからである。したがって、こうした場合は、その著作物に該当するかどうかが厳密に判断されることになる*14
   
次項以下では、個々の著作物ごとにその著作物性に関し問題となる点を見ていくが、その順序は、解説の便宜や読者の理解のしやすさという観点から、著作権法の規定の順序とは異なった順序によっている。また、著作権法上の例示にはないものの、「動画・動映像」の著作物性についても解説する。

*14 映画の著作物以外で、こうした判断が必要になる場合として、美術の著作物又は写真の著作物か否か(「展示権」の付与があるか)、プログラム著作物か否か(法人著作に関する特例の適用があるか)がある。

2 言語著作物

(1)言語著作物の意義(10条1項1号)

小説、脚本、論文などが典型であるが、完結した1冊の書籍のようなものである必要はなく,1個のまとまりのある文章であればよい。

固定は必要でないので、事前に用意した原稿などに基づかず行われる講演、講義、演説、テーブルスピーチなども言語著作物である。

(2)著作物性の充足の有無

言語著作物に関しては、事実やデータの羅列が思想感情要件を満たさないほか、小説などのテーマ、抽象的ストーリーが表現要件を満たさない。加えて、言語著作物は、美術著作物などに比べて、創作性要件の充足の有無が問題になることが多い。言語は、小説などの表現手段として使われるだけではなく、日常の意思の伝達にも使われる表現手段であるため、創作性のない、日常的なありふれた表現について、ある特定人に利用を独占させることを避けなければならないからである。

そのため、i)文章が比較的短く,表現に創意工夫をする余地がないもの,ii)ただ単に事実を説明,紹介したものであって,他の表現が想定できないもの,iii)機能性を追求する文章などで一定の表現に収斂するもの、iv)具体的な表現が極めてありふれたもの,については創作性が否定される*15。したがって、絵画などとは異なり、幼児の書いた文章が創作性要件を満たすことは通常はないであろう。

以下、裁判例をみてみよう。

(ⅰ) ガイドブック複製事件*16

「JR中央線・総武線で東京から、特別快速二四分、‥‥(中略)‥‥地下鉄東西線(総武線に乗入れ)で一一分。」といった記述に著作物性はないと判示している。

(ⅱ) ラストメッセージin最終号事件*17

本事案は、雑誌の休廃刊の際の挨拶文の著作物性が争われたものであるが、a)からg)について創作性を否定し、h)及びi)について肯定している。

g)が否定され、i)が肯定されているのは、g)が挨拶文として定型的な表現になっているからであろう*18

判例がそれなりの創作性(個性)を要求していることがわかるであろう。

*15 この趣旨を明らかにした裁判例として、「ホテル情報誌事件第1審」東京地裁平成14年4月15日判決(判時1792号129頁、判タ1098号213頁)、「交通標語事件第1審」東京地裁平成13年5月30日判決(判時1792号129頁、判タ1098号213頁、)、「古文単語語呂合わせ事件第1審」東京地裁平成11年1月29日判決(判時1680号119頁、判タ994号249頁)などがある。

*16 東京地裁平成13年1月23日判決(判時1756号139頁)

*17 東京地裁平成7年12月18日(判時1567号134頁、判タ916号206号、知裁集27巻4号787頁)

*18 同趣旨の指摘として、田村概説16頁。

  • a) 本誌はこの号でおしまいです。永い間のご愛読に感謝します。
  • b) 「春秋生活学」は今号で休刊といたします。ご協力いただきました日本生活学会はじめ執筆者の方々、ご愛読いただきました読者の皆様に厚く御礼申し上げます。
  • c) 【お詫び】創刊以来、読者のみなさまのご声援をうけてまいりましたが本誌は今月号をもって休刊いたします。これまでのご愛読ありがとうございました。しばらくの充電期間をおき、まったく新しいかたちで再出発いたします。
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  • f) 編集後記・お知らせ
    昭和57年12月号創刊以来、3年3か月にわたって発行してまいりました小誌は、この2月号をもっていったん休刊し、近々、誌名・内容を刷新して再発行いたします。長い間ご愛読いただき、まことにありがとうございました。心から御礼申し上げますとともに、新雑誌へのご声援を宜しくお願い申し上げます。 新・健康誌は、新しい読者層の開拓と、その関わり合いを探るため、これまでの「壮健ライフ」のイメージ・内容を一新し、誌名も改題して、まったく新しい健康分野に挑戦いたします。どうぞご期待ください。
  • g) 「VEGETA・ベジタ」休刊のお知らせ
    小誌は、昭和63年4月に野菜と健康の情報誌「VEGETA・ベジタ」として創刊し、その理念に多くのかたがたより深いご賛意と共感をたまわり、厚いご支援の中で現在に至りました。
    しかしながら、このたび突然ではございますが、諸般の事情により本号(4月号)をもちまして休刊の止むなきに至りました。
    創刊以来5年の永きにわたりご愛読いただきました読者の皆様、またお力添えをいただきました諸先生に、ここにあらためまして心より御礼申しあげますとともに、不本意ながら休刊の運びとなりましたことを、深くお詫びいたします。
    いずれ、再スタートの機をかたく心に誓う所存でございますので、なにとぞ事情をご賢察のうえ、ご理解たまわりますよう伏してお願い申し上げます。
  • h) あたたかいご声援をありがとう
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    長い間のご愛読、ありがとうございました。
    ギアマガジン 1993年 4月号 学習研究社
  • i) 休刊のお知らせ
    東京地方の桜の開化が待たれる、昨年の3月23日、ニューシングルの人たちが心地よく住まうことをテーマにしたライフスタイルの提案誌として、「NESPA」が誕生しました。創刊号を読んでくださった方から、”本屋さんで見て気に入ったので買ってしまいました。がんばってください”という激励のハガキから、”内容をもう少し充実させてください”というお叱りの言葉まで、いろいろなご意見をお寄せくださいました。それ以来、毎号毎号、ハガキが増え続けました。皆様の思いを込めたハガキは、今でも大切に保管してあります。いつかまた、皆様とお逢いできる日のために、貴重な資料として私たちの財産にさせていただきます。1年と2か月間の短いおつきあいでしたが、「NESPA」ご愛読、本当にありがとうございました。
(ⅲ) ホテル情報誌事件*19

本件は、ホームページ上の掲示板に書き込まれたホテルや観光に関する情報が転載された事案であるが、下記のような書き込みの著作物性が争われた。

判例は、掲示板に書き込まれた記述を転載部分(下記書き込みの下線部分)ごとに区分した上で、その個別の記載a)乃至f)ごとに著作物性を判断し、a)とb)の記述について著作物性を肯定し、c)乃至f)の記述について否定している。

c)乃至f)の記述の著作物性が否定されていることからわかるように、判例は、ここでもそれなりの創作性を要求していることがわかる。

これに対して控訴審は、転載された部分ごとに分けてそれぞれ著作物性を判断する原審の判断方法を批判し、著作物性の判断は記述全体について行われるべきであるといい、上記記述を一個の記述全体としてみたときはいずれも記述者の個性が発揮されているので,著作物性を肯定できると判示している。

どんなに創作性豊かな記述でも、これを個別に細分化して独立した文章としてみるとき、細分化された文章の創作性は低いであろう。すなわち、創作性の有無は、記述を全体としてみるが、細分化して見るかによっても判断が変わりうることになる*20

*19 東京地裁平成14年4月15日判決(判時1792号129頁、判タ1098号213頁、)東京高裁平成14年10月29日判決(時の法令1678号48頁)

*20 記述を全体で見るべきか、細分化して見るべきかは、結局、記述の無断利用があった場合に、全体の無断利用か一部の無断利用かによって決せられることになる。こうした議論は、第9章侵害論で行う。

  • ありーさん、はじめまして。
    a) 昨年の4月に、パンコールラウトへ行く前泊として、KLリージェントに泊まりました。
    リージェントは道路の反対側がKLプラザ、ロット10や伊勢丹などのショッピングモールなのでお買い物には最高のロケーションです。雨が降っても地下道で道を渡れるので傘要らずですし。(マレーの人は小雨程度では傘を使わないみたいですけど)
    リージェント自体はスタンダードルームに泊まったせいもありますが、まあ、普通です(でもヒルトンよりいいです)。南国らしい花が咲いている外観や、ロビーの雰囲気が好きなので、次回KLに行くとしたら、またリージェントに泊まると思います。
    KLでお買い物中心の滞在だったら、このBukit Bintan通り周辺か、最近新しいホテルが増えているペトロナスタワー周辺が便利かな?
    KLにはまた行きそうなので、Lさんのコメントを私も楽しみに待っています。
  • キョウコさん
    こんにちは!初シンガ上陸なんですね。(バリもいいないいな~)
    b) 初めていらっしゃると言うことと、お一人と言うことで、交通の便の良い、観光地にもアクセスしやすいホテルが良いのではないかと思います。
    と、言うことで、地下鉄Cityhall駅上のウェスティンスタンフォードとウェスティンプラザ(同系列ですがプラザの方が上位グレード)、地下鉄Orchard駅からすぐのマリオットかグランドハイアットがよいのではないかな、と。
    Cityhall駅はOrchardから3つ目の駅で、ここからマリーナ地区やマーライオンなどに歩いて行けます。お隣はラッフルズホテル。Orchardはガイドブックでもお馴染みのショッピング天国です。またどちらもフードコートやレストランが充実しているので、一人のお食事も問題ないと思います。インド人街やチャイナタウンにも近いです(歩いていくには辛いかな・・・)。
    なーんて、私の考えはこんな感じです。
    Lさん、上記の訂正なり他のお勧めをぜひぜひよろしくお願いいたします。
    私事で言えば、来月には私の両親&叔母のシニアトリオが来星することになりまして、これはフォーシーズンを予約したようです。
    c) Orchard駅から10分ぐらい歩きますが、FSもいいですよ。
  • はじめまして、今までの旅行の計画が無くてここは「いつか行く日のために」ROM専門でしたが、とうとうその「いつか」のチャンスがやってきました!
    d) 夏に最長9日間予定でアジアリゾート行きを計画しています。
    第一希望はウブドです。

    しかし、同行人がウブドに9日間なんて絶対飽きるから嫌だといいます。
    やっぱり1週間以上ウブドに滞在するのは長すぎるのでしょうか?
    私は絵を探したり、ケチャやイベント物を見たり、ホテルでのんびりしたり、ウブド1週間は充実できると思うんだけどな。
    e) バリの海は堪能したので、次は(私にとっては)未開の地ウブドでずっと同じホテルに滞在したいのです。
    ちなみに第二希望はボロブドゥール遺跡のアマンジオなのですが、こっちも9日間は飽きるだろうと言われています。これは私もちょっとそう思います。
    ウブドの9日間(まあ1週間でよし)って
    f) 皆さんはどう思われますか?
(ⅳ) 転職情報サイト事件*21

本件は、ホームページ上に掲載された転職情報の紹介に関する記述の創作性が問題になった事案である。創作性が否定されるべき事案のようにも思われるが、判決は、これを肯定している。

それぞれの文章を見ると、単に事実を説明、紹介するだけで、文章も比較的短く、他の表現上の選択の幅が少ないことからすると、これらの表現が単独で創作性を充足するということはできないであろう。したがって、本判決が創作性を認めた理由は(そのような判示はないが)、個々の文章に創作性はないとしても、ホテル情報誌事件控訴審判決が判示するように、記述全体(その構成も含めて)について検討し、創作性を肯定したものと理解すべきであろう。

*21 東京地裁平成15年10月22日判決(判時1850号123頁、判タ)

  • ①【表題部】

    その案件は、エンジニアにとってスキルの向上につながるか・・
    キャリアアップに役立つ業務知識やノウハウが得られるか・・・
    開発環境や条件は希望を満たしているか・・・
    ひとつのプロジェクトが完了したとき、関わったエンジニア自身があらゆる面から深い満足を得られるような仕事であること。
    それが、シャンテリーが案件を選択するときの基準です。

    ②【仕事内容】

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    ⑦【教育制度】

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ⑧【あくまでエンジニア第一主義】

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ⑨【2006年までに100人体制を目指します】

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(3)著作物性が問題となる言語著作物

以下では、著作物性が問題となるものを、対象物ごとに見る。

① データ、事実を羅列したもの

例えば、五十音順の電話帳などは、思想・感情要件を満たさない。

② 題号

題号は、単語、又は簡潔な文章であるので、これのみでは、思想・感情要件や創作性要件を満たさない*22
但し、同一性保持権の対象とされている(20条1項、第3章第7節、3参照)。

*22 社団法人日本文藝家協会は、既存作品の題名と同一題名を用いることに関し、ⅰ)既存作品の題名がありふれたものではなく、独創性が高く、ⅱ)その既存作品の評価が定まっているものであり、ⅲ)同一題名の作品が既存作品の名声に便乗するものであったりするような場合は、その使用を避けることが望ましいという見解を発表している(出版契約ハンドブック103頁参照)。

③ 新聞記事の見出し

新聞記事の見出しは、事実の紹介、説明を簡潔な文章で行うものであって、表現の選択の幅が少なく、通常はありふれた表現となるであろうから、創作性の要件を満たさない。
「ヨミウリ・オンライン事件」*23 では、「いじめ苦?都内のマンションで中3男子が飛び降り自殺」、「喫煙死、1時間に560人」、「マナー知らず大学教授、マナー本海賊版作り販売」、「ホームレスがアベックと口論?銃撃で重傷」などといった見出しにつき、いずれもありふれた表現であって創作性は認められないし、これらは「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(10条2項)に該当すると判示している。

*23 東京地裁平成16年3月24日判決(最高裁ホームページ)

④ 詩、俳句、短歌

著作物であることに異論はない。

⑤ キャッチフレーズ、標語、スローガン

これらは,単なる言葉の羅列、又は組み合わせであって、創作性を欠くという見解もある*24 が、裁判例はかならずしもそうではない。

例えば、「交通標語事件控訴審」*25 では、「ボク安心ママの膝よりチャイルドシート」という交通標語について、「ボク」、「ママ」及び「チャイルドシート」という三つの語句は、チャイルドシートに関する交通標語において、使用される頻度が極めて高い語句であり、また、「・・・・よりチャイルドシート」とすることは、ごくありふれた手法に属するというものの、「ボク安心」との表現部分と「ママの膝よりチャイルドシート」との表現部分とを組み合わせた、全体としてのまとまりをもった五・七・五調の表現には創作性があるといって、その範囲で創作性を認めている。

また、「古文単語語呂合わせ事件」*26 においても、「アッ!ヤシの実だ。いやシイたけだ。」などの古文単語の語呂合わせに創作性を認めている。

俳句などに創作性があるといいながら、標語、スローガンについては画一的に創作性を否定するというのは合理的でないであろう。ただ、これらは、ごくごく短い文章における単語の組み合わせであるから、これらに著作物性を認めると、上の例では、「ボク」、「ママ」、「膝」「チャイルドシート」、「安心」などという単語にある特定人の独占的利用権が及ぶことになりかねない。したがって、著作物性の判断は慎重になされるべきである。また、侵害の成否(保護範囲内にあるかどうか)に関しては、厳格な判断が必要となる(第9章参照)。

*23 東京地裁平成16年3月24日判決(最高裁ホームページ)

*24 加戸講義20乃至21頁

*25 東京高裁平成13年10月30日判決(判時1773号127頁、判タ1092号281頁)

*26 東京地裁平成11年1月29日判決(判時1567号126頁、判タ994号249頁)

⑥ 商用文など

品物の発注,代金の督促などの商用文は、思想・感情要件を満たさず、また表現は画一的なものであって、創作性要件を満たさない場合が多いであろう。

⑦ 契約書

思想・感情要件及び創作性要件ともに満たしていないと考えるべきである。一定の取り決め、合意内容を正確に、かつ二義を入れないように記述するとき、その表現は一定表現に収斂するからである*27

*27 船荷証券の著作物性を否定するものとして、「船荷証券事件」東京地裁昭和40年8月31日判決(下民集16巻8号1377頁)また、契約書の著作物性を否定するものとして、「土地売買契約書事件」東京地裁昭和62年5月14日判決(判時1273号76頁)。

⑧ 手紙

時候の挨拶,転居通知,出欠の問い合わせなどの型どおりの文章は思想・感情要件も創作要件も満たさない。それ以外は、著作物性が肯定されることが多いであろう*28

*28 友人に書き送った手紙の著作物性を肯定するものとして、「三島由紀夫事件」東京地裁平成11年10月18日判決(判時1697号114頁、判タ1017号255頁)、東京高裁平成12年5月23日判決(判時1725号165頁、判タ1063号262頁)。

⑨ 新聞記事、機関誌

事実の伝達を目的とする新聞記事でも、その具体的な表現においては記者の個性が出るので、思想・感情要件、創作性要件ともに一般に肯定される*29

尚、著作権法は、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は著作物性がないと規定しているが(10条2項)、これは、ありきたりの表現による事実の伝達に関するものについて、著作物性がないことを注意的に規定したものと理解すべきである。

*29 機関誌の著作物性を肯定するものとして、「機関誌事件」福岡地裁大牟田支部昭和59年9月28日(無体集16巻3号705頁)

⑩ 商品取扱説明書

「商品取扱説明書事件」*30 大阪地裁平成10年1月20日判決(コピライト446号42頁)

料理の手順はアイデアであるし、このアイデアである手順をそのまま箇条書的に簡潔に記載したものであるから、表現に創作性がないということになる。

*30 機関誌の著作物性を肯定するものとして、「機関誌事件」福岡地裁大牟田支部昭和59年9月28日(無体集16巻3号705頁)

⑪ 論文

論文に著作物性があることについては異論はないが、記述されている内容は、客観的事実の解説であったり、原理原則の説明であったり、法解釈の解説であったりするから、表現といえる部分は小説などに比較して相対的に少なくなる。

すなわち、客観的事実、法則、原理原則、法律そのものの記述部分は思想・感情要件を満たさないし、又命題の解明過程、論理の展開は表現要件を満たさない。これらを記述する具体的表現のみが著作物性を備えることになる。

⑫ キャラクター

「キャラクター」とは,小説、漫画、アニメなどに登場する人物や動物などについて、その名称や,姿態,容貌、性格,役柄その他の特徴の総体として、読者や視聴者に一定のイメージとして感得されるものをいう。例えば、シャーロックホームズやポパイなどといった主人公から想起されるイメージのことである。

こうした「キャラクター」は、小説や漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではないので、その著作物性は否定される*31

その結果、シャーロックホームズのキャラクターを使って小説を書いても、少なくとも著作権法上の侵害の問題は生じないことになる*32

*31 キャラクターの著作物性を否定するものとして、「ポパイネクタイ事件」最高裁平成9年7月17日判決(判時1200号1頁、民集51巻6号2714頁)

*32 商標法による保護や不正競争防止法による保護がある場合はある。

3 美術著作物

(1)美術著作物の意義(10条1項4号)

典型的には絵画,彫刻、版画などであり、漫画,劇画,イラスト、挿絵なども美術著作物である。また、コンピュータで作成された絵画的なもの(コンピュータ・グラフィック)も美術著作物である。

固定は要件でないので、床においただけの舞台装置、いまだ保存がされていないRAM上のコンピュータ・グラフィックも著作物性は肯定される。

(2)著作物性の充足の有無

美術的な表現物を作成すること自体、一般に、思想・感情要件を満たす。

また、言語著作物と異なり、美術が日常的なコミュニケーションの手段として使われることはないので、個性的表現の有無が問題になることは少なく、通常、創作性要件も満たされる。

「画風」*33、「作風」*34、「タッチ」、「イメージ」などは、表現ではない。

*33 画風の著作物性を否定するものとして、「イラスト画風事件」東京地裁平成11年6月14日判決(判時 判タ)、東京高裁平成12年2月23日判決(判時 判タ)。

*34 作風、イメージの著作物性を否定するものとして、「あんこう・行灯事件」(京都地裁平成7年10月19日判決、判時1559号132頁)

(3)著作物性が問題となる美術著作物
① 書体

文字自体は、言語表現の手段であって、思想・感情要件を満たさない。ゴチック体、明朝体等の活字書体(タイプフェイス)やプリンタなどから出力される文字書体(フォント)については、実用的機能の観点から見た美しさがあるという程度では、創作性要件を満たさないと解するのが一般である。

これは、こうした書体に著作物性を認めると、印刷物をコピーするときに、執筆者に加え、書体の作成者の許諾が必要になるので、文字の利用の独占につながるおそれがあるからである。

「印刷書体事件」*35 では、印刷書体に著作物性があるというためには、従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならないと判示している。

*35 最高裁平成12年9月7日(判時1730号123頁、判タ1046号101頁、)

② 書

書体と異なり、書の著作物性は肯定される。書は、字体、筆遣い、筆勢、墨の濃淡やにじみ等の様々な要素により構成され、多様な表現が可能であるからである*36

*36 書の著作物性を肯定するものとして、「趣・華事件」大阪地裁平成11年9月21日判決(判時1732号137頁)、「雪月花一審事件」東京地裁平成11年10月27日判決(判時1701号157頁、判タ1018号254頁)、「雪月花控訴審事件」東京高裁平成14年2月18日判決(判時1786号136頁)。但し、雪月花事件では、著作物性は争点となっていないので、傍論である。

③ ロゴ、標章

ロゴ*37 の著作物性は否定される。

標章はケースバイケースであろう。例えば、「オリンピック標章事件*38 では、いわゆる五輪マークについて、それが比較的簡単な図案標章であり、このマークがオリンピックの象徴とされてきたのも、その美術性によるものではないとして、著作物性を否定している。

ただ、言語の著作物においてキャッチフレーズにも著作物性が肯定される場合があるように、単に比較的簡単な図案模様であることだけを理由にして著作物性を否定することはできないであろう。要は、創作性の有無である。

尚、ロゴや標章は、商標法や不正競争防止法により保護されることもある。

*37 ロゴの著作物性を否定するものとして、「ポパイネクタイ事件」東京地裁平成2年2月29日判決(無体集22巻1号34頁)、「ロゴ事件」東京地裁平成12年9月28日判決(判タ1044号212頁)

*38 東京地裁昭和39年9月25日決定(判時384号6頁、判タ165号181頁、下民集15巻9号2293頁)

④ キャラクター

キャラクターの著作物性は否定されることは、前述した。

ただ、漫画の場合、漫画の具体的表現である図柄は、美術著作物として著作物性が肯定されるのは当然である。

⑤ 応用美術の問題

実用に供する物品に応用し、量産されることを目的とする応用美術の著作物性が問題とされる。著作権法は、文芸等要件を著作物性の要件としているし(2条1項1号、本章第1節5参照)、さらに美術の著作物には「美術工芸品」(応用美術の中で極少量作成されるもの)を含む(2条2項)と規定するので、応用美術の著作権法による保護は予定されていないという考え方がある。すなわち、応用美術は産業用デザインであって、意匠法による保護が受けられるだけであるという考え方である。

しかし、現行法制定過程において提出された著作権制度審議会の答申*39 は、産業的な性質を有するものに関する著作権法上の取扱について以下の提言を行っている(同答申説明書第1の4の6)。

  • ⅰ) 美術工芸品を保護することを明らかにする。
  • ⅱ) 図案その他量産品のひな型又は実用品の模様として用いられることを目的とするものについては、著作権法においては特段の措置は講ぜず、原則として意匠法等工業所有権制度による保護に委ねるものとする。ただし、それが純粋美術としての性質を有するものであるときは、美術の著作物として取り扱われるものとする。
  • ⅲ) ポスター等として作成され、またはポスター等に利用された絵画、写真等については、著作物あるいは著作物の複製として取り扱うこととする。

そして、現行法は、この提言にしたがって立法化されているので*40、応用美術の著作物性に関する解釈はこの提言にしたがうのが適切であろう。ただ、この提言(特にⅱにおいて、純粋美術としての性質を有するものであるときは、著作物として取り扱われるとするところ)は、結局のところ、応用美術であっても著作物性が肯定されるものは、著作物として著作権法の保護の対象となりうることを明らかにするものだといえる。すなわち、産業的な性質のものでも、著作物性の要件である「思想・感情要件」、「創作性要件」及び「表現要件」を満たせば、著作物として保護されることを明らかにしたものである(本章第1節5参照)。
  
裁判例の多くも、応用美術であることを理由にその保護を否定することはなく、問題となった対象物ごとに、著作物性を判断していると評価できる。著作物性の肯定事例として、「博多人形事件」*41、「仏壇彫刻事件」*42、「アメリカTシャツ事件」*43、否定事例として、「佐賀錦袋帯事件」*44、「木目化粧紙事件」*45 がある。

*40 作花詳解130頁

*41 長崎地裁佐世保支部昭和48年2月7日決定(無体集5巻1号18頁)

*42 神戸地裁姫路支部昭和54年7月9日判決(無体集11巻2号371頁)

*43 東京地裁昭和56年4月20日判決(判時1007号91頁、無体集13巻1号432頁)

*44 京都地裁平成元年6月15日判決(判時1327号123頁、判タ715号233頁)

*45 東京高裁平成3年12月17日判決(判時1418号120頁、知裁集23巻3号808頁)

肯定事例

否定事例

また、「商業広告事件」*46 では、広告デザイン(第9章第1節5、(2)③の左図参照)の著作物性を肯定している。

*46 大阪地裁昭和60年3月29日判決(判時1149号147頁、判タ566号278頁、無体集17巻1号132頁)

4 図形著作物

(1)図形著作物の意義(10条1項6号)

地図または学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形などである。地図が典型的な著作物として例示されている。また、図面とは設計図,図表とはグラフ、分析表,図解など,模型とは地球儀、人体模型などがこれに該当すると説明される。

ただ、こうした著作物は、文化的、芸術的なものというよりも、むしろ産業的性格のものである。そして、著作権法の規定(10条1項6号)をよく見ると、「図面、図表及び模型その他の図形の著作物」については「学術的な性質を有する」という修飾語がついていることに注意すべきである。学術とは、「学問と芸術」である(広辞苑、第5版)。そのニュアンスは、「産業的」なものは著作物性の要件を満たしにくいという趣旨であろう。

(2)著作物性の充足性

図形著作物の場合は、その素材としてデータや数値が対象になることが多く、その意味で、思想・感情要件の充足性の検討が必要になる。

また、産業的性格を有する著作物に関しては、その具体的表現方法において個性が発揮できる場合は、それほど多くない。例えば、製図法に従って製図する場合、具体的表現方法の自由度が少ないために、誰が表現してもそうなるという場合も多い。また、一定の実用性・機能性を追求していくと一定の表現に収斂する場合もあるし、あるアイデアを表現するのに一つの表現方法しかないという場合もある。その意味で、創作性要件の充足の有無も問題になる。

尚、特許の対象となるような技術思想自体は、表現要件を満たさない。

(3)著作物性が問題となる図形著作物
① 地図

地図は、基本的に、地球上に客観的,物理的に存在しているものを配列し,一定の定められた記号によって記載したものである。客観的、物理的に存在するものは、事実もしくはデータであって、仮に測量などに大変な労力、時間、費用がかかったとしても、それ自体は保護の対象とはならない。しかしながら、地図の作成は、3次元の客体を2次元の図面に表現するものであり、そのために縮小、抽象化という過程を経る必要があるから、そこでは作図上の工夫が必要である。この作図方法によってそれぞれ個性のある地図ができるのであり、ここに創作性を見いだすことができる。

ただ、それでもなお、地図の上記性格から、著作物性(創作性)の程度に関しては一定の限界があることも否定できない。裁判例においても、著作物性を一般的に肯定しつつ、創作性に関する限界を指摘している*47

その意味で、住宅地図の著作物性は相当限定された範囲のものになる。「富山住宅地図事件」*48 は、住宅地図は,特定市町村の街路や家屋を主たる掲載対象として,線引き,枠取りというような略図的手法を用いて,街路に沿って各種建築物,家屋の位置関係を表示し,居住者名,地番等を記入したものであるが,その性格上掲載対象物の取捨選択は自から定まっているから,この点に創作性の認められる余地は極めて少ないといえるし、また、一般に実用性、機能性が重視される反面として、そこに用いられる略図的技法が限定されてくるのであって,住宅地図の著作物性は,地図一般に比し,制限されたものであると判示する。

他方で、一般図ではなく主題図や編集地図といわれるものは、表現方法は多様である。美術的な手法を取り入れた観光案内図などは、むしろ美術の著作物と評価できる場合もあろう*49

尚、地理情報システム(GIS)などにおける地図の構成要素は、データとその表示画面である。データの出力の際に図形的な形状としての地図に表されるが、そこでの形状はむしろ機能性を追求して決定されるものであり、また使用目的に応じて複数の形状が用意されている。著作物性の認められる範囲は小さくなる。そして他方の構成要素であるデータの著作物性は否定される。GISの場合は、むしろ、データベースとして保護される場合が多くなるであろう(本章第3節15頁参照)。

*47 「史跡ガイドブック事件」東京地裁平成13年1月23日判決(判時1756号139頁)では、「一般に、地図は、地形や土地の利用状況等を所定の記号等を用いて客観的に表現するものであって、個性的表現余地が少なく、文学、音楽、造形美術上の著作に比して創作性を認め得る余地が少ないのが通例である。それでも、・・・」と判示する。

*48 富山地裁昭和53年9月22日判決(判タ375号144頁、無体集10巻2号454頁)

*49 「パリ市街地地図事件」大阪地裁昭和51年4月27日判決(判タ344号301頁、無体集8巻1号130頁)では、パリ市街地の鳥瞰図について美術的香り豊かなものとして著作物性を肯定している。

② 設計図

繰り返しになるが、設計図などに表示された技術的思想はアイデアであって、著作権法による保護の対象ではないのであって、保護の対象はあくまでも、その技術的思想を記述するときの作図上の工夫である。そうすると、これらの著作物は一般に、客観的事実、データもしくは技術的思想などのアイデアを一定の定められた記号及び製図法などの記述方式を用いて記述するという性格上、作図上の工夫において個性を発揮できる余地は少ない。むしろ、個性を発揮してもらっては困るのである。したがって、作図方法に個性を発揮する余地があるものは、通常、学術的な性質のものということになる。

例えば、「スモーキングスタンド事件」*50 では、スモーキングスタンド、ダストボックスなどの設計図に関し、「工業製品の設計図は、基本的な訓練を受けた者であれば、誰でも理解できる共通のルールに従って表現されているのが通常であり、その表現方法そのものに、独創性を見いだす余地がなく、本件設計図もそのような通常の設計図であり、その表現方法に独創性、創作性は認められない。」といい、著作物性を否定している。

ただ、過去の裁判例では、この点の理解を欠いていると思われるものが散見される。「工作機械設計図事件」*51 においては、工作機械の基本構造の寸法が機械工学上の技術思想を表現した面を有し、その表現内容(寸法及びその寸法に基づき図示された形状)に創作性が認められるといって設計図の著作物性を認めているが、判旨は疑問である。また、「冷蔵倉庫事件」*52 では、設計図が、防熱、防湿等の点で特別の建築工学上の技術を必要とする冷蔵倉庫に関するものであるので、全体として個性のある設計図となっているとして著作物性を肯定している。しかしながら、その判示するところは、表現方法に個性があるからではなく、技術思想に個性があることを理由として、設計図の著作物性を肯定するものであって、この判旨も疑問である。

*50 東京地裁平成9年4月25日判決(判時1605号136頁、判タ944号265頁)

*51 大阪地裁平成4年4月30日判決(判時1436号104頁、知裁集24巻1号292頁)玉井克哉・判批・百選(2版)55頁参照。

*52 大阪地判昭和54年2月23日(判タ387号145頁)

③ 万年カレンダー(図表)

「万年カレンダー事件」*53 で問題となったカレンダーは、以下のようなものである。

これは、ある月における曜日の開始パターンは7つしかないので、横軸に1月から12月までの月を、縦軸に年号の座標軸を配置し、各年号の各月の曜日の開始パターンによりこれを7つの色で色分けし、この図表とは別に7つの開始パターンごとに、曜日を配列したカレンダーを置いて、これと対照が可能なようにしたものである。

これなども、そのアイデアにおける創作性を否定することはできないが、このアイデアを実際、具体的な表現に表そうとする場合、だれが表現しても同様なものになるといわざるを得ず、著作物性は否定されることになる。判例も、同旨である*54

*53 大阪地裁昭和59年1月26日判決(判タ536号447頁、無体集16巻1号13頁)

*54 簿記仕分盤事件控訴審」大阪高裁昭和38年8月29日(下民集14巻3号509頁)は、同じ趣旨で、簿記仕分盤の著作物性を否定している。尚、「当落予想表事件控訴審」東京高裁昭和62年2月19日(無体集19巻1号30頁)は、政治評論家が立候補予定者名簿に○△▲の符号を付して作成した当落予想表の著作物性を肯定しているが、疑問である。

④ 学習用図表

「出る順宅建事件」*55 では、第9章xx記載の左側の図表の著作物性が争点となった。これらは、学術的性質を有する図表である。

1審判決は、表①及び②については、法文の内容を法令記載の順番で配列したものであるなどとして、誰が作成しても表にまとめようとする限り同様の表現になるとして、創作性を否定している。③、④、⑥、⑦及び⑧については、条文の順序にとらわれず、独自の観点から分類、配列しており、また法文の内容を簡潔に要約し、一定の主題について複雑な法令の規定内容の骨子をわかりやすく整理要約しているなどとして創作性を肯定している。⑤についても、規定の要点を説明するためにそれなりに工夫創作された略図であり創作性があるという。

控訴審では、⑤乃至⑧に関する著作物性が争点となっているが、⑤については規定内容を視覚的に理解しやすいように具体例を持ち出して略図化したものであり、かつ規定とは関係ない窓や柵などが描かれていて、規定内容を説明するためにそれなりの工夫があるとして創作性を肯定している。⑥及び⑧については、受験のために必要な事項を選択し、かつ条文に明示されていない項目をも含めた項目を分類、整理して、各項目の内容につき簡潔な文言で記載し、一覧表にまとめたものであるなどとして、全体として創作性が認められるとする。ここでの判示内容に特徴的なのは、いずれも、条文に明示されていない項目も含めて分類、整理していると指摘している。これに対して、⑦は、条文に従い、手続きの流れに沿って整理して、配列したものにすぎないとして創作性を否定している。

*55 東京地裁平成6年7月25日判決(判時、判タ)、東京高裁平成7年5月16日(判時、判タ)

⑤ 紙面構成(レイアウト)

紙面構成(レイアウト)には、一般に著作物性はないと考えられる。

紙面構成(レイアウト)とは、頁を開いたときに認識できる余白部分と文字や写真・図表の位置、文章が何段組みで、一行何文字、一段何行で印刷するかなどといった割付のことをいう。そして、こうした紙面構成(レイアウト)は、一定の約束ごとや取り扱い方法であって、アイデアである*56
但し、具体的な素材である文字、写真、絵画、図形などを一定のスペースに配列したものが編集著作物として著作物性を認められることはありうるであろう。(第2章第3節、14参照)

*56 「知恵蔵事件第一審」東京地裁平成10年5月29日判決(判時1673号130頁、判タ1000号312頁、知裁集30巻2号296頁)、同事件控訴審である東京高裁平成11年10月28日判決(判時1701号146頁、判タ1021号252頁)は、紙面構成はアイデアであって、これを特定の者に独占させることは合理的でないとする。

⑥ インターフェイス

ビジネスソフトウエアなどのインターフェイス(画面表示)については著作物性は肯定されるであろうか。画面表示のうちデザイン的な要素の部分は、美術の著作物として著作物性を判断すれば足りる。問題は、ビジネスソフトウェアにおける実用的・機能的要素を考慮した結果構成された画面表示に著作物性を肯定することができるかである。すなわち、ビジネスソフトウェアの画面表示は、ソフトウェアの目的(たとえば、建築工事費用の積算とかスケジュール管理)が決まれば、表示項目などは機械的に定まるものであるし、またソフトウェア化される以前から一定の書式が存在するものもある。さらに、目的となる作業を行うにあたっての効率性や操作の容易性、使い勝手などを追求すれば、一定の表示画面に収斂する傾向もある。そうすると、インターフェイスに個性を認めうる場合があるとしても、非常に限定された範囲ということになろう。

「積算くん事件」*57 は、建築費用算出のための表示画面(xx頁左側)に関し、こうした書式的なものでも、どのような項目をどのように表現して書式に盛り込み、どう表現するかという点において個性が表れることもあるといい、また学習容易性、操作容易性の観点からできるだけ利用者にわかりやすい一般的・普遍的表現になる傾向があるとしても、ただちに創作性ないということにはならないとする。

「PIMソフト」事件*58 では、PIMソフト(Personal Information Managementとよばれるスケジュール管理ソフト、xx頁左側)の著作物性が争われたが、本件ソフトの背景画面は自由に変更ができるので、本件ではまさに必要項目の選択とその配置及び画面構成の著作物性が争点になったものである。本判決は、こうしたソフトの基本的な機能は,個人のスケジュール管理,アドレス帳及び日記の3つに集約されるが、これらには,それぞれその機能に由来する必然的な制約が存在するし,また,以前から、紙製の手帳,アドレス帳,日記帳といったものが存在していたのであるから,このような紙製の手帳等に用いられている書式や構成は,PMI作成者の個性にもとづくものではないし、PIMソフトにおいて知られているありふれた書式や構成というものも存在するので,表示画面における書式の項目の選択やその並べ方,各表示画面の選択・配列などの点において,作成者の個性が創作的に表現される余地はあるものの,その範囲は,限定されると判示している。

また、「グループウエアソフト事件」*59 では、グループウェアソフトの画面表示(xx頁左側)も、ⅰ)美術的要素や学術的要素を備える場合には、美術の著作物や図形の著作物に該当することがあり、ⅱ)画面遷移(ある画面から他の画面への転換)が、特定の思想に基づいて秩序づけられている場合において、牽連関係の対象となる表示画面の選択と当該表示画面の選択と組み合わせ(配列)自体も、著作物として著作権法による保護の対象となりうるとしている。

*57 大阪地裁平成12年3月30日判決(別冊ジュリスト157号62頁)

*58 東京地裁平成15年1月28日判決(判時1828号121頁)

*59 東京地裁平成13年6月13日決定(判時1761号131頁)、東京地裁平成14年9月5日判決(判時1811号127頁、判タ1121号229頁)。

5 建築著作物

(1)建築著作物の意義(10条1項5号)

建物その他の土地の工作物である。
庭園、橋、塔なども建築著作物である*60

(2) 著作物性の充足の有無

建築物の著作物性を検討するにあたっても,創作性という要件を満たす必要がある。そうすると,建物の実用性、機能性を実現するために必要な形状などをある特定人の独占下におくことはできないので、本号の趣旨は、通常のどこにでもあるような住宅とかビルを著作物とするものではなく、博物館,美術館,寺院または宮殿などのようにある程度の芸術性のある建築物を著作物とする趣旨である。ただ、一般住宅などでも,それが美的なもしくは芸術的な外観を含んだものと認められる場合には,建築著作物として保護されてもよい。

「建物設計図事件」*61 において、建築著作物とは「いわゆる建築芸術と見られるものでなければならない。」とし、その判断においては「使い勝手のよさ等の実用性、機能性などではなく、もっぱらその文化的精神性の表現としての建物の外観を中心に検討すべきである」と判示している。

「グッドデザイン賞事件」*62 では、グッドデザイン賞を受けた下記建築物について、「建築の著作物として保護の対象となるのは、建築に通常加味される程度の美的創作性を超えて、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような芸術性ないし美術性を備えた場合、すなわち、いわゆる建築芸術といい得るような創作性を備えた場合であると解するのが相当である。」、「モデルハウスのように一般人向けに多数の同種の設計を行う場合は、一般住宅が備える程度の美的な創作性を感得させることはあっても、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得させ、美術性や芸術性を認識させることは、一般的に、極めてまれなことといわざるを得ない。」と判示する。そして、本件建築物がグッドデザイン賞を受賞している点については、単に外見の美しさだけでなく工業製品としての機能なども考慮して選ばれるもので、受賞したからといって、その建物に芸術性、美術性が備わるものではないとしている。

*60 「ノグチルーム移築事件」東京地裁平成15年6月11日決定(判時1840号106頁)では、傍論であるが、建物全体、庭園及び庭園の構成要素としての彫刻を一体として「建築著作物」であると判示している。

*61 福島地裁平成3年4月9日決定(知的裁集23巻1号228頁)

*62 大阪地裁平成15年10月30日判決(判タ1146号267頁)

6 音楽著作物

(1)音楽著作物の意義(10条1項2号)

音によって表現されている著作物である。

まず、旋律(メロディー)、和音(ハーモニー)、リズムを要素とする「楽曲」が音楽著作物である。これに加え、楽曲と同時に利用される「歌詞」も、音楽著作物に含まれる。歌詞は、これを音として見ない場合は、言語の著作物ということになり、二面性があることになる。

「音楽著作物」は,通常楽譜に固定されているが,固定は要件でないので、楽譜のない即興演奏であっても音楽著作物である。

尚、旋律とか、歌詞を保護するという趣旨は,例えば,演奏家の演奏や、歌手の歌唱を保護するということではない。音楽著作物として保護の対象となるのは,作詞・作曲家が創作した楽曲そのもの、歌詞そのものである。

(2)著作物性の充足の有無

作詞・作曲自体が、思想・感情要件を満たす。

創作性要件に関しては、美術著作物と同様に、個性的表現の有無が問題になることは少なく、通常創作性要件も満たされる。クラッシック音楽のようなものに限らず、例えば、児童の歌唱用の、簡素な、短い楽曲でも創作性は肯定される。

尚、作曲家のもつ作風などは、表現ではない。

7 舞踊著作物

(1)舞踊著作物の意義(10条1項3号)

身振り、ステップなどを要素とする振り付けのことである。舞踊、バレエ、パントマイムなどがその典型である。

著作権法が保護するのは,ここでも、「振付け」そのもので,実演をしている人の踊りではない。つまり、振り付け師といわれる人々の創作した振り付けそのものが保護の対象となるのである。

スポーツは、創作された振り付けによる表現ではないので、著作物ではない。ただし、フィギアスケートや体操などで、技を競い合う趣旨ではなく、観賞のための演技として行われる場合は、舞踊著作物となりうる。

オペラ、ミュージカルなどは、舞踊と音楽が結合した著作物である。

(2)著作物性の充足の有無

歌手の歌唱にあわせた動きなどで、ありきたりのものは創作性が否定されよう。

8 写真著作物

(1)写真著作物の意義(10条1項8号)

カメラで撮影された写真(静止映像)である。

(2)著作物性の充足性

写真著作物に関しては、創作性要件が問題になる。

写真の撮影にあたっては、被写体,構図,アングル,光量,シャッター速度の選択と決定,その後の,現像・焼き付けなどの処理において創作的な工夫が行われるので,写真に著作物性を認めることができると説明される*63 。ただ、これは、写真著作物の創作性要件の説明として正確ではない。上のような要素に関して創作的な工夫の施されている写真が著作物性の要件を満たすことは当然であるが、最低限の要件としては、被写体にレンズを向けて構図を決めてシャッターを切れば足りる。その結果できあがった写真であれば創作性があると理解すべきである(田村概説95頁参照)。写真は被写体にレンズを向けてシャッターを切ればできあがるし、できあがった写真の芸術性の有無などを問うべきでないとすれば、被写体にレンズを向けてシャッターを切るところに創作性を認めることになるのである*64 。そうすると、世の中に存在するほとんどすべての写真は、創作性の要件を充足していることになる。

そうすると、写真で創作性が否定されるものは、構図、アングル、光量、シャッター速度などがすべて機械的に定まっている運転免許証用の証明写真のようなものである。また、写真を複製の手段として使う場合も、忠実な複製ということを目的とする限り、そこで要求される手法は、機械的に定まり、誰もが同一のことを要求されるのであるから、創作性はないということになる。例えば,図面を写真に撮って複製物を作成するような場合である。「版画写真事件」*65 では、原作品を紹介する写真で、撮影対象が平面的な作品である場合には、正面から撮影する以外に撮影位置の選択の余地はなく、かつ技術的な配慮も原画をできるだけ忠実に再現するためになされるものであるから著作物性がないという。

*63 この趣旨を判示するものとして、肖像写真について「ローブ・式帽肖像写真事件」東京地裁平成15年2月26日(判時1826号117頁)、プロマイドについて「タレント肖像写真事件」東京地裁昭和62年7月10日判決(判時1248号120頁)、商品カタログ用写真について「商品カタログ用写真事件」大阪地裁平成7年3月28日判決(知裁集27巻1号210頁)

*64 「イルカ写真事件」東京地裁平成11年3月26日判決(判時1694号142頁、判タ1014号259頁)では、自らの撮影意図に応じて構図を決め、シャッターチャンスを捉えて撮影を行ったことをもって創作性を認めている。

*65 東京地裁平成10年11月30日判決(判時1679号153頁、判タ994号258頁、知裁集30巻4号956頁)

(3)写真著作物の範囲-デジタルカメラによる写真

デジタルカメラで撮影した写真が、「写真著作物」かどうかについては問題がある。なぜなら、著作権法が,「写真の著作物」を,「写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含む」(2条4項)と規定しているからである。ここでいう、「写真の製作方法」とは、フィルムの上にレンズを通してできた像を焼き付け、これを現像液などで化学処理することによってネガにし、これからプリントを作成する方法である。したがって青写真などは、「写真著作物」ということになるが、デジタルカメラの場合は、レンズを通してできた像を光電変換装置を使って光の強さに基づいた電気信号に変換し、変換された電気信号をデジタルデータにして保存するというものである。したがって、デジタルカメラで撮影された写真は、写真の著作物ではないという考え方もありうる。映像が0と1の情報で媒体に蓄積されており、これを再生するという意味ではコンピュータ・グラフィックなどの「美術著作物」と同じだから、むしろ「美術著作物」の類型に属するのかもしれない。

ただ、両者の違いが美術著作物は原作品が発行・未発行を問わず「展示権」が付与される一方で、写真著作物は未発行の原作品についてだけ「展示権」が付与される点である。そうすると、美術著作物でもコンピュータ・グラフィックのように原作品に特別な価値のないものは、未発行のものについてだけ展示権が与えられるべきだとすると(第3章第5節5参照)、デジタルカメラで撮影された写真が「美術著作物」であるか、「写真著作物」であるかを厳密に検討する必要はないということになる。

9 動画・動映像著作物

(1)動画・動映像著作物の意義

美術著作物や写真著作物が静止画もしくは静止映像であるのに対して、動画・動映像著作物は動画又は動映像による表現されている著作物である。

こうした著作物は、著作権法に例示されていないが、近年の典型的な著作物として取り上げておくべきであろう。この著作物には、二種類の系統がある。

① 動画著作物

コンピュータ・グラフィックなどが、静止画としてではなく動画として表現されている場合である。この場合、例えばひまわりの花が静止画として表現されているものを美術著作物とするならば、このひまわりが風に揺れる動画として表現されている場合も著作物として保護されるべきことに異論はないであろう。これは、「美術著作物」として分類することもできるが、ここでは「動画著作物」と呼ぶことにする。

② 動映像著作物

音を伴い又は伴わないで、連続する映像により表現されているものである。写真が著作物であって一般に創作性が認められるならば、ビデオカメラで撮影された動映像も、その著作物性を否定することはできない。親がなにげにとった子供を被写体とする写真が著作物であるなら、同じくビデオカメラで撮った子供の映像も著作物であろう。むしろ、写真よりもカメラワーク、つなぎ(どこで撮影を区切るか)などという点においてより創作性を発揮する余地がある。これも、近年における典型的な著作物であることを指摘しておかなければならない*66 。これを、「動映像の著作物」と呼ぶことにする*67

*66 著作権法を形式的に見る限り、「録音物」が著作隣接権の対象とされているのに対して、「録画物」は著作隣接権の対象ともされていないし、「著作物」ともされていない。

*67 過去においては動映像を作成して鑑賞するためには、光学式のフィルムに記録して、映写設備のある映画館のような施設で再生する方法しかなかった。つまり、映画である。その後、VTRの出現とホームビデオの普及で、動映像というものが作成、鑑賞されるようになった。

(2)著作物性の充足の有無

動画像については美術著作物、動映像については写真著作物と同様に考えてよいであろう。

したがって、動映像に関し、防犯カメラによる街頭の撮影などのように個性が発揮されない場合を除き、著作物性は肯定されることになる。

(3)動映像著作物の範囲
 ① 録画物という用語との関連

著作権法は、動映像との関連では、映画という概念の外に、録画物という概念を使用している(たとえば、95条の2、3項)*68 。そして、動映像を著作物として理解する場合、録画物とは、全く個性のない録画物と著作物性をそなえる動映像とを含む概念と理解されるべきであろう。すなわち、著作物性がない録画物と著作物性のある録画物(動映像)があることになる。

*68 尚、録画の定義(2条1項14号)で使用されている「影像」という用語は誤りであろう。広辞苑によれば、「影像」とは、絵画や彫刻にあらわした神仏又は人のすがたというのであるから、「映像」の語が正しいであろう。

② 映画との区別

録画物を素材に使って、一定の編集を加えたものもが「映画」の著作物であると理解すべきである(第2章第3節10、(2)参照)。実演のビデオクリップなども、実演をビデオカメラで撮影しただけのものは動映像であるが、編集行為が加えられたものは「映画」と考えるべきである。

10 映画著作物

(1)映画著作物の意義(10条1項7号)

映画によって表現されている著作物である。これは、動映像著作物の中の、特別な著作物であると理解されるべきである。すなわち、動映像著作物という範疇の中に、映画著作物があることになる。

そして、映画著作物については、著作者の範囲(16条)、著作権の帰属(29条)及び著作権の保護期間(54条)に関する特則が置かれているほか、その利用に関する権利として、他の著作物一般には認められていない頒布権(26条)*69 を著作者が専有する旨の規定が置かれている。また、実演家が映画に録音、録画されることを許諾したときは、以後、映画に関して実演家の権利は全く働かないことになっている(第6章第6、1参照)。

ある創作物が、例示された著作物のどれに該当するかを検討することは基本的には意味のないことであるが、「映画著作物」に関しては上のような特別な規定の適用があることになるので、その外延を確定することがきわめて重要となる。特に、頒布権は、複製物の流通を支配することができるという極めて強力な権利であるので、映画著作物であるかどうかによって権利の内容に大きな差異が生じる。

そこで、映画著作物の範囲に関する著作権法の規定をみると、映画の著作物を「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ物に固定されている著作物を含む」としている(2条3項)。したがって、映画の著作物たる要件は次の3つである。

  • i) 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているもの
  • ii) 物に固定されているもの
  • iii) 著作物であるもの

そこで、この要件をそれぞれ検討すると、まずi)において、伝統的な劇場用映画においては、多数のフィルムのコマを映写幕に連続して投影して、見る者の目の残像現象利用して動きのある映像として見せるという視覚的効果、またはこの映像に音声を同期させて視聴覚的効果を生じさせるという方法で表現されているが、本条項によればこれと類似する方法でよいのであるから、ブラウン管や液晶画面を使って同じ効果を生じさせるものでよいことになる。結局、今日存在する動きのある映像は、全てこの要件を満たすことになる(前述の動画もこの要件を満たす)。

次にii)は、物に固定されていることが要件である。これは映画の著作物にのみ要求されている特殊な要件であり、放送されてすぐ消えてゆくテレビ放送の生番組を映画から排除することを目的としたものである(加戸講義68頁)。

iii)については、項を改めて検討する。

*69 尚、上映権も映画の著作物に特有な権利であったが、平成11年著作権法改正で著作物一般に関する権利とされた。

(2)著作物性の充足の有無

ⅲ)の要件は、たんなる機械的な録画物を排除する趣旨であるという説明がなされている。これに従うと、動画・動映像著作物は、すべて「映画著作物」ということになる*70

しかしながら、動画を含めた動く映像をすべて映画という概念に含めるのは通常我々が使う用語例からあまりにもかけはなれているし、動画及び単なる動映像に、上記特別規定を適用すべき理由を見いだしがたい*71。また、著作権法は、「映画著作物」と「録画物」を区別しているが(91条2項、92条2項などを参照)が、この区別を意味のないものとする*72。したがって、映画著作物と動画・動映像著作物は別個の概念とすべきであろう。

そうすると、動画の範疇においては、ストーリーをもった動画の連続であり、それに一定の編集行為が加えられたものが映画著作物(アニメ映画等)であり、創作性の根拠が単に画像の美的要素だけにあるものは美術著作物と理解されるべきであろう。また、動映像の範疇においては、録画物に対して一定の編集行為を加えられたものが映画著作物であり、創作性の根拠がもっぱら撮影技術だけ(ただし、素材の選択・組成を含む。)である場合は、写真著作物の延長線にあるものとして動映像著作物と理解すべきであろう。したがって、本条項において、敢えて「著作物であること」を映画著作物の成立要件としたのは、映画としての著作物性を要求したものであり、動画・動映像を排除する趣旨であると理解すべきである*73

したがって、ここで動画・動映像著作物として分類されたものに関しては、映画著作物に関する特別な規定の適用はないと解すべきである*74

*70 著作権審議会第9小委員会は、平成5年11月付コンピュータ創作物関係報告書(著作権法百年史・資料編、391頁)において、「コンピュータ・グラフィックが画像が動く形式のものである場合には、現行法上、映画の著作物に該当する。」という報告を行い、ここから、動画=映画著作物という理解が一般化したものと思われる。また、加戸講義68乃至69頁も、著作物性のない録画物を除いて、すべてが映画であるとする。

*71 著作者及び著作権の帰属に関する特別規定はそもそも適用の前提となる実態がないし、頒布権や特別長期の保護期間が与えられるべき理由もないであろう。

*72 これは実演家にとっては、受入れがたい考え方である(第6章第6参照)。

*73 映画著作物に関するここでの議論に関しては、「吉田大輔」「映画の著作物概念に関する一考察」「知的財産権の現代的課題」741頁以下に詳細な分析と解説がある。また、著作権の帰属に関し、「三沢市勢映画事件」東京高裁平成5年9月9日判決(判時1477号27頁)は、NGフィルム選別、シナリオに従った粗編集、細編集、音づけ等の映画製作過程を経ないまま未編集状態で現在に及んでいる残余フィルムはいまだ映画著作物ではないが、フィルムの映像はそれ自体で創作性、すなわち著作物性を備えていると判示している。

*74 ここで著者が説く趣旨は、上記のような概念整理をした後は、映画著作物に関する特別規定の適用の有無は演繹的に決せられるというものではない。ただ、動画・動映像著作物に関して映画著作物に関する特別規定の適用の適否を各規定ごとに検討しても(例外的な場合を除いて、例えば、著作者や著作権者の帰属に関しては、こうした規定が適用される前提としての実態がないし、また、保護期間に関しては特別長期の期間を与える理由もない。)、その適用はないことの合理性を確認できると思う。

(3)映画著作物に関する特別規定の適用の可否

映画著作物の関する特別規定に関しては、上記概念整理のもとで映画著作物とされた場合において、無条件にその適用を認めてよいかという問題がある。これは、特にゲームソフトの著作権者に頒布権や上映権があるのかという問題において争われたきた。

ゲームソフトが映画著作物の範疇にあるか否かについては従来から議論のあったところであるが、上記概念のもとにおいても、ゲームソフトは、「ストーリーをもった動画の連続であり、一定の編集行為が加えられたもの」という要件を満たすものも多く、このようなゲームソフトは映画著作物ということになる。

しかしながら、「中古ゲームソフト事件」*75 では、仮にゲームソフトが映画著作物であるとしても、頒布権はないとしている。結局、ある著作物にある特別な権利が付与される場合において、問題の著作物が当該著作物の範疇に入れば演繹的に権利が付与されることになると考えるのは妥当でなく、当該著作物に特別に権利が与えられた立法趣旨を勘案しながら、問題の著作物の性格とその利用方法、著作者と利用者の利害関係などを総合的に検討して権利付与の適否を決定すべきである*76。そうすると、ある著作物が映画著作物かどうかを検討する実益はここでも意味がなくなったということができる。

ゲームソフトに頒布権が付与されるか否かは、頒布権(第3章第3節、5)のところで検討することにする。

*75 最高裁平成14年4月25日判決

*76 前掲吉田753乃至754頁も同旨

11 その他映像関連の議論のある著作物

(1)演劇著作物

映画との関係において、演劇(台本に基づき、俳優が舞台の上で台詞・動作により演技をするもの)は著作物か。

著作権法の考え方は、まずこうした演技は、台本などの言語著作物や舞踏著作物の上演としている(22条参照)。そして、舞台での実演全体は、著作物ではなく、実演の集合体と捉えている。すなわち、実演家の演技を実演といい、この実演に対しては、実演家に著作隣接権を与えるという構成になっているのである(第6章第2節第1、2参照)。また、実演を指揮し、又は演出する者(映画監督の役割を行う者)も「実演家」とされているので(2条1項4号)、著作隣接権者ということになる。したがって、演劇は著作物ではない。

(2)生番組

映画の著作物に関しては固定を要件とすることによって、テレビ放送の生番組などのように直ちに消失するようなものを映画著作物から排除していることは、前述の通りである。

しかし、これが映画の著作物ではないとしても、生番組の著作物性を否定することにはならないと思われる。生番組の撮影の際のカメラワークその他の撮影上の工夫は、映像著作物におけるそれと変わりはない。しかも、複数のカメラを瞬時に切り替えながら放送を行っているような場合には、編集行為があると言えなくもない。結局、固定がない以上映画著作物ということはできないが、著作物(映像著作物と同様なもの)というには充分であろう。

(3)録音物

録音物については、これも著作物としては扱わず、著作隣接権の対象としている(第6章第3節第1、2参照)。

12 プログラム著作物

(1)プログラム著作物の意義(10条1項9号)

コンピュータ・プログラムである。

「プログラム」とは,電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものである(2条1項10の2号)。要するに、コンピュータに一定の仕事をさせるためには、行わせる仕事の内容や手順についてコンピュータに具体的に指示を与えなければならないが、この指令の組み合わせがプログラムである。

「一の結果を得ることができるように」とは、何らかの意味をもった一つの仕事をすることができるということである。したがって、これがプログラムの最小単位であって、一行一行のステートメントはプログラムではない。一般論として、ルーチン、サブルーチンはこの意味でプログラムであり、モジュールは、ケースバイケースの判断となろう。要は一つの仕事をすることができる固まりかどうかの判断となる。

(2)著作物性の充足の有無

プログラム著作物としての保護の対象は、プログラミングの段階での表現であって、それは通常プログラム言語で記述されているものである。したがって、プログラミングの前段階に作成される設計書などは、図形の著作物になることはあってもプログラム著作物ではない。

ところで、プログラミングは、その表現上の自由度もある程度認められ、個性が反映される創作的活動であるということができる。別個に開発されたある程度の規模のプログラムが、プログラミング全体を通じてよく似ていることはまずありえないであろう。しかしながら、こうした産業的性質の著作物の場合は、一定の機能を実現するための効率性を追求する結果、その表現は、例えばモジュール単位で見ると一定のものに収斂していく性格もあり、その範囲では自由度が低い(誰が表現しても同一になる)という性格も併せ持つものである。また、あるアイデアを表現するためには、必然的にその表現にならざるをえない場合もある。このような場合は、創作性が否定されることになる。

(3)著作物性に関する著作権法の規定

著作権法は,「プログラム言語」、「規約」、「解法」には著作権法の保護が及ばないとしている(10条3項)。

これは、「言語」、「ルール」、「アイデア」は著作物性が否定されるという著作権法上の一般原則を注意的に確認したものである。ただ、わざわざ規定をおいているのはそれなりの理由がある。  

① プログラム言語

「プログラム言語」とは,プログラムを表現する手段としての文字その他の記号およびその体系をいう(10条3項1号)。プログラム言語は,表現の手段で表現ではないので,保護の対象とならない。

プログラム言語には、低水準言語として、マシン語、アセンブリ言語、高水準言語(人間の言葉に近い構文で記述できるプログラミング言語の総称)として、BASIC、C言語、C++、Java、Pascal、FORTRAN、COBOLなどがある。

こうした言語は、すでに存在するプログラム言語の著作物性が否定されるとともに、今後新たなプログラム言語を作成したとしても著作物性が否定される。プログラム言語の著作物性を明文で否定する趣旨は、言語の開発には莫大な労力、費用、時間を必要とし、開発された言語を使用してプログラミングをすることがライセンス契約の対象となったりすることがあるが、そのことによってプログラム言語に著作物性が肯定されるものではないことを注意的に規定したものと理解すべきである。

これと同じ趣旨で、WWWのページを記載するHTML(Hyper Text Markuo Language)は、これをプログラム言語というかどうかは別にして、著作物性は否定される。

② 規約

著作権法は、「規約」の著作物性を否定するとともに、その用語の意味を「特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。」と規定している(10条3項2号)。しかし、この規定の意味は明確でない。プログラム言語における文法のことをいってるようにも思えるが、言語における文法は、プログラム言語の定義にある「体系」に含まれるであろう。
 
したがって、ここでいう「規約」とは、プログラム言語以外の、現実にプログラムを機能させるための約束ごとをいっているのであり、典型的には、「インターフェイス」や「プロトコル」のことであると理解されている(加戸講義127頁以下、中山43頁以下)。

「インターフェイス」とは,プログラム間、又はハードウエア、OS、アプリケーションとの間でデータが正しくやりとりされるために遵守しなければならない約束事、ルールのことである。モジュール間のインターフェイスも規約である。この規約が自由に利用できることによって、互換性を実現できる。

また,「プロトコル」とは,通信回線経由でデータが正しくやりとりされるための通信規約をいう。たとえば、データやメッセージの様式(宛名の場所など)、送受の手順(パケット通信方式など)などである。たとえば、httpは、ハイパー・テキスト・トランスファ・プロトコルという通信規約である。この規約を自由に利用することによって、電子計算機間の接続性が実現できる。

これらはいずれも約束事、ルールであって、表現要件を満たさないので、著作物性を否定されることは自明である。

ところが、ある特定企業の採用するこうしたインターフェイスやプロトコルがディファクトスタンダードとなり、しかもその規約の内容を明らかにしないという営業戦略が取られることはよくあることである。これによって製品の事実上の独占をはかることができる(ただし、独占禁止法上の問題が生じることはある。)。そこで、規約に対するこうした事実上の支配もしくは独占がはかられることがあったとしても、著作権法においては、こうした規約に著作物性を肯定し、その独占を許すものでないことを注意的に規定したものと理解すべきである*77

*77 こうした営業戦略の内容、互換性、接続性との関係について、文67、p129以下に詳しい。

③ 解法

「解法」とは、プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合わせの方法をいう(10条3項3号)。すなわち、コンピュータに一定の処理をさせる(一の結果を得る)ための、処理の手順、論理的な筋道のことである。「ある問題を解くための手順」という意味で「アルゴリズム」と呼ばれることもある。

これらはいずれも、アイデアであって表現要件を満たさないので著作物性は否定される。

「解法」が著作物でないことをわざわざ規定した趣旨は、言語の著作物との対比において重要である。すなわち、小説などの言語著作物では、構成、具体的ストーリー、筋なども表現であるとして、アイデアの領域に近いものも保護している(第9章第1節4参照)。これに対して、プログラム著作物においては、一の結果を得るための論理的な筋道は、言語著作物と異なり、保護の対象外であることを明確にしている(第9章第1節11参照)。

そうすると、プログラムの保護とは、近年のシステム開発工程を前提にすれば、プログラミングという労働集約的な部分の保護を行うものであって、いわゆるSEの業務分野であるプログラム設計のレベルでの創作行為を保護するものではないことになる。

そのため、著作権法によるプログラムの保護は、産業界のニーズに応えていないという主張がある。すなわち、プログラムの経済的価値は、アルゴリズムに存するという議論である。しかしながら、少なくとも著作権法においては、解法(アルゴリズム)を保護しないことを明確にしているのだから、解法の保護を受けようとする場合は特許によるしかなく、それがソフトウエア特許として注目をあびたところである。

13 編集著作物

(1)編集著作物の意義(12条1項)

百科事典,文学全集,判例集、英単語集、時刻表などのように、その全体の構成において,その素材の選択または配列が創作性を有するものをいう(12条1項)。

(2)著作物性の充足の有無

編集著作物においては、選択または配列の対象となる素材が,著作物である必要はない。著作物ではない単なる事実やデータのようなものでもよい。ここで保護されるのは,個々の素材ではなく,「素材の選択または配列」における創作性だからである。選択又は配列のどちらか一方に創作性があれば足りる。

編集著作物は、単なる事実やデータが素材であっても、その選択と配列に創作性があれば著作物として保護されるのであるから、事実やデータの集合体に対する保護機能を補完的に提供することになる。すなわち、その選択と配列に創作性があるという条件付きであるが、事実やデータの集合体を保護するものである。そのため、裁判例では、著作物性のない事実やデータの集合体を「編集著作物」であるとして、保護を求める主張が多くなされることになる。

また、表現要件との関係では、編集著作物といえども保護されるのは表現であるから、選択または配列の指針や基準といった編集方針はアイデアであって表現ではないという説明がされる*78。その結果、素材が異なれば編集方針は全く同一でも権利は働かないことになるが、この考え方は正当でないであろう。侵害論(第9章第1節12)で詳論する。

以下においては、裁判例における著作物性の肯定事例と否定事例を見ておく。

尚、編集著作物の素材が著作物である場合には、その個々の素材が独自に著作物として保護されることは当然である(12条2項)。

*78 例えば、加戸講義131頁

(3)裁判例
① 肯定事例
i) タウンページデータベース事件*79

職業別電話帳は、検索の利便性の観点から個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって全職業を網羅するように編集されたものであるから素材の配列に創作性があるとする。
尚、五〇音順の電話帳には、選択及び配列ともに創作性はないので、著作物性は否定される(本章第1節、2参照)。

*79 東京地裁平成12年3月17日判決(判時1714号128頁、判タ1027号268頁)

ii) 時事英語用語辞典事件*80

3,000前後の標準的なアメリカ語の単語、熟語、慣用句を使用頻度に従って選択し、これを見出し語としてアルファベット順に配列し、各見出し語に続けて、見出し語を用いた慣用句、文例(これは辞典の作成者が創作したものではなく、選択したもの。)を付したアメリカ語用語集について、素材の選択と配列に創作性があるとする。

*80 東京地裁昭和59年5月14日判決「第一審」(判時1116号123頁、判タ525号323頁、無体集16巻2号315頁)、東京高裁昭和60年11月14日判決「控訴審」(無体集17巻3号544頁)

iii) 用字苑事件*81

漢字を正確に表記するための便宜を供することを目的とした字典において、現代生活における実用性という観点から一定の方針、基準を設け、多くの国語辞典類を参照して、これに合致する語句を抽出して、収録語句を選定しているので、その選定において創作性があるとしている。

*81 名古屋地裁昭和62年3月18日判決(判時1256号90頁)ただ、この判決は、漢字の選択における創作性のみならず、レイアウト、すなわち、1頁を数段組とし、各行に原則として1語句のみを掲げ、各漢字を大きく表示するとした点において編集著作物における創作性を認めているが、これについては異論がありうる(本章第3節4③参照)。

iv) ウオールストリート・ジャーナル事件*82

英字新聞の紙面は、編集担当者が、そのもとに集められた多数の記事等の中から、新聞の一定の編集方針に従い、またニュース性を考慮して、情報として提供すべきものを取捨選択し、その上で各記事等の重要度や性格・内容等を分析し、分類して紙面に配列*83 しているので、紙面全体が編集著作物であるとする。

*82 東京地裁平成5年8月30日判決(知裁集25巻2号380頁)、東京高裁平成6年10月27日判決(判時1524号118頁、ジュリスト1111号234頁、知裁集26巻3号1151頁)

*83 ここでいう配列とは掲載順序のことであり、レイアウトとしての紙面構成ではない。

v) 城の事件*84

江戸時代以降、主として明治時代から現代までの多様なジャンルの文芸作品の中から、日本の実在の城、架空の城を舞台とするもの217個を作者名とともに選択し、これを舞台となった城ごとに分類、配列し、これを城の所在地によって概ね北から南の順に配列し、我国における城と文芸作品との関係を一見して分かりやすくまとめた一覧表について、著作物性を肯定している。

*84 東京地裁平成6年4月25日判決(判時1509号130頁、判タ873号254頁)

vi) 四谷大塚試験問題集事件*85

進学塾で使われる学習指導用に作成された試験問題について、試験問題は、私立中学等の入学試験に合格することを目指す児童の学力の向上のために一定の指針(基本的な問題を配し、難易度に差をつけ、難易度の低いものから高いものに配列し、過去の入試問題との重複を避け、次年度の入試傾向を予測した問題を取り入れるなど)のもとに作成されているのだから、各教科1回分の問題は、編集著作物としての著作物性を認めることができるとする。

*85 東京地裁平成8年9月27日判決(判時1645号134頁)尚、東京高裁平成10年2月12日判決(判時1645号129頁)も同旨であるが、一連の試験問題ではなく、個々の試験問題のそれぞれについて、独立して編集著作物の創作性が認められるとしている点は疑問がなくもない。

vii) 商品カタログ事件*86

商品カタログについて、商品情報の選択、配列、また掲載写真の配列に創作性を認めることができるとする。

*86 大阪地裁平成7年3月28日判決(知裁集27巻1号210頁)

viii) 会社案内事件*87

会社案内について、イメージ写真の選択と配置、空白部分ないしは白地部分の配置などに創作性を認めている。

*87 東京高裁平成7年1月31日判決(判時1525号150頁)

ix) 浮世絵絵画集事件*88

浮世絵画集の出版にあたり、浮世絵の画像を当該分野における学識・造詣を発揮して選別し、歴史的順序やデザイン上の観点からの考慮に従って配列したものについて、創作性を肯定している。

*88 東京地裁平成13年9月20日判決(判タ1097号282頁)

x) 誕生花事件*89

1年366日の1日ごとに1つずつ誕生花と称して対応させた花の写真及びその花言葉の組み合わせたものについて、単なる花の写真の集合を超えて、誕生花の選択とこれに対応した写真及び花言葉の組み合わせに創作性があるとする。

*89 大阪地裁平成16年2月12日判決(最高裁ホームページ)

xi) レッスン情報誌事件*90

趣味のお稽古ごとから仕事に役立つ講座まで、様々な分野の各種学校の情報及びその講座内容を編集・収録した情報誌について、各種学校の情報及びその講座内容の情報を読者の検索の便宜に資するよう独自の分類配列方針に従って配列したものであり、この配列は五十音順などの既存の基準に基づいたものではなく、創作性が認められるとする。

*90 東京地裁平成16年3月30日判決(最高裁ホームページ)

② 否定事例
i) 松本清張小説リスト事件*91

小説から映画化された映画作品について、題名、封切年、製作会社名、監督名、脚本作成者名、主な出演者名を、また、小説からテレビドラマ化された作品について、題名、放送年月日、番組名、放送局名、制作会社名、監督名、脚本作成者名、主な出演者名、視聴率を、それぞれ項目として選択し、その順序に従って配列したリストについて、事実情報資料についての一般的な整理、編集の方法であるとして、創作性を否定している。

*91 東京地裁平成11年2月25日判決(判時1677号130頁、判タ998号252頁

ii) 見本帳事件*92

原告の取扱商品である色画用紙の見本帳は、純粋に色彩及び色名を素材として編集したものではなく、原告の取扱商品の見本にすぎないとして著作物性を否定している。

*92 東京地裁平成12年3月23日判決(判時1717号140頁、判タ1035号246頁)

iii) レッスン情報誌事件*93

前掲情報誌において、読者が一目瞭然に各種学校・講座内容の特徴を把握し、比較できるようにすることを目的として、情報にその特色を付記することとして、そのために、あらかじめ読者に関心の高い情報の類型をアイコンとして選択して分類した下記一覧表に関して、情報誌に掲載されている記事中に用いられているアイコンについて、まとめてその意味を説明するいわば凡例であり、アイコンの選択又は配列において創作性を認めることはできないとする。

*93 前掲判決(最高裁ホームページ)

14 データベースの著作物

(1)データベース著作物の意義

著作権法は,データベースを、「論文,数値,図形その他の情報の集合物であって,それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」(2条1項、10の3号)と規定するが、このうち、「その情報の選択または体系的な構成によって創作性を有するもの」をデータベース著作物という(12条の2、1項)。

データベースは,前項で説明した編集著作物の一種であるが,編集著作物の創作性が「素材の選択または配列」にあるのに対し、データベースの創作性は「情報の選択または体系的な構成」にある。違うのは、前者が「配列」を問題にしているのに対し、後者は「体系的構成」を問題にしている。これは、データベースの場合は情報がハードディスクなどの上に記録されており、これを検索機能を使って探し出す道具であるから、編集著作物でいう「配列」には意味がない。意味があるのは、検索が効率的に行えるようデータベースの体系的構成をどう構築するかというところであって、創作性を見いだしうるのである。

尚、データベースが保護される場合でも、そこに記録された事実やデータを保護するものでないことは、編集著作物の場合と同様である。しかし、条件付ではあるが、事実やデータの集合体を保護することによって、結果的に事実やデータの保護機能を営むことも、編集著作物と同様である。

(2)著作物性の充足の有無

データベース設計のポイントは、データがいかに効率的に記録されるか(重複を避けて容量を食わない。)、いかに高速でかつ要求に適う検索できるかというところにある。今日の通常の商業用データベースであるリレーショナル型でいえば、表(table)の中の行(row)、列(colum)間の関連づけ、及び各表間の関連づけ、構造をどう構築するかに創作性が発揮される。すなわち、データベースによっては、数万、数十万、数百万の行がありうるし、また列や表についても、相当数のものとなるが、これをどう関連づけて、効率的な管理と高速かつ要求に適う検索ができるかを達成する過程において創作性が発揮されるのである。この部分の作業を体系化といっている。尚、「正規化」といわれるデータ整理のための手順(効率的なデータベースを設計するための確立された手順)自体はアイデアである。

また、階層型というデータベースもある(検索サービスのヤフーなどのデータベース)。この場合、創作性は分類方法ということになり、編集著作物にいう配列とそれほど違わない。

これに対して、今日、体系化されることなく記録されたデータに対して、全文の単語検索を行うものなどもあるが、これは創作性がないデータベースということになる。

尚、データベースの場合は、情報項目が決定されたら、その項目に該当する情報を入力する作業が行われるだけであるから、情報の選択に創作性が見いだしうる例はそれほど多くないであろう。

(3)データベース著作物の範囲

検索を行うプログラムや検索されたデータ等のディスプレイを行うプログラム、検索された数値のグラフ化を行うプログラムなどは、データベースとして保護されるのではなく、プログラムの著作物として保護される。
  
また、データベースを構成するものが著作物である場合には、その個々の構成物が独自に著作物として保護されることは当然である。(12条の2、1項)。

(4)裁判例

以下において、裁判例を見ておく。

① 自動車データベース事件*94

自動車に関する情報を収録したデータベースに関し、収録する自動車の選択が通常の選択であり、さらに収録する情報項目も,自動車検査証に記載する必要のある項目と自動車の車種であり、また、体系的構成においても、自動車を、型式指定番号、類別区分番号の古い順に機械的に並べ、データ項目も機械的に並べたにすぎないものについて、情報の選択にも体系的な構成にも創作性があるとは認められないとする*95

*94 東京地裁平成13年5月25日中間判決「自動車データベース事件」(判時1774号132頁、判タ1081号267頁)、東京地裁平成14年3月28日終局判決「自動車データベース事件」(判時1793号133頁、判タ1104号209頁)

*95 但し、この判決は不法行為の成立を認める。先行データベースのデータを複製して作成した後行データベースを、その者の販売地域と競合する地域において販売する行為は、公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為を構成するとした。

② タウンページ・データベース事件*96

検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって全職業を網羅するように構成され、これに類するものがあるとは認められない職業分類体系によって電話番号情報を分類したデータベースについて、全体として、体系的な構成によって創作性を有するデータベースの著作物であるとした。

階層型データベースの著作物性を認めたものである。

*96 東京地裁平成12年3月17日判決(判時1714号128頁、判タ1027号268頁)

③ コアネット事件*97

新築分譲マンションに関する情報について、下記テーブル相関図のような構造で、PROJECTテーブル,詳細テーブル等の7個のエントリーテーブルと法規制コードテーブル等の12個のマスターテーブルを有し,エントリーテーブル内には合計311のフィールド項目を,マスターテーブル内には78のフィールド項目を配し,各フィールド項目は,新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げ,期分けID等によって各テーブルを有機的に関連付けて,必要とする情報を効率的に検索することができるようにしている「リレーショナル・データベース」について,著作物性を肯定した。

*97 東京地裁平成14年2月21日判決(NBL733号6頁)

(5)創作性のないデータベースの保護

データベースに創作性がない場合でも、そこに収録されたデータの収集、選択、収録作業において、多大な費用、労力、時間が費やされる場合は非常に多い。このようなデータベースに対して全く保護がないというのでは、データベース事業に参入するインセンティブを欠くことになる。

そこで、創作性のないデータベースにも、その法的保護が必要であろう。しかしながら、こうしたデータベースを保護することによって、データや事実の利用を特定人に独占させるような結果を生むことは避けなければならない。そのため、法制度として具体的にどのような制度が構築されるべきかが課題となるが、いずれにしても創作性のないものを保護することになるのであるから著作権法の制度と相容れない面がある。したがって、著作権法の枠外で新規立法により保護されることになると思われる*98

*98 例えば、ECディレクティブにおいては、データベースの保護につき、著作権法を補充する不正競業的な「不公正な抽出を防止する権利」(保護期間10年)を創設し、商業目的で当該データベースからの、その内容の全体または実質的な部分を、未許諾で抽出しまたは再利用することを禁止できる権利をデータベース作成者に与えることにしている。

15 二次的著作物

(1)二次的著作物の意義

著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物である(2条1項11号)。すなわち、ある著作物があるとき(これを「原著作物」という。)、これに新たな創作性を付与したものを二次的著作物という。

ところで、原著作物に何らかの手を加える場合、新たに付加される部分の創作性の程度によって以後の著作物を、以下のように分類することができる。

  • ① 原著作物に単なる増減、修正などを加えたもので、新たな創作性の付与がないもの
  • ② 原著作物に新たな創作性が付与されたもの
  • ③ 原著作物からヒント、アイデア等の示唆を得たにすぎないものであって、原著作物とは独立、別個の著作物であるもの
    ①は「原著作物」そのものであり、②を「二次的著作物」といい、③を「新著作物」ということができる。
(2)二次的著作物の例

「二次的著作物」とは、原著作物を①翻訳、②編曲、③変形、④脚色、映画化、その他翻案することによって創作した著作物であり、(2条1項11号)、いまだ新著作物とは評価できない著作物である。

翻訳とは、原著作物の言語体系と異なる他の国の国語で表現することをいう。編曲とは、楽曲をアレンジして原曲に新たな創作性を付加することをいう。変形とは、写真を絵画にするように表現形式を変更する場合や、また絵画を彫刻にし、彫刻を絵画にするというように次元を異にする表現形式にする場合をいう。

脚色、映画化などの翻案に関しては、まず、脚色とは、小説をもとに脚本を書くようなことをいう。次に、映画化とは、脚本その他の著作物をもとに映画の著作物を制作することをいう。その他の翻案としては、上記以外の方法で、原著作物から二次的著作物を作成するすべての創作行為をいう。

(3)二次的著作物と原著作物及び新著作物の関係

二次的著作物という概念を設ける趣旨は、二次的著作物に対しては、これに新たな創作性を付与した者が二次的著作物の著作者であって著作者としての権利が与えられる(11条前段部分参照)*99 ことと、二次的著作物の利用は必ず原著作物の利用を伴うので、ここでは必ず原著作者の権利が働くことになり(11条後段部分参照)、その利用については原著作物の著作者の許諾も必要になることを明らかにすることにある(28条参照)。結局、原著作物の著作者の許諾がない限り、二次的著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用ができないことになる。

これに対して、原著作物に何らかの手を加えても、新たな創作性の付与がない限り、そこで作成されたものは原著作物の範囲のものでしかなく、作成者に何らかの権利が付与されることはない。また、新著作物の場合は、原著作物とは全く独立、別個の著作物であるから、これに対して原著作物の著作者の権利が働くことはなく、新著作物の創作者が唯一の著作者である。

原著作物と二次的著作物の区別は、第三者がその対象物を利用するに際して原著作物の著作者だけの許諾を得れば足りるのか、それともこれに加え二次的著作物の著作者の許諾も必要となるかどうかを決定するために必要である。そして区別の基準は、新たに創作性が付加されたかどうかにかかることになる。これに対して、二次的著作物と新著作物の区別は、その対象物の作成者又は第三者がそれを利用するに際して、原著作物の著作者の許諾が必要となるかどうかを決定するために必要である。そして、その基準は、原著作物とは別個独立の著作物と評価できるかどうかである。

*99 二次的著作物を作成する権限は原著作物の著作者にあるが(27条参照)、原著作物の著作者に許諾を得ないでこれを作成した場合でも、その二次的著作物は保護の対象となる(2条1項11号は、適法要件を課していない。)。

16 著作権法の保護を受けない著作物

法令、通達、判決などは、著作物であっても,著作権法上の保護の対象とならない(13条)。すなわち、以下に列挙されたものは、国民に対しその内容が周知徹底されるべきものという性格上、その翻訳物や編集物を含めて、国民に自由に利用されるべきであって、著作権法上の保護の対象から外している。尚、法令や通達などに著作物性があるのかという問題があるが、仮にあっても保護されないという点において、本条は意味があることになろう。

(1)憲法その他の法令

私人が作った法令私案などを含まない。

(2)国または地方公共団体の機関が発する告示・訓令・通達・その他これに類するもの

本号には、官公庁名義の刊行物を含まない。ただ、こうした刊行物は、「転載禁止」の表示が無い限り、説明の材料として新聞、雑誌等に転載することができる(32条2項参照)。

(3)裁判所の判決・決定・命令・審判および行政庁の裁決および決定で裁判に準ずる手続きにより行われるもの
(4)以上に掲げるものの翻訳物および編集物で,国または地方公共団体の機関が作成するもの

私人が作成する翻訳物、編集物を含まない。