
SNS誹謗中傷対策関連
NEWS&コラム
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情報流通プラットフォーム対処法(通称「情プラ法」)が施行される
誹謗中傷等のインターネット上の違法、有害情報に対処するため、大規模プラットフォーム事業者に対し、①対応の迅速化と、②運用状況の透明化に係る措置を義務付けるという内容の法律が、旧プロバイダ責任制限法を改正して、新たに情報流通プラットフォーム対処法(通称「情プラ法」)という名称に改められて、施行されました。
この法改正は、インターネット上での誹謗中傷や権利侵害情報に対する対応を強化するために行われました。この法律やガイドライン等によると、大規模プラットフォーム事業者が誹謗中傷や権利侵害の申し出を受けた場合、7日以内に対応を判断し、その結果を通知することを義務づけています。また、事業者は、削除基準を策定・公表し、年に一度その運用状況を公表することが求められることになりました。
権利侵害情報の削除の枠組みは、基本的には従来の法律の内容と同じですが、例えば、SNSのトップページから削除申出の受付のページにいきつくまでに一苦労し、削除申出をしたとしても全く回答がないとか、削除がしないとの回答に係る判断基準が分からないといったことが常態化しているところですが、こうした問題点が解消され、違法、有害情報につき、より迅速な対応が諮られることが期待されます。
法改正の内容の詳細は、下記の2024年5月17日欄の「情報流通プラットフォーム対処法」が可決、公布を参照してください。
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「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律における大規模特定電気通信役務提供者の義務に関するガイドライン」及び「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第26条に関するガイドライン」を公表
「情報流通プラットフォーム対処法」の可決、交付を受けて、総務省は、省令及びガイドラインの作成を行ってきましたが、権利侵害等への対処義務に関するガイドライン及び申出者に対する通知(26条)に関するガイドラインが公表されました。
特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律における
大規模特定電気通信役務提供者の義務に関するガイドライン
(PDF) -
情報流通プラットフォーム対処法の省令及びガイドラインに関する考え方
下記「情報流通プラットフォーム対処法」の可決、公布を受けて、総務省は、省令及びガイドラインの作成を行っていますが、その規制内容ないしガイドラインに関する考え方が公表されました。
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「情報流通プラットフォーム対処法」が可決、公布
「プロバイダ責任制限法」を改正する法律案が可決、公布されました。これにあわせて、その名称も「情報流通プラットフォーム対処法」へと変更になりました。
この法律では、SNS上における誹謗中傷等の案件が増大する状況を踏まえた新規制が盛り込まれました。
具体的には、大規模プラットフォーム事業者に対して、一定期間内の削除申出への対応や削除基準の策定・公表を義務付けるなどの規制が新たに設けられています。
施行日は、2025年4月1日です。1 新たに定められた規制の概要
大規模プラットフォーム事業者の義務が定められました。
誹謗中傷など人の権利を侵害する情報(=侵害情報)の送信防止措置(=情報の削除)につき、実施手続きの迅速化および実施状況の透明化を図ることを目的とした義務が、大規模プラットフォーム事業者に対して課されることになっています。
この大規模プラットフォーム事業者には、主に大規模なSNSや匿名掲示板の運営事業者になると考えられます。
なお、この規模に関する基準の詳細は、今後総務省令によって定められます。「平均月間発信者数」または「平均月間延べ発信者数」によって判定するものとされています。2 大規模プラットフォーム事業者に課される義務
① 総務大臣に対する届出
② 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表
③ 侵害情報に係る調査の実施
④ 侵害情報調査専門員の選任・届出
⑤ 送信防止措置の申出者に対する通知
⑥ 送信防止措置の実施に関する基準等の公表
⑦ 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等
⑧ 送信防止措置の実施状況等の公表3 上記義務の内容
① 総務大臣に対する届出
大規模プラットフォーム事業者に該当する場合は、総務大臣に届出をしなければなりません。② 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表
大規模プラットフォーム事業者は、侵害情報につき、送信防止措置を講ずる申出を行う方法を定め、これを公表しなければなりません2)3条1項)。
そして、この申出方法は、次のようなものでなければなりません(同条2項)。- 電子的な方法(ウェブ上での申出など)を可能とすること
- 申出者に過重な負担を課するものでないこと
- 申出を受けた日時が申出者に明らかとなること
③ 侵害情報に係る調査の実施
大規模プラットフォーム事業者は、被侵害者から侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出があったときは、不当な権利侵害の有無について、遅滞なく必要な調査を行わなければなりません(24条)。④ 侵害情報調査専門員の選任・届出
大規模プラットフォーム事業者は、上記申出を受けて行う調査のうち、専門的な知識経験を必要とするものを適正に行わせるため、侵害情報調査専門員を選任しなければなりません(25条1項)。
侵害情報調査専門員は、誹謗中傷などの権利侵害への対処に関して、十分な知識経験を有する者から選任する必要があります(同項)。
また、運営されるプラットフォームにおける発信者数などに応じて、選任すべき侵害情報調査専門員の最低人数が総務省令によって定められる予定です(同条2項)。⑤ 送信防止措置の申出者に対する通知
大規模プラットフォーム事業者は、上記申出を受けて行った調査の結果に基づき、当該措置を講ずるかどうかを判断し、原則として申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に、所定の事項を申出者に通知しなければなりません(26条1項)。⑥ 送信防止措置の実施に関する基準等の公表
大規模プラットフォーム事業者が送信防止措置を講ずることができるのは、原則として事前に公表している削除基準などに従う場合に限られます(27条1項)。
当該基準は、どのような情報が送信防止措置の対象になるかを具体的に定めるなど、一定の基準に適合させるよう努めなければなりません(同条2項)。
この条項の趣旨は、大規模プラットフォーム事業者による恣意的な送信防止措置を防ぎ、SNSや匿名掲示板などにおける投稿者の表現の自由を保護する目的があります。⑦ 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等
大規模プラットフォーム事業者が送信防止措置を講じたときは、原則として遅滞なく、その旨およびその理由を当該情報の発信者に通知し、または発信者が容易に知り得る状態に置く措置を講じなければなりません(26条前段)。
この場合、当該基準におけるどの規定に基づいて送信防止措置を講じたのかを明らかにする必要があります(同条後段)。⑧ 送信防止措置の実施状況等の公表
大規模プラットフォーム事業者は、毎年一回、次に掲げる事項を掲載しなければなりません(29条)。ⅰ 侵害情報送信防止措置の申出の受付の状況
ⅱ 侵害情報送信防止措置を講ずるかどうかに関する、申出者への通知の実施状況
ⅲ 送信防止措置を講じた場合における、発信者に対する通知等の措置の実施状況
ⅳ 送信防止措置の実施状況(上記の事項を除く)
ⅴ ⅰないしⅳの事項について自ら行った評価
ⅵ そのほか、総務省令で定める事項 -
総務省の誹謗中傷対策(有識者会議での規制方針の原案の公表)
総務省は、SNSなどプラットフォーム事業者に対するネット上の誹謗中傷の抑止に向けた規制方針を取りまとめた。X(旧ツイッター)、メタ、グーグルなどのプラットフォーム事業者を念頭に、投稿の削除基準を示す「削除指針」を公表すること、申請窓口をわかりやすく明示すること、削除要請から1週間以内に対応することなどを義務付けるなどして、被害者の救済にあたることとしている。
総務省は、通常国会への関連法案の提出に向けて調整を進めるとしている。
規制内容の第1は、被害者が事業者に投稿の削除を要請した場合、事業者側は原則、1週間以内にどう対応したかを知らせるよう義務づける。
第2に、投稿を削除する基準となる「指針」を策定し、その公表を促す。
第3に、削除申請の窓口を設置し、わかりやすく明示することを求める。
第4に、事業者の取り組み状況を検証するために、「指針」に基づいた削除状況の開示も要求する。 -
侮辱罪の厳罰化(22年法改正)
2022年年6月の刑法改正(施行日は2022年7月7日)により、侮辱罪の法定刑が次のとおり変更されました。
従来の法定刑⇒拘留又は科料
改正後の法定刑⇒1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料この侮辱罪の厳罰化というのは、これまでに比べて処罰範囲が拡大されたわけではありません。どのような行為が侮辱罪に該当するのかという判断基準が変更されたわけではなく、課せられる刑罰が軽微な刑罰であると「拘留又は科料」に加え、通常の刑法犯に課せられる「懲役刑」「禁錮刑」「罰金刑」が新しく加えられました。
これは、今日、インターネット上の誹謗中傷を内容とする投稿が社会問題化し、侮辱の内容も激烈なものが増加し、それが広範囲に伝搬されることから、その被害もけっして軽微とは言えないものが増加してきていることに対応したものです。
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「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」の公表
インターネット上の匿名の発信者による投稿によって被害を受けた者は、被害回復のため、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示請求により発信者を特定し、損害賠償請求等を行うことが考えられるが、現在の発信者情報開示制度に関して様々な課題が指摘されており、円滑な被害者救済が図られないという指摘があるところである。
そこで、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の在り方について「発信者情報開示の在り方に関する研究会」にて検討が行われ、令和2年12月「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」が公表された。そこでは、現行制度を存続させる一方で、これに加えて非訟手続を新たに設け、アクセスプロバイダを早期に特定して、発信者を特定する通信ログ及びその住所・氏名等を迅速に保全するとともに、発信者情報の開示の適否を1つの手続の中で行う非訟手続を創設することが適当であるとしている。