1. 
発信者に対する任意の削除請求

発信者が誰であるか特定できる場合は、電子メールや郵便で投稿を削除するよう要請します。
その内容は、弁護士が、当事者が抱く感情的な要素を排除して、あくまでも名誉棄損ないし侮辱、もしくは業務妨害などの法的視点から主張を構成して、発信者に合理的な判断を促し、任意に削除するように要請を行います。
発信者が確信犯的な目的で投稿を行ったものでない場合は、この要請に応じて任意に投稿を削除するケースを多くあります。

2. 
プロバイダに対する任意の削除請求

発信者がわからない場合には、発信者に対して任意の削除請求を行うことはできません。
その場合は、発信者に対して削除請求を行うためには、まずプロバイダに対して後述するような発信者情報開示請求を行い、発信者を特定してからその発信者に対して削除請求を行うということになります。
しかしながら、この方法ではあまりに迂遠で、被害者の保護に著しく欠けることになります。また、そもそもSNSの性質によっては、発信者自身も消去ができないものもあります。

そこで、被害者としては、投稿がなされているSNSの運営者ないし管理者であるプロバイダに対して、投稿の削除請求を行うことが考えられます。というよりも、むしろこの方法が被害者の早期かつ効率的な救済を実現できる方法となります。
ただ、プロバイダとしては、削除請求に対してむやみにこれに応じていては、発信者側から表現の自由などを侵害するものだとの主張を受け、損害賠償の請求をされることになり、非常に難しい立場に置かれることになります。

そこで、プロバイダ責任法という法律が、この点については以下のように規定しています。

プロバイダが対象となる投稿を削除することが可能であり、ⅰ)その投稿により被害者の権利が侵害されていることを知っていたとき、またはⅱ)その投稿がされていることを知っていた場合で、その投稿によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当な理由があるとき、

は、責任を負います。
したがって、プロバイダが被害者から、権利侵害を理由として削除請求を受けたときは、これに真摯に対応しなければ「その投稿によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当な理由がある」として責任を負わされることが多くなります。そのため、プロバイダは、被害者から投稿による権利侵害があることを相応の資料に基づき通知された場合は、これを適切に処理する必要に迫られることになるのです。

そこで被害者は、自らに権利侵害がなされていることを、資料を添付するなどして主張し、任意の削除の請求を行います。
そのルートは、2つのルートがあります。

ⅰ) プロバイダの窓口等への削除請求

SNS上で削除請求の方法を告知しているプロバイダもありますので、これを利用するのが手始めです。こうした窓口がない場合は、書面等を郵送して任意に削除請求を行うよう要請します。

ⅱ) 名誉棄損・プライバシー関係ガイドラインに従った削除請求

次に、被害者は、名誉棄損・プライバシー関係ガイドラインを利用して、削除請求することもできます。
このガイドラインによる請求を受領したプロバイダは、投稿者に対して投稿の削除の可否を尋ねる連絡を行い、7日以内に異議がない(もしくは不合理な反論しかできない)場合には、削除するという対応になります。

任意の削除請求に対するプロバイダの一般的な対応

上述の通り、一部のプロバイダは、SNS上で削除請求を受け付ける等独自の苦情処理対応をしているところもあります。また、ガイドラインに従った請求を受けた場合に、自主的に削除請求に応じている場合があります。ただし、こうした対応は各プロバイダにより異なり、かつ対応方針が変更されることもあります。

そして、より根本的には、被害者による権利侵害の主張がなされて削除請求があっとしても、その投稿が実際、被害者の権利を侵害しているか否かについて、プロバイダとしては判断がつきかねるという理由で、その要請に応えることをしないことが往々にしてありえます。明白な権利侵害がない限り、裁判所等の公的判断があって初めて対応するという方針のプロバイダも多く存在します。

その場合は、法的手段による削除請求を行うことになります。