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在宅介護誌事件 東京高裁平成10年11月26日判決
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【判例ID】   28041756
書籍発行差止等・同反訴請求・同附帯控訴事件
東京高裁平九(ネ)一八八五号、平一〇(ネ)二四五一号
平10・11・26民一八部判決
控訴人(附帯被控訴人) 甲野花子(以下「控訴人」という。)
右訴訟代理人弁護士 山下江
右訴訟復代理人弁護士 目片浩三
被控訴人(附帯控訴人) 株式会社乙山館(以下「被控訴人乙山館」という。)
右代表者代表取締役 丙川一子 ほか二名
右被控訴人三名訴訟代理人弁護士 津川哲郎

       主   文

一 控訴人の控訴及び被控訴人乙山館の附帯控訴(当審における新請求を含む。)に基づき、原判決を次のとおり変更する。
1 被控訴人乙山館及び被控訴人丁原は、別紙目録一記載の書籍を、発行し、販売し又は頒布してはならない。
2 被控訴人乙山館及び被控訴人丁原は、その占有する別紙目録一記載の書籍を廃棄せよ。
3 被控訴人乙山館、被控訴人丁原及び被控訴人丙川は、別紙目録四及び五記載の書籍を、
発行し、販売し又は頒布してはならない。
4 被控訴人乙山館、被控訴人丁原及び被控訴人丙川は、その占有する別紙目録四及び五記載の書籍を廃棄せよ。
5 被控訴人乙山館及び被控訴人丁原は、控訴人に対し、各自六万七九二八円及びこれに対する平成五年九月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
6 被控訴人乙山館、被控訴人丁原及び被控訴人丙川は、控訴人に対し、各自一三万四六四三円及びこれに対する平成七年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
7(一)被控訴人乙山館の控訴人に対する公立学校共済組合関係の書籍販売(別紙目録三記載の書籍)に関する主位的請求及び予備的請求その一を棄却する。
(二)控訴人は、被控訴人乙山館に対し、三〇〇万円及びこれに対する平成一〇年六月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
8 控訴人のその余の請求及び被控訴人乙山館のその余の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、第一、二審を通じ、控訴人に生じた費用の二分の一を被控訴人乙山館、被控訴人丙川及び被控訴人丁原の連帯負担とし、控訴人に生じたその余の費用及び各被控訴人に生じた費用は、各自の負担とする。
三 この判決は、一項1、3、5、6、7(二)に限り、仮に執行することができる。

       事実及び理由

第一 当事者の求めた裁判
(以下、別紙目録一ないし七記載の各書籍を、それぞれ目録の番号に対応して「書籍一」ないし「書籍七」という。)
一 控訴人の控訴の趣旨
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人乙山館及び被控訴人丁原は、既に発行し、販売し又は頒布した書籍一(その占有するものを除く。)を回収し、廃棄せよ。
3 被控訴人乙山館、被控訴人丁原及び被控訴人丙川は、既に発行し、販売し又は頒布した書籍四及び五(その占有するものを除く。)を回収し、廃棄せよ。
4 被控訴人乙山館及び被控訴人丁原は、控訴人に対し、各自一七三万七四二〇円及びこれに対する平成五年九月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人乙山館、被控訴人丁原及び被控訴人丙川は、控訴人に対し、各自一四九万七九二八円及びこれに対する平成七年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
6 被控訴人乙山館の請求を棄却する。
7 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
8 原判決主文二項及び四項並びに右2ないし5及び7項につき仮執行宣言
二 控訴の趣旨に対する被控訴人らの答弁
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
三 被控訴人乙山館の附帯控訴の趣旨
1 原判決の被控訴人乙山館敗訴部分中、次の2項記載の金員の支払請求を棄却した部分を取り消す。
2 控訴人は、被控訴人乙山館に対し、五〇〇万円及びこれに対する平成七年二月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。
4 右2項につき仮執行宣言
四 附帯控訴の趣旨に対する控訴人の答弁
1 本件附帯控訴を棄却する。
2 附帯控訴費用は被控訴人乙山館の負担とする。
第二 事案関係
  次のとおり、付加、訂正、削除するほか、原判決の事実摘示「第二 事案の概要」(七頁一行ないし四三頁四行)と同一であるから、これを引用する。
一 事案の要約及び前提事実関係
1 原判決九頁九行の「している」の次に、「(ただし、当審では、書籍三についての内金請求額を五〇〇万円とするとともに、予備的請求その二として、商法五一二条に基づく報酬請求を主張している。)」を加える。
2 原判決一〇頁三行の「代表者である。」を「代表者であった。」と改める。
二 争点関係
1 原判決一六頁八行の末尾に、「また、乙野及び控訴人の著作権ないし共有著作権は、それぞれ被控訴人乙山館に譲渡されたか。」を加える。
2 原判決一七頁四行の次に、「また、被控訴人乙山館は、商法五一二条に該当する行為を行ったか。」を加える。
三 争点についての当事者の主張関係
1 原判決三五頁六行の「乙野から原告への」を削除し、同頁一〇行の次に、改行して、「乙野及び控訴人が、書籍三初出部分の著作権を被控訴人乙山館に譲渡したことはない。」を加える。
2 原判決三六頁一行の次に、改行して、「乙野及び控訴人は、書籍三初出部分の著作権を被控訴人乙山館に譲渡したものである。」を加える。
3 原判決三七頁九行の次に、改行して、以下のとおり加える。
「控訴人は、書籍二を作成するために書籍三用の版下、原版用フィルムの手直しが必要であったため、その作業を被控訴人乙山館に依頼した。被控訴人乙山館は、何ら異議を述べることなくその作業を行い、その作業の代金を控訴人に請求した。この事実は、被控訴人乙山館が本件著作物の著作権が控訴人に属することを認めていたことを示すものである。」

4 原判決四〇頁七行ないし四三頁四行を次のとおり改める。
「7 争点7(公立学校共済組合に書籍三を売り渡したのは、控訴人か被控訴人乙山館か。被控訴人乙山館は、商法五一二条に該当する行為を行ったか。)
(一)被控訴人乙山館
(1)(主位的請求)被控訴人乙山館は、平成四年一一月六日、東京都在宅介護研究会名義で、公立学校共済組合との間で、書籍三を八万〇二〇〇部、七二七一万八〇〇〇円で売り渡す契約を締結し、同年一二月ころ、書籍三を八万〇二〇〇部公立学校共済組合に納品した。被控訴人乙山館は、右契約の実質的当事者であるが、書籍の出版等についての社会福祉・医療事業団等による助成団体の認定が、個人や営利企業である株式会社はその対象とはされないことへの配慮等から、東京都在宅介護研究会の名義を使用したものである。

 したがって、公立学校共済組合から送金された七二七一万八〇〇〇円は、すべて被控訴人乙山館に帰属するものである。
  被控訴人乙山館は、控訴人に対し、主位的に、不法行為に基づく損害賠償として、公立学校共済組合から送金された書籍三の販売代金七二七一万八〇〇〇円から控訴人が勝手に引出して着服横領した六〇七一万八〇〇〇円の内金二〇〇〇万円の更に内金五〇〇万円の支払を求める。
(2)(予備的請求その一)仮に右主張が認められないとしても、予備的請求その一として、著作権等侵害に基づく損害賠償として、書籍三の販売代金七二七一万八〇〇〇円につき被控訴人乙山館が有する著作権割合に相当する金額(少なくとも四二九五万三〇六八円)の内金二〇〇〇万円の更に内金五〇〇万円の支払を求める。
(3)(予備的請求その二)仮に右予備的請求その一が認められないとしても、被控訴人乙山館は、書籍三の製作につき公立学校共済組合との間で、全面的にかつ頻繁に打合せを行い、書籍三の製作を行い、下請や紙の販売業者との間で、価格や下請条件等につき折衝した上で発注し、下請会社等からその代金の請求を受け、合計一三三二万三〇四五円を支払ったものである。したがって、被控訴人乙山館には、商法五一二条に基づき、製作代金相当額として、公立学校共済組合への販売額の二五%相当額である一八一七万九五〇〇円の報酬額が認められるべきである。
  よって、被控訴人乙山館は、控訴人に対し、予備的請求その二として、右一八一七万九五〇〇円から受領済みの一二〇〇万円を控除した六一七万九五〇〇円の内金五〇〇万円の支払を求める。
(二)控訴人
(1)控訴人は、公立学校共済組合と書籍三を売り渡す契約を締結して、平成四年一二月ころ、書籍三を公立学校共済組合に納品した。
  したがって、公立学校共済組合からの入金七二七一万八〇〇〇円は、すべて控訴人に帰属するものである。
(2)書籍三について、被控訴人乙山館は、何ら著作権等を有していないし、仮に著作権等を一部有していたとしても、少なくとも、控訴人は、書籍三の出版、発行について、被控訴人乙山館から本件著作物の使用許諾を受けているものである。
(3)書籍三の売買については、被控訴人乙山館は、これに関する印刷、製本等の業務依頼を控訴人から受けようとして、控訴人が公立学校共済組合に行く際に同行する程度のことをしたのみであり、売買契約の締結は控訴人自ら行っている。そして、控訴人は、最終的には、被控訴人乙山館に業務を依頼することを一切断ったものであり、商法五一二条の報酬請求権が発生する余地はない。
  なお、控訴人が被控訴人乙山館口座あてに合計一二〇〇万円を振り込んだのは、離婚状態にあることを取引先に知られて、被控訴人丙川がみっともない思いをすることがないようにとの配慮からである。」
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所は、控訴人及び被控訴人乙山館からの各書籍の発行差止め及び損害賠償の請求については、本件著作物の著作権、編集著作権は控訴人に一部帰属するとともに、被控訴人乙山館にも一部帰属するが、被控訴人乙山館は、控訴人に対し、書籍三及び書籍二の出版、発行につき、本件著作物の使用許諾をしたと判断するものであり、また、公立学校共済組合へ販売した書籍三に関する被控訴人乙山館から控訴人に対する請求については、被控訴人乙山館が実質的な売主であった等の主張は認められないが、被控訴人乙山館は商法五一二条に基づく報酬請求権を有すると判断するものである。
  その理由は、二項以下で、付加、訂正、削除するほか、原判決の理由「第三当裁判所の判断一ないし四」(四三頁六行ないし一六三頁七行)と同一であるから、これを引用する。
二 誤記等の訂正
1 原判決四三頁六行の「証人戊田」を「証人甲田」と改める。
2 同五二頁七行の「甲五六」を「甲五六の1・2」と改める。
3 同五二頁九行の「原告」を「被控訴人乙山館」と改める。
4 同五四頁九行の「清掃」を「清拭」と改める。
5 同五八頁六行の「五五、五六の1・2」を「五五、五六の各1・2」と改める。
6 同六九頁一〇行の「修了者四一人」を「終了者四十一人」と改める。
7 同七三頁八行の末尾に、「(甲五三)」を加える。
8 同八〇頁一〇行の「元に」を「基に」と改める。
9 同八一頁一行及び八二頁四行の「持った方」を「もった方」と改める。
10 同九四頁四行の「書籍六」を「書籍七」に、「検乙一」を「検乙三」にそれぞれ改める。
11 同九五頁九行の「甲二三の3」を「乙二三の3」と改める。
12 同九七頁三行の「分かりました」を「わかりました」と改める。
13 同九九頁三行の「甲内美術」(二箇所)をいずれも「甲村美術」と改める。
14 同一一五頁一〇行の「これ」を「これを」と改める。
15 同一一九頁一行の「したこと」を「したことを」と改める。
三 原判決四四頁末行の次に、改行して、「ただし、被控訴人丙川は、現在、病気のため被控訴人乙山館の代表者の地位を退いている。」を加える。
四 同七九頁一行から八〇頁五行までを削除する。
五 同九八頁一一行の「この原版用フィルムを原告に渡したため、」を「その版下及び原版用フィルムを控訴人に渡したため、」と改め、同九九頁四行「右原版用」から五行までを次のとおり改める。
「右版下及び原版用フィルムを管理している。また、控訴人は、平成五年一月ころ、被控訴人乙山館に対し、書籍二を発行するために書籍三用の版下、原版用フィルムの手直しを依頼し、被控訴人乙山館は、その作業を行い、その代金として一五万四五〇〇円を控訴人に請求した。
  被控訴人らは、右版下は、控訴人が、平成五年一月ころ被控訴人丙川との夫婦仲が決定的に悪化して被控訴人乙山館を退職した際、不法に搬出したものである旨主張し、原審における被控訴人丙川本人尋問の結果中にはそれに沿う部分があるが、前記認定のとおり、被控訴人丙川は、書籍三印刷用の原版用フィルムを控訴人に引き渡す意思であったのであるから、いまだ完成していない原版用フィルムの作成に必要な版下の引渡しを行っても不自然ではないこと、及び反対趣旨の甲第九五号証(控訴人の平成九年九月二四日付け陳述書)に照らすと、右被控訴人丙川本人尋問の結果は採用することができず、被控訴人らの右主張は理由がない。」
六 同一〇一頁三行「平成四年」から七行までを、「右三社に対し、平成五年一月までに、合計一三三二万三〇四五円が支払われた。」と改める。
七 同一〇六頁八行ないし一〇八頁八行を削除する。
八 同一〇八頁一一行「書籍六及び七」から一〇九頁四行を、「控訴人が発行した書籍三そのものを複写して印刷用の原版用フィルムを作成し、印刷製本したものである。」と改める。
九 同一二八頁一行ないし一二九頁二行を、次のとおり改める。
「4 争点4(書籍三初出部分についての著作権の譲渡)について
  乙野が書籍三初出部分のイラスト等を作成したのは、被控訴人乙山館を退職した後であるが、乙野が被控訴人乙山館に勤務していた当時書籍七初出部分のイラスト等を作成したことがあったとの経緯から、控訴人の希望により乙野にイラスト等作成の依頼が行われ、控訴人の指示を受けて自宅で作成したものであり、しかも、乙野に対し東京都在宅介護研究会の名義で控訴人から支払われた額も一〇万二〇〇〇円と、作成したイラストの量等に比して決して低くない額が支払われているものであるから、控訴人と乙野との間には、書籍三初出部分のイラスト等の著作権を譲渡することにつき黙示の合意があり、右の支払はその対価の支払として行われたものと認めるべきである。これに反する被控訴人らの主張は、右に説示したところに照らし、採用することができない。
  なお、控訴人が書籍三初出部分の著作権を被控訴人乙山館に譲渡したことを認めるに足りる証拠はなく、前記争点3(書籍六初出部分及び書籍七初出部分の控訴人の著作権の譲渡の有無)についての判断において説示したところと同様に、書籍三初出部分の控訴人の著作権が被控訴人乙山館に譲渡されたものと認めることはできない。」
一〇 同一三三頁一行ないし一三五頁一行を、次のとおり改める。
「したがって、被控訴人乙山館から控訴人への著作権の譲渡をいう控訴人の主張は、理由がない。」
一一 同一三七頁一行の「乙野が」を「乙野から譲渡を受けた控訴人が」と改める。
一二 同一三七頁八行から一三九頁九行までを、次のとおり改める。
「三 公立学校共済組合との契約当事者、出版発行の許諾、商法五一二条に基づく請求について
1 公立学校共済組合との書籍三の売買契約は、東京都在宅介護研究会名義でされているが、東京都在宅介護研究会は、権利能力なき社団にも当たらないため、右契約を締結したのは、被控訴人乙山館か控訴人かについて、次に判断する。
  前記認定のとおり、被控訴人丙川ないし被控訴人乙山館は、公立学校共済組合との交渉の前面に出ていた時期はあるものの、被控訴人丙川は、平成四年一〇月ころ、控訴人に対し、「公立学校は残念です。但し、製版アップまでは責任を持って管理します。」、「新しいフィルムは貴方に渡します。」などと記載した手紙を送り、その後、同年一一月六日、「東京都在宅介護研究会甲野花子」名義で公立学校共済組合との契約が締結され、被控訴人乙山館は、書籍三の原版用フィルム及び版下を控訴人に渡し、書籍三の印刷、製本等のその余の作業は、控訴人から甲村美術に移ったのであるから、公立学校共済組合との契約を締結したのは、被控訴人乙山館でなく、東京都在宅介護研究会こと控訴人であったと認められる。
  したがって、被控訴人乙山館の附帯控訴における主位的請求(控訴人の着服横領を理由とする損害賠償請求)は失当である。
2 また、右のような事実経過にかんがみると、被控訴人乙山館は、控訴人に対し、公立学校共済組合に納入するために書籍三を製作することについては、許諾をしていたというべきであるから、被控訴人乙山館の附帯控訴における予備的請求その一(著作権等侵害に基づく損害賠償請求)は理由がない。
3 さらに、右1に説示の事実経過、及び控訴人が平成五年一月ころ被控訴人乙山館に対し書籍二を発行するために書籍三用の版下、原版用フィルムの手直しを依頼し、被控訴人乙山館はその作業を行い、その代金一五万四五〇〇円を請求していることなどに照らすと、被控訴人乙山館は、書籍三のみならず、書籍二の出版発行についても許諾をしていたというべきである。
4 附帯控訴における予備的請求その二(商法五一二条に基づく報酬請求)の点について判断する。
  前記認定の事実によれば、被控訴人乙山館は、印刷物の作成、企画、デザイン等を業とする会社であるが、その代表者であった被控訴人丙川は、平成四年五月ころから同年一〇月上旬ころに夫婦仲が悪化して別居するまでの間は、参議院議員選挙や父の看病で多忙であった控訴人に代わって公立学校共済組合と書籍三の販売についての見積りや打合せを行い、用紙、印刷等の手配を行い、書籍三の納入後も、乙石屋紙株式会社、株式会社戊海製版及び株式会社甲村美術の三社からの請求に基づき、紙代金等として合計一三三二万三〇四五円を支払ったものである(なお、控訴人は、書籍三についての紙代金等の支払に充てるため、被控訴人乙山館の銀行口座に一二〇〇万円を振り込んでいる。)。
  そして、これまでの書籍六及び書籍七にそいての取引(前記認定のとおり、書籍六については、東京都在宅介護研究会が被控訴人乙山館からその販売価額の約半額(印刷・製本等の費用を大きく超える)で仕入れたものとする会計処理をして被控訴人乙山館に対し費用、利益を支払っており、また、書籍七については、被控訴人乙山館は、東京都在宅介護研究会に対し、そのデザイン・レイアウト料、イラスト料、写植・文字代、印刷・製本代等合計三九九万六〇〇〇円を請求し、東京都在宅介護研究会から右金員の支払を受けている。)も被控訴人乙山館と東京都在宅介護研究会等との商取引として行われてきた事実からすると、同様の商取引に結びつく公立学校共済組合との取引の交渉等は、夫婦間の相互扶助としてではなく、飽くまで商人である被控訴人乙山館の立場で行われたものと認めることができる。
  さらに,控訴人が被控訴人丙川の関与を拒絶するまでに被控訴人乙山館の代表者であった被控訴人丙川が行った公立学校共済組合との打合せ等は、控訴人の意思に反するものとは認められず、また、前記のように、乙石屋紙株式会社ら三社への支払は、それらの会社からの請求に基づき行われ、しかも、控訴人は、被控訴人乙山館の銀行口座に一二〇〇万円を振り込んでいるものであるから、被控訴人乙山館の乙石屋紙株式会社らへの支払も、控訴人の意思に反するものとは認められない。したがって、被控訴人乙山館が行った公立学校共済組合との打合せ等及び乙石屋紙株式会社らへの支払は、委託がなかったとしても事務管理の要件を満たすものである。
  そして、被控訴人乙山館が商法五一二条に基づく請求権を放棄した等の事情もうかがわれない。 
  したがって、被控訴人乙山館は、控訴人に対し、その営業の範囲内においてした公立学校共済組合との打合せ等及び乙石屋紙株式会社らへの支払につき経費を含む報酬の請求をすることができるところ、前記認定の事実関係によれば、経費を含む相当報酬額を一五〇〇万円(販売代金の約二〇%)と認めるのが相当である。そうすると、控訴人は、被控訴人乙山館に対し、その残額三〇〇万円及びこれに対する附帯控訴状が控訴人に送達された日の翌日である平成一〇年六月二三日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるというべきである。」
一三 同一四四頁八行ないし一四五頁五行を削除する。
一四 同一五〇頁四行ないし末行を削除する。
一五 同一五四頁七行の次に、改行して、「なお、参考文献をそのまま切り張りして複製した部分についての編集著作権は、全体の中において寄与する割合は低いと認められるので、右貢献度の割合の認定に影響を与えないものである。」を加える。
一六 同一五九頁末行ないし一六一頁五行を、次のとおり改める。
「そして、アンケート部分の文章部分は第三者の著作、その余の説明部分は控訴人の単独著作、アンケート部分及びその余の説明部分におけるイラスト部分は乙野の単独著作であるが、右乙野の権利は控訴人に譲渡され、全体の編集著作は、控訴人であることは、前記のとおりである。
  以上によれば、書籍三初出部分に占める控訴人の著作権ないし編集著作権の貢献度の割合は、全体を一〇とすると、九・六五(6×32÷34(文章部分)+2(イラスト部分)+2(編集著作))となる。」
一七 同一六二頁一行ないし一六三頁七行を、次のとおり改める。
「したがって、本件著作物全体を一〇〇とすると、これに占める控訴人の著作権の割合は、四八・五二(29×0・2+55×0・496+16×0・965)である。
  そして、控訴人は、本件著作物全体に占める自己の権利の割合に応じてその損害賠償を請求することができるところ、控訴人は、被控訴人乙山館及び被控訴人丁原に対し、書籍一の製作発行による損害金六万七九二八円(14万×0・4852)の損害賠償を、被控訴人らに対し、書籍四及び書籍五の製作発行による損害金一三万四六四三円((26万7500+1万)×0・4852)となる。」
第四 結論
  以上によれば、控訴人の甲事件及び乙事件の請求、並びに、被控訴人乙山館の丙事件の請求は、主文第一項1なし6及び7(二)掲記の限度で理由があり、その余はいずれも理由がない。
  なお、甲事件及び乙事件において、いずれも既に第三者に販売、頒布した書籍一、四及び五について回収の上廃棄を求める請求があるが、右各書籍が在宅介護研に関する書籍であり、その作成について被控訴人乙山館関係者以外の者が協力した部分も大きく、本件が控訴人と被控訴人乙山館代表者(当時)被控訴人丙川の夫婦間の争いに端を発するものであることにかんがみると、第三者に迷惑を掛けてまで、これを回収して廃棄させる必要はないというべきである。
  よって、これと異なる原判決を主文のとおり変更し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条二項、六一条、六四条本文、六五条一項を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項(主文三項掲記の限度で相当と認め、その余の部分については付さないこととする。)をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(平成一〇年一〇月六日 口頭弁論終結)
(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 市川正巳)
別紙 目録《略》


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