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ゴールデンミカド事件 大阪地裁昭和42年8月21日判決
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【判例ID】   27755010
音楽著作物使用料並に違約金等請求訴訟事件
大阪地裁昭四一(ワ)三八二九号
昭42・8・21民二一部判決
原告 社団法人日本音楽著作権協会
右代表者理事長 ★日★三
右訴訟代理人弁護士 井上準一郎
同 柳井義郎
被告 ナニワ観光事業株式会社
右代表者代表取締役 加藤★★
右訴訟代理人弁護士 麻植福雄

       主   文

 被告は原告に対し、金三、二一〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四一年七月二九日から右支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。
被告は大阪市南区笠屋町七番地「ゴールデンミカド」において、別添楽曲リストおよび同追補各記載の音楽著作物をその営業のために演奏してはならない。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決の第一項は仮に執行することができる。

       事   実

 第一 当事者双方の申立
  原告訴訟代理人は、主文同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求め、被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。
第二 請求の原因
一 原告は「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和一四年法律第六七号)に基く許可を受けた我国唯一の著作権仲介団体であり、内外の音楽著作物につきそれぞれの著作権者より著作権乃至その分支権(演奏権、録音権等)の移転を受けて管理し、我国内における放送事業者をはじめレコード、映画、出版、興行等の分野の各種音楽使用者に対してその使用を許諾し、著作物の適法な利用を円滑簡易にすると共に右許諾に際し約定した著作物使用料を使用者より収納し、これを内外の権利者に分配することを主たる業となしている。そして原告はその管理に属する別添楽曲リスト及び同追補記載の各音楽著作物(以下、これらを総括して管理著作物という)に関しては、現に著作権者より著作権の信託的譲渡をうけて著作権を有しているものである。
二 被告は風俗営業に関する事業を営む会社であり、昭和三八年一〇月一日以来大阪市南区笠屋町七番地の営業所にバンドステージ、ピアノ、フロアー(踊り場)、客席、楽団等の設備を設け「ゴールデンミカド」なる名称の下にキャバレーを経営している者であるが、営業時間中その専属楽団に原告の管理著作物を演奏させて来集した客に聴取させるため昭和三八年一〇月二一日原告に対し著作物使用許諾契約の申込をした。そこで原告は同月二四日被告に対し次のような約定で管理著作物の使用を許諾した。(甲第一号証)。
(一)被告は著作物使用料として演奏の有無回数にかかわらず月額金五万円(但し一二月分は金六万円)を毎月一〇日に原告に支払うこと。
(二)被告が使用料の支払いを三カ月以上履行しなかったときは、使用料のほか違約金として不履行の期間について月額使用料の倍額を原告に支払うこと。
(三)本契約に違反したときは契約を解除することができること。
(四)契約期間は昭和三八年一〇月一日より昭和三九年九月三〇日まで。但し右期間満了のときに原被告のいずれからも特に異議を述べないときは、本契約と同一の条件をもって契約は更新されること。
  しかして、右契約の期間満了の際において原被告のどちらからも異議が述べられなかったので、昭和三九年一〇月一日原被告間に従前と同一の内容をもって契約が更新された。

三 被告はその後引続き管理著作物の使用を継続してきたが、右契約上の義務に違反して昭和三九年一〇月分以降の使用料を支払わないので、原告は昭和四一年七月一日被告に対し内容証明郵便をもって同年六月分までの延滞使用料合計金一、〇七〇、〇〇〇円を一週間以内に支払うよう履行を催告し、同書面は翌七月二日被告に到達した。にも拘らず被告はその支払に応じない。
四 よって、原告は被告に対し、昭和三九年一〇月一日から昭和四一年六月末日までの期間についての延滞使用料金一、〇七〇、〇〇〇円と右債務不履行に基く違約金二、一四〇、〇〇〇円の合計金額三、二一〇、〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和四一年七月二九日から完済まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
五 また、原告は、前記三、の被告の契約違反を理由として本訴において被告との間の著作物使用許諾契約を解除する。右解除の意思表示は昭和四二年五月二日(この旨を記載した本準備書面副本の送達により)被告会社代理人に到達したから同日をもって右契約は解除された。
  それ故被告は、爾後原告の管理著作物を使用し得る権限がないにも拘らず、その後においても日曜祭日を除き毎日前記営業所において、営業時間中依然として本件の管理著作物に含まれる楽曲を楽団に演奏させて原告の著作権を侵害している。しかして、右の演奏された一部の管理著作物についてはもとより、その余の管理著作物についても、被告が営業として常時音楽演奏をなさしめているものである以上、顧客の趣好や世間の流行に従い或はショウの演出内容に応じて将来それらの演奏をなさしめ、前記のように原告の著作権を侵害する虞れがあることは明らかである。
六 よって、原告は著作権に基き、被告の現になしている侵害行為を排除し、かつ、将来の侵害を予防する措置として、被告に対し請求の趣旨記載のとおり管理著作物全部につき使用禁止を求める。
第三 被告の答弁
一 請求原因一の事実のうち、原告が主張の業を営むものであることを認めるが、原告が別添楽曲リストおよび同追補記載の音楽著作物について著作権を有することは不知。
二 同二の事実のうち、被告が原告主張の事業を営む会社であり、主張の頃から主張の営業所、設備を設け、キャバレー「ゴールデンミカド」を経営していることを認めるが、原被告間に原告主張の著作物使用許諾契約が成立したこと、この契約が原告主張の如く更新された事実を否認する。
  甲第一号証の契約書は、昭和三八年一〇月当時原被告間で原告の管理に属する音楽著作物の使用について交渉中いまだ契約が成立していないのにかかわらず無権限の被告会社事務員が被告会社代表者が承認しているものと誤信して被告会社代表者印を押捺して原告側に交付したものであるから右書面による原告主張の契約は無効である。
  かりに原告主張の著作物使用許諾契約が成立したとしても、右契約は昭和三九年九月三〇日限り消滅した。すなわち、被告は約一年間使用料を支払ったのち、この契約に疑義をいだいたので、以後支払を停止し、契約期間満了の昭和三九年九月末か同年一〇月始め、原告に対し契約所定の使用料が同業者に比べ著しく高額であるから値下げをするのでなければ契約を更新しない旨異議を述べたから、この契約は右異議の申出により昭和三九年九月三〇日限り終了した。
三 同三の事実のうち、被告が昭和四一年七月一日原告主張の催告を受けたが昭和三九年一〇月分以降の原告主張の使用料の支払をしていないことは認めるが、これにつき被告に支払義務があるとの原告の主張を否認する。
四 同五および六を争う。
  被告は昭和三九年一〇月一日以降管理著作物の使用をしていない。爾来、被告とは別個の楽団が被告との間になした演奏契約に基き被告経営のキャバレー「ゴールデンミカド」において、そのキャバレーの営業時間内に原告主張の楽曲リスト記載の音楽著作物を演奏しているものであって、被告は該楽団の演奏による管理著作物の使用については責任なく、その使用料支払義務はない。
第四 証拠《略》

       理   由

 一 原告がその主張の如き業をなす団体であることは当事者間に争がない。
  そして《証拠略》によると、原告は管理著作物につき昭和四二年五月一日以降その各著作権者から著作権の信託的譲渡をうけた著作権者であることが認められる。
二 被告が原告主張の営業所「ゴールデンミカド」において、主張の設備を設けキャバレー業を営んでいることは当事者間に争がない。
  被告代表者名下の印影が同代表者の印章によるものであることが当事者間に争がなく、《証拠略》によれば、被告はその営業時間中被告の専属楽団に原告が著作権を有する音楽著作物を演奏させて来集した客に聴取させるため、右著作物の使用につき、昭和三八年一〇月二四日原告との間に甲第一号証の契約書をもって原告主張の如き違約金、更新等についての特約をなした著作物使用許諾契約をなしたことが認められ、この認定を覆すに足る証拠はない。
三 ところで、被告は昭和三九年九月末か同年一〇月始め、原告に対し右契約所定の使用料を減額するのでなければ契約を更新しない旨申入れたと主張するけれども、本件全証拠によるも右の事実を認めることができないから、右契約は昭和三九年一〇月一日その更新についての約定にもとずき、従来と同様の条件で更新されたものと認むべく、右更新された契約の満期である昭和四〇年一〇月一日およびそれから一ヶ年後の同四一年一〇月一日にも原被告から特に異議の申出があったとの主張立証がないから、前同様右契約はその都度更新されたものと認められる。
四 そして、被告が右更新後使用料を支払っていないことはその自認するところであるから、原告が被告に対し、右契約に基づき昭和三九年一〇月一日からその請求する昭和四一年六月末日までの使用料合計金一、〇七〇、〇〇〇円ならびに右契約の違約金についての約条にもとずき右不履行の期間中の各月使用料額の倍額の違約金合計二、一四〇、〇〇〇円およびこれらに対する本件訴状送達の日の翌日であること本件記録により明らかな昭和四一年七月二九日から右各支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は理由がある。
五 つぎに被告は昭和三九年一〇月一日以降前記営業所において管理著作物が演奏されていることを自認しながら、この演奏は第三者たる楽団が独自の立場においてなしておるものであって、被告自身が演奏しておるものでないから右の演奏については被告に責任がないと主張する。しかし、証人辰巳★★の証言によれば、被告は右営業所に二つの楽団を創立以来常置し、営業時間中管理著作物を含む種々の音楽を演奏させて来集した客に聴取させておること、右各楽団は被告の依頼により被告の該営業のために右演奏をなしているのであって、被告の右営業所を借受けて独自の演奏興行をなしているものでないこと、右演奏曲目の選定は一応楽団に委されているが、営業主たる被告がその営業計画に従って指図し得る余地が残されていること、被告は右演奏により営業上多大の収益を挙げていること等の事実が認められるのであるから,被告の右営業所における音楽の演奏自体は各楽団により行われているとしても、これによる音楽著作物の使用は営業主たる被告の意思に基ずいて行われているものであることが明らかである。
  しかるところ、被告が昭和三九年一〇月分以降の前記使用料を原告に支払っていないこと、そのため原告が昭和四一年七月二日被告に対し同年六月分までの延滞使用料合計金一、
〇七〇、〇〇〇円を一週間以内に支払うよう履行の催告をしたことは当事者間に争がなく、原告がこの不履行を理由として昭和四二年五月一日付準備書面で前記契約を解除する旨の意思表示をなし、この書面が同日被告代理人に到達したことは本件記録により明らかであるから、右契約は同日有効に解除となり、以後被告は管理著作物を使用する権限を喪失した。 
  すると、前叙のように被告が現在管理著作物を使用しているのは、あきらかに原告のこれらの著作権に対する侵害となる。そしてまた、被告の「ゴールデンミカド」における営業の性格上、音楽演奏が不可欠なことは明らかであり、前叙認定の被告の行為に徴するとき、将来も継続して被告が管理著作物を演奏して原告のこの著作権を侵害するおそれのあることは充分窺れるところであるから、原告が被告に対し、同人が現在および将来別添楽曲リストおよび同追補各記載の音楽著作物の演奏をすることにつき差止めを求める本訴請求は理由がある。
七 よって、原告の本訴各請求はすべて理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大江健次郎 裁判官 池田良兼 森林稔)


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