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クラブ・明日香事件 広島地裁福山支部昭和61年8月27日判決
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【判例ID】   27801448
著作権侵害差止等請求事件
広島地裁福山支部昭五六(ワ)二一五号
昭61・8・27判決
原告 社団法人 X
右代表者理事 X1
同 石井春水
右訴訟代理人弁護士 井上準一郎
被告 Y
被告 Y1
右両名訴訟代理人弁護士 坂本皖哉

       主   文

1 被告らは、広島県福山市延広町八番九号「くらぶ明日香」において、別添楽曲リスト、同(2)、同(3)及び同(4)に各記載の音楽著作物を、次の方法により営業のために演奏してはならない。
(1)ピアノその他の演奏用楽器を使用して生演奏すること。
(2)ピアノに取り付けたピアノ自動演奏装置を操作して演奏すること。
(3)カラオケ装置を操作して伴奏音楽に合わせて顧客または従業員に歌唱させ若しくは自ら歌唱すること。
(4)カラオケ装置を操作して、録音テープ(カラオケテープ)あるいはレーザーディスクに収録されている伴奏音楽を再生(演奏あるいは上映)すること。
2 被告らは、連帯して、原告に対し、金七〇六万五、〇〇〇円およびこれに対する昭和五六年八月七日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 この判決は仮に執行することができる。

       事   実

第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文第1ないし第3項と同旨の判決並びに仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
(一)当事者
1 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和一四年法律第六七号)に基づく許可を受けた我国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽著作物につき、それぞれの著作権者より著作権ないしその支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移転を受けてこれを管理し(内国著作物についてはその著作権者から著作権信託契約約款により、外国著作物については我国の締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との相互管理契約による。)、国内におけるラジオ・テレビの放送事業者をはじめ、レコード、映画、出版、興行、社交場、有線放送等各種の分野における音楽使用者に対して著作権の使用許諾を与え、著作物の適法な利用を円滑簡易ならしめると共に、右許諾の対価として音楽使用者から著作物使用料規程に定める使用料を徴収し、これを内外の著作者に分配することを主たる目的とする社団法人であり、現に別添楽曲リスト、同(2)、同(3)および同(4)に各記載の音楽著作物(以下、これらを総括して「管理著作物」という。)について、これを管理しているものである。
2 被告らは昭和三〇年五月に婚姻の届出をした夫婦であって、被告Y(以下、被告Yという。)は夫である被告Y1(以下、被告Y1という。)と共同して、昭和三一年から広島県福山市内において、バー、キャバレー、クラブなどの営業に従事し、経営していたものであるが、昭和四七年五月からは同県福山市延広町八番九号に「くらぶ明日香」を開設し、共同経営のもとに、開店当初からピアノを備え付け、その後、カラオケ装置あるいはビデオの再生機能をもつレーザーディスクカラオケ装置、ピアノ自動演奏装置を設置して、その営業を続けている。
(二)侵害行為
1 他人の音楽著作物(作詞・作曲)を公に演奏して使用する者は、法律に別段の除外規定のない限り、その著作物の使用について、著作権者の許諾を受け、これに対価を支払う法律上の義務を有する(著作権法二二条、六三条参照)。これは入場料をとって演奏する場合に限らず、キャバレー、バー、スナック等社交場の経営者が音楽の演奏により直接あるいは間接に営利を目的とする場合にもすべてこれに著作権が及び、著作物使用者が許諾を得ないで著作物を演奏すれば、著作権の侵害となる。
2 被告らは、次のとおり「くらぶ明日香」の店内において原告の管理著作物である音楽を演奏(再生を含む)し、もって原告の音楽著作権の内容である演奏権及び上映権を侵害した。
(1)被告らは、前記昭和四七年五月の開店以来引続き昭和五六年七月末に至るまでの間、日曜祭日を除いた毎日、右店内で営業時間中ピアノを使用し、原告の許諾を受けないで原告の管理著作物である音楽を生演奏し、これを来集した不特定多数の客に聞かせ、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害した。
(2)被告らは、昭和五六年八月以後も引続き今日に至るまでの間、日曜祭日を除いた毎日、右店内で営業時間中、従来のピアノによる生演奏にかえ、同店内に設置されたカラオケ装置(伴奏音楽を収録した録音テープあるいは伴奏音楽を映像の録画と同時に収録したレーザーディスク等の機器を再生し、これに合せてマイクロフォンを使って歌唱できるように構成された装置をいう。)をもっぱら使用し、これを稼働させるため原告の管理著作物である伴奏音楽を収録した多数のカラオケテープ(歌詞付き楽曲の楽曲のみを収録した伴奏用テープ)およびレーザーディスクを常備し、客にすすめてその中から好みの曲目を選ばせ、カラオケテープにより伴奏音楽を再生し、あるいはレーザーディスクにより録画した映像と共に伴奏音楽を再生し(著作権法二条一項五号、一九号、同条三項参照)その伴奏の旋律(節)に合わせて他の客の面前で店の従業員(ホステス)や顧客に管理著作物である当該歌詞付き楽曲の音楽を原告に無断で歌唱させ、また、時には被告Y自らも歌唱し、これを来集した不特定多数の客に聞かせ、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害し、また、歌唱の際の伴奏に使用するレーザーディスクに収録されている伴奏音楽は、著作権法二六条二項の「映画の著作物において複製(録音)されている著作物」に該当するものであるから、被告らが店内で歌唱の伴奏のためにレーザーディスクを使用し、管理著作物である伴奏音楽を再生して公に上映したことにより、右の歌唱による演奏権の侵害と共に、原告の音楽著作権の内容である上映権を侵害した。
(3)更に、被告らは、前記のようにカラオケ伴奏による歌唱を続ける一方、そのほかに昭和五八年一一月ころから引続き今日に至るまでの間、右店内で営業時間中、同店内のピアノに取付け設置したピアノ自動演奏装置(楽曲のピアノ演奏を記号化して収録した記憶装置、すなわち音盤と、これをピアノで再生する機器、すなわちピアノプレーヤとの組合せによって構成されているもの。)を操作し、その際、市販のピアノ自動演奏用の記憶装置(音盤)で原告の管理著作物の楽曲が収録されているもの(フレックスメモリー)を使用し、原告に無断でその楽曲の演奏を再生(自動演奏)し、これを来集した不特定多数の客に聞かせ、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害した。
3 被告らは、「くらぶ明日香」において、その開店以来、原告の管理著作物を使用してピアノによる生演奏、又はその後カラオケ伴奏による演奏、上映、あるいはピアノ自動演奏装置による再生演奏を行っており、それは今日まで反復継続してなされている。被告らの右店舗における演奏は、毎日の午後六時半頃から深夜に及ぶ営業時間のうち、客入りの多い一定の時間帯に来客の好みに合うその時々の流行の音楽などを中心に選曲して演奏することによって、店の雰囲気づくりをして盛りあげ、客を楽しませることを目的として行われているものであり、右演奏、上映は、これまで被告らが右店舗の経営を維持し継続する上に、必要かつ、不可欠な手段となっていたものである。
  被告らは、以前、福山市船町で「クラブむらさき乃」を経営していた昭和四六年ころ、すでに原告中国支部(広島市所在)から同店における管理著作物のピアノによる生演奏について注意され、文書および直接面談により使用許諾手続の督促を受けたが、理由なくこれを拒み、その後「くらぶ明日香」を開店した後も、右中国支部から引続き再三にわたり、文書および直接面談により右店舗における管理著作物の演奏について、その事後処理および使用許諾手続の督促を受けながら、これを無視して右使用許諾契約を締結せず、終始無許諾で前記のとおり演奏、上映を続けていた。
(三)差止請求
  被告らは、現在も「くらぶ明日香」において原告の管理著作物を演奏、上映し、原告の著作権(演奏権、上映権)を継続的に侵害しており、更に将来に亘って同侵害行為を継続するおそれがあるので、原告は次のとおり差止めを求める必要がある。
1 被告らは、原告の提訴後主としてカラオケ装置を稼働させているが、依然として店内にピアノを存置したまゝ営業を続けており、今後も同ピアノを使用し前記著作権(演奏権)を侵害するおそれがある。
2 被告らが前示のピアノに取付け営業用に用いてるピアノ自動演奏装置は、録音物による演奏について著作権法附則一四条の経過規定を適用しない事業の範囲を定めた、同法施行令附則三条一号後段の「客に音楽を鑑賞させるための特別の設備を設けているもの」に該当し、右装置を使用する場合は演奏権が及び、現に被告らが店内でこれを操作して原告の管理著作物の演奏を再生していることは、前記著作権(演奏権)を侵害する行為である。
3 次に、被告らのカラオケ装置を利用した著作権侵害行為の態様は、前示したとおりであって、現に店内で行っているカラオケ伴奏による歌唱は、店側が演奏主体であり、営利を目的とした演奏であるから、被告らに著作権(演奏権、上映権)侵害が成立することは明らかである。しかして、現時点において店内二か所にあるカラオケ装置は、店内に入って右側がカラオケテープを使用するもの、左側がレーザーディスクを使用するものであり、いずれの装置も前述の如く、歌詞付き楽曲を歌唱する場合楽曲部分である伴奏音楽を再生し、この伴奏と一体化した歌唱を行わせることを目的として、被告らの従業員がこれを操作している。それ故、このカラオケ装置を利用した被告らの著作権侵害行為を差止めるには、右装置の本来の機能および使用目的、設置目的に照らし、歌唱のみならずこれと一体化して不可分の関係にあるカラオケテープあるいはレーザーディスクによる伴奏音楽の再生についても、同時に禁止することが侵害の停止ならびに予防に必要な措置であって、原告は、管理著作物の著作権者として、被告らの侵害行為の態様に従い、カラオケテープの伴奏による歌唱に対し、演奏権の侵害として歌唱の差止めとともに、カラオケテープに収録された伴奏音楽の再生について差止めを求め、レーザーディスクの伴奏による歌唱に対し、演奏権の侵害として歌唱の差止め及び上映権の侵害としてレーザーディスクに収録された伴奏音楽の再生(上映)について差止めを求める必要がある。
  なお、右の差止請求の対象となるカラオケテープ及びレーザーディスクに収録された伴奏音楽の再生は、いわゆる適法録音物による演奏の再生であり、この場合著作権法附則一四条の経過措置により、当分の間、その効力を有する旧法三〇条一項八号および同条二項によって被告らに自由利用が認められるためには、その条件として出所明示の義務(すなわち、この場合収録音楽の題名、作曲者及び作詞者の氏名を再生の都度告知すること)の履行が必要となるが、被告らはまったくこの出所明示をしておらず、自由利用の要件を欠き違法性が認められるのみならず、今後も日常的、継続的に出所明示を行う可能性はなく、その実行を期待できない場合であるから、被告らに対し、伴奏音楽の再生を差止めることができるものである。
  以上の理由により、原告は著作権法一一二条一項、二項にもとづき、被告らに対し、著作権侵害の停止ならびに予防請求として、請求の趣旨第1項記載のとおり原告の管理著作物の演奏禁止を求める。
(四)被告らの不法行為
  被告らの前記「くらぶ明日香」の営業においては、客に対し飲食を提供するばかりでなく、ピアノ、ピアノ自動演奏装置、カラオケ装置という店内の設備によって客に音楽の演奏を聞かせ、また、上映しているものであり、その際使用する音楽は、カフェー、クラブ、スナック等社交場特有の雰囲気、来客の好み、その時々の世間の流行によって選ばれる歌謡曲、ジャズ、シャンソンなどの軽音楽で、かつ、その殆んどが原告の管理著作物ばかりであり、一日平均の使用管理曲数はピアノによる生演奏だけでも延三〇曲以上に及んでいた。被告らは営利を目的とし、これらの軽音楽を営業時間中常時演奏して店内に顧客を誘引するにふさわしい快適な雰囲気を醸成し、その営業を維持してきたものであって、音楽著作物の利用は営業の不可欠的要素である。それ故、右事業の経営者たる被告らとしては、音楽著作物の利用に際し他人の著作権を侵害することがないように相当の調査をなすべき注意義務があり、原告の管理著作物を使用するについては原告の使用許諾を受け、かつ、原告が著作物使用料規程によって決定した相当の使用料を支払う義務があるにもかかわらず、その開業以来何らの相当な措置をとることなく無断で原告の管理著作物を演奏使用していた。
(五)損害
  原告は、被告らの右著作権侵害行為により、管理著作物の使用許諾の対価として徴収し得る使用料に相当する得べかりし利益を喪失し、これと同額の損害を蒙ったのであるが、その損害額の算定は次のとおりである。
1 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」三条一項に基づき、昭和一五年二月二九日主務大臣の認可を受けて「著作物使用料規程」を定め、その内容はその後数次の変更を経たが、同規程のうち演奏の使用料の規定に関しては、昭和三五年五月三一日の認可により料率が変更され、更に演奏の内、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、ダンスホール、喫茶店、ホテルその他これらに準ずる社交場における演奏については減額した料率の規定が新設され、これらの規定の内容はその後料率自体には変更がなく、昭和四六年四月一日の認可による表現整理のための変更を経て、現行の規程に踏襲されている。現行使用料規程によると、管理著作物の演奏の内、軽音楽一曲一回の「演奏会形式による演奏」の使用料は定員、平均入場料、使用時間によって類別区分された料金表により別表(一)のとおり定められており、これをキャバレー、クラブ、スナック等の社交場において使用する場合は、右演奏会形式による演奏の使用料の一〇〇分の五〇、すなわち五割の範囲内で使用状況等を参酌して具体的な使用料を決定することとされている。そして、原告においては、使用状況等の参酌の方法として、1定員五〇〇名未満のものを更に一〇〇名単位で段階的に区分し、各社交場の客席数に応じて逓減することとしているほか、2平均入場料については、入場料金を明示しないキャバレー、クラブ等の場合は、当該社交場の営業料金中の一セット料金(飲食税、サービス料を含む)又は同相当額に三〇%を乗じた金額(テーブルチャージ、席料などがある場合は更にその料金を加算した額)を入場料とし、3使用時間については、一曲一回の演奏が五分以上一〇分未満の場合でも原則として五分未満として取扱うこととしている。
2 一方、被告らの「くらぶ明日香」における使用料算定上の参酌基準となる管理著作物の使用状況等を、昭和四七年五月開店時から同五六年七月末日までの営業期間についてみると、定員五〇〇名未満、客席数は一〇〇名未満、管理著作物の一日平均の使用曲数は三〇曲(ピアノによる生演奏に限る)、一か月平均の営業日数は二五日である。
  平均入場料については、使用料算定の期間が昭和四七年五月から昭和五六年七月末日までの長期間にわたっており、平均入場料算出の基礎となる営業料金がその間かなり変動しているので、この期間における平均入場料は、昭和五四年二月時点の「くらぶ明日香」に対する実地調査の資料にもとづく入場料算出金額二、八一五円を基本として、これと福山市における昭和五五年の消費者物価指数(総合)一〇〇・〇を基準とする各年別の物価指数との比例式により年次別に算出する方法を採用して、次のとおり算出した。
(物価指数)(入場料算出金額)(平均入場料)
昭和四七年 五〇・四 一、五二八円 一、五〇〇円以上二、〇〇〇円未満
昭和四八年 五五・一 一、六七一円 一、五〇〇円以上二、〇〇〇円未満
昭和四九年 六七・四 二、〇四四円 二、〇〇〇円以上二、五〇〇円未満
昭和五〇年 七四・六 二、二六二円 二、〇〇〇円以上二、五〇〇円未満
昭和五一年 八〇・八 二、四五〇円 二、〇〇〇円以上二、五〇〇円未満
昭和五二年 八七・〇 二、六三八円 二、五〇〇円以上三、〇〇〇円未満
昭和五三年 八九・八 二、七二三円 二、五〇〇円以上三、〇〇〇円未満
昭和五四年 九二・八 二、八一五円 二、五〇〇円以上三、〇〇〇円未満
昭和五五年 一〇〇・〇 三、〇三三円 三、〇〇〇円以上三、五〇〇円未満
昭和五六年 一〇四・七 三、一七五円 三、〇〇〇円以上三、五〇〇円未満
3 そこで、前記著作物使用料規程を右条件下における管理著作物の使用の場合に適用してその使用料を算出すると、まず昭和四七年における使用料は別表(二)の計算表に記載するとおり、一曲当りの使用料は七〇円、一日三〇曲分の使用料が二、一〇〇円、一か月(平均二五日)の使用料は五万二、五〇〇円となる。これと同一の計算方法にしたがい昭和五六年七月末日までの営業期間について、その使用料を算出した結果は別表(三)の使用料一覧表に記載するとおりである。
  したがって、被告らの前記侵害行為のあった期間のうち、昭和四七年五月から同五六年七月までの期間についての損害額は、右の著作物使用料額を基準とし、その一か月当りの前示各使用料額に被告らの営業期間の月数を乗じて算定すべきものである。
それによれば、別表(四)の損害金算定表記載のとおり合計金七〇六万五、〇〇〇円となる。
(六)不当利得返還請求
  著作権侵害の事実があれば、特別の事由のない限り、侵害者について常に不当利得が成立する。しかして、被告らは、「くらぶ明日香」の前身である「クラブむらさき乃」の店舗を経営していた当時、原告の管理著作物の無断使用を行っていたので、その当時すでに原告から著作権侵害として注意警告を受けていた経緯があり、それにもかかわらず、その後も著作権処理の手続をしないで「くらぶ明日香」を開店し、前述したとおり、右店舗において再び原告の著作権を侵害する行為に及んだものである。
したがつて、被告らは、原告の著作権を侵害し、その結果法律上の原因なくして前記使用料相当額以上の利益を受けた悪意の受益者であり、それによって原告は前記のとおり右使用料相当額を下らない損失を受けている。
(七)結論
  よって、原告は、不法行為に基づく損害賠償として、もしくは予備的に不当利得返還請求として、被告らに対し、連帯して金七〇六万五、〇〇〇円およびこれに対する本件訴状送達の翌日である昭和五六年八月七日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金もしくは利息金の支払を求め、かつ、著作権侵害の停止ならびにその予防請求として管理著作物の演奏禁止を求める。
二 請求原因に対する認否
(一)請求原因(一)1の事実は争わない。同(一)2の事実中、被告Y1が被告Yと共同してバー、キャバレー、クラブなどを経営していただけでなく、「くらぶ明日香」も共同経営しているとの事実は否認するが、その余の事実はいずれも認める。
  バー、キャバレー、クラブなどの経営及び「くらぶ明日香」の経営は被告Yが単独でこれにあたっていたのであって、被告Y1はその経営に関与していない。被告らは夫婦である以上、双方の事業に配偶者という立場で相談に乗り、資金面で協力するのは当然である。また、被告Y1が原告の職員と折衝した事実があるとしても、被告Yの代理人としてであって、これらのことから被告Y1が共同経営者として著作権侵害行為に加担したものと評価することはできない。原告の主張は夫婦が独立した人格であることを無視した考えに立脚するものである。
(二)同(二)1は争わない。同(二)2(1)の事実中,昭和五四年一二月から昭和五五年六月までの間と、同年一二月から昭和五六年三月までの間、「くらぶ明日香」店内において、営業時間中、ピアノを使用し、原告の許諾を受けないで管理著作物である音楽を生演奏し、来集した不特定多数の客にこれを聞かせたことは認め、その余は否認する。原告主張の期間、継続してピアノ演奏により原告の著作権を侵害したものではない。同(二)2(2)のうち、カラオケ装置及びレーザーディスクカラオケ装置を使用したことが原告の著作権を侵害するとの主張は争い、その余の事実は認める。同(二)2(3)のうち、ピアノ自動演奏装置を使用したことが原告の著作権を侵害するとの主張は争い、その余の事実は認める。同(二)3は争う。 
(三)同(三)は争う。
(四)同(四)は争う。
(五)同(五)の事実は不知。
(六)同(六)は争う。
第三 証拠《略》

       理   由

第一 当事者
一 原告
請求原因(一)1の事実は、当事者間に争いがない。
二 被告ら
1 被告らは、昭和三〇年五月に婚姻の届出をした夫婦であること、被告Y1との共同経営であるかどうかはさておき、被告Yは昭和三一年から広島県福山市内においてバー、キャバレー、クラブなどの営業に従事し、経営していたものであり、昭和四七年五月からは同県福山市延広町八番九号に「くらぶ明日香」を開店し、その営業を続けていること、同店には開店当初からピアノが備付けられ、その後、カラオケ装置、ビデオの再生機能を持つレーザーディスクカラオケ装置、ピアノ自動演奏装置が設置されたことは、いずれも当事者間に争いがない。
2 《証拠略》を総合すると、被告Yは「くらぶ明日香」(法人組織ではない)の日常の営業を取り仕切るかたわら、ブティックを営むBの代表取締役をしており、同会社には被告Y1も被告Yと同数の一、五〇〇口を出資していること、被告Y1は土建業を営むAの代表取締役として日常その業務に従事しているが、同会社の取締役には被告Yもその名を連ねており、同会社関係の金融機関との交渉には関与していること、被告らが昭和四四年三月に購入した広島県福山市手城町字十丁目中一〇一二番四及び同番地の五の宅地は、被告らそれぞれ二分の一宛の共有となっており、また、右各土地には、右B、右Aの金融取引のみならず、「くらぶ明日香」の取引先であるCとの酒類並びに食料品等売買取引等を担保するため、自己の持分のみならず他方の持分についても、それぞれ(根)抵当権を設定しあっていること(但し、Cについては現在は抹消ずみ)、また、被告Yは、同地上の自己所有名義の居宅についても右Aの債務担保のため(根)抵当権を設定しており、被告Y1は、「くらぶ明日香」の経営資金の金融機関からの借入れについて被告Yの保証人となっていること、「くらぶ明日香」の前身に当る「くらぶむらさき乃」は第三者のほか被告Y1も出資し、被告Yが営業責任者であったこと、原告との著作権使用料に関する交渉は、被告Yが「主人と相談してからでないと返事できない。」として進展しそうになかったため、原告側では被告Y1と面会して交渉したこと、その際、被告Y1は、原告の職員に対し、「くらぶ明日香」の経営とのかかわりを否定しておらず、むしろ自己の一存で交渉の成否を決定できるような口ぶりを示していたことが認められ(る。)《証拠判断略》
3 右事実によれば、「くらぶ明日香」は被告Yが主となってこれを経営しているものの、被告Y1もその夫として資金面、重要な対外交渉等に関与し、その経営に参加しているものと推認するのが相当である。単なる配偶者としての協力、相談にとどまる旨の被告らの主張は採用できない。
  したがって、被告Y1も「くらぶ明日香」の共同経営者としての責任を免れないものというべきである。
第二 著作権侵害
一 利用対価支払義務
  請求原因(二)1の事実は、当事者間に争いがない。
二 侵害行為
1 昭和五四年一二月から昭和五五年六月までの間及び同年一二月から昭和五六年三月までの間、「くらぶ明日香」において、営業時間中、ピアノを使用し、原告の許諾を受けないで管理著作物である音楽を生演奏し、来集した不特定多数の客にこれを聞かせたことは、当事者間に争いがなく右争いのない事実に、《証拠略》を総合すると、昭和四七年五月の開店以来、昭和五六年七月末に至るまで「くらぶ明日香」において、日曜祭日を除いた営業時間中、ピアノを使用して原告の許諾を受けないで管理著作物である音楽を生演奏し、これを来集した不特定多数の客に聞かせ、また、伴奏させたことが認められ(る。)《証拠判断略》
2 請求原因(二)2(2)の事実及び同(二)2(3)の事実は、被告らの各行為が原告の著作権を侵害するとの点を除いて、当事者間に争いがない。
3 「くらぶ明日香」においては、客に飲食を提供するばかりでなく、原告の管理著作物を使用してピアノによる生演奏、その後カラオケ装置、レーザー・ディスク・カラオケ装置による演奏、上映、あるいはピアノ自動演奏装置による再生装置を行うことによって、店内に不特定多数の顧客を誘引するにふさわしい快適な雰囲気を醸成し、その営業を維持して来たものであることは、前記二1認定の用に供した各証拠に照らして優に認めることができる。
三 著作権侵害該当性
1 被告らは、カラオケ装置を使用したことが原告の著作権を侵害するとの主張を争う。

 しかしながら、前記第一の二、第二の二2、3認定事実によれば、被告らは共同経営する「くらぶ明日香」にカラオケ装置を設備して管理し、客にすすめて原告の管理著作物が録音された伴奏用テープを再生して歌唱させ、また、ときにはホステスも客とともに歌唱し、同店の雰囲気を醸成し、客の来集をはかって利益をあげることを意図していることが認められ、右によれば、カラオケ伴奏による歌唱の主体は「くらぶ明日香」にあり、しかも、営利を目的とした演奏というべきであるから、被告らが原告の著作権を侵害していることは明らかである。
2 被告らは、レーザーディスクカラオケ装置を操作し、使用したことが原告の著作権を侵害するとの主張を争う。
  そこで考えるに、《証拠略》を総合すると、被告らの経営する「くらぶ明日香」店内に設備され、客にすすめて歌唱させ、同店の雰囲気を醸成して客の来集をはかって利益をあげることを意図して使用されているレーザーディスクカラオケ装置は、Dよりリースした機械及びビデオソフトであって、客の求めに応じて右レーザーディスクカラオケ装置を一曲二〇〇円の単価で稼働させ、これを客が歌唱する際の伴奏の用に供し、原告の管理著作物である伴奏音楽を再生して歌詞の表われる映画を公に上映し、内金一〇〇円をリース会社であるDが取得するものの、残金を被告らの経営する「くらぶ明日香」が取得することとしていたこと、ところで、ビデオソフトは、既存の映画に歌詞を組み込ませて上映し、これにカラオケ音楽を組み入れて固定したもの、すなわち、簡単に製作され、製作者の知的創作性の少ない単なる録音録画複製物と、通常の映画と同様に多数の製作スタッフの介在によって製作される新たにレコーディングされたもの、すなわち、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定された録音映画物とに大別されるが、いずれにおいても、レーザーディスクカラオケ装置は、レーザーディスクに固定された歌詞を組み込ませた映画をテレビ画面に映写するとともに音楽を再生することによって使用されるものであることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。右事実によれば、レーザーディスクの伴奏音楽による歌唱の主体は被告らの経営する「くらぶ明日香」にあり(著作権法二条一項五号、二二条、同法附則一四条適用)、また、レーザーディスクに収録された映画の上映(著作権法二条一項一九号、三項、二六条二項適用)の主体は右「くらぶ明日香」であって、かつ、営利を目的として演奏、上映されていることが認められるのであるから、被告らが原告の管理する演奏権、上映権を侵害していることは明らかである。
3 次に、被告らは、自動ピアノの演奏が原告の著作権を侵害するとの主張を争う。
  しかしながら、前記第二の二2認定事実によれば、自動ピアノ装置が著作権法施行令附則三条一号にいう客に音楽を鑑賞させるための特別の設備を設けているものに該るのは明らかであって、前記のとおり、被告らが「くらぶ明日香」店内でピアノ自動演奏装置を操作して原告の管理著作物の演奏をしていたことが認められるのであるから、被告らが原告の管理著作権を侵害していることは明らかである。
第三 差止請求
  前記第一、第二認定事実及び《証拠略》を総合すると請求原因(三)の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
  右事実によれば、被告らは、共同して経営している「くらぶ明日香」において、ピアノを演奏し、または、ピアノ自動演奏装置、カラオケ装置、レーザーディスクカラオケ装置を操作して、原告の管理する著作権を侵害し、また、これを侵害するおそれがあることは明らかであるから、原告の求める差止請求は、いずれも理由がある。
第四 不法行為
一 責任原因
  前記第二の二13認定のとおり、被告らは「くらぶ明日香」においてピアノを設備して管理し、客に対して飲食を提供するばかりでなく、客に音楽の演奏を聞かせ、あるいはピアノを伴奏して客の歌唱にあわせ、不特定多数の顧客を誘引するにふさわしい快適な雰囲気を醸成していたのであるから、被告らは、原告の使用許諾を受けてその管理著作物を使用しなければならない義務があるのに、これを怠り、昭和四七年五月一日から昭和五六年七月三一日までの間、原告の使用許諾を受けることなく、日曜祭日を除いた毎日、同店内でピアノを使用し、原告の管理著作物である音楽を生演奏し、これを来集した不特定多数の客に聞かせ、よって、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害したことが認められるのであるから、被告らは原告に対し、不法行為による損害賠償義務として昭和四七年五月一日から昭和五六年七月三一日までの原告に生じた損害を賠償する責任がある。
《証拠略》を総合すると,請求原因(五)の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。 
二 損害
  右事実によれば、原告の使用料相当の損害額の算定は是認することができ、原告の昭和四七年五月一日から昭和五六年七月三一日までの損害総額は、少なくとも、七〇六万五、〇〇〇円となる(著作権法一一四条)。
第五 結論
  右によれば、被告らは、原告に対し、著作権法一一二条により、被告らの経営する「くらぶ明日香」において、別添楽曲リスト、同(2)ないし(4)に各記載の音楽著作物を営業のために演奏してはならない義務を負うとともに、不法行為に基づく損害賠償として連帯して金七〇六万五、〇〇〇円およびこれに対する訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和五六年八月七日から支払済みまで民事法定利率である年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、従って、原告の本訴請求はすべて理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 安井正弘 裁判官 三島イク夫 坂井良和)
別表(一)〜(四)《略》


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